かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

馬場あき子の外国詠 54 中欧 394

2022-07-06 11:17:58 | 短歌の鑑賞
 22年版 馬場あき子の外国詠54(2012年7月実施)
   【中欧を行く 虹】『世紀』(2001年刊)P109~
     参加者:K・I、N・I、崎尾廣子、曽我亮子、藤本満須子、T・H、
         渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:藤本満須子 司会と記録:鹿取 未放


394 予言のごとく情念の深き底ひよりエレクトラ立ちて闇に激(たぎ)れる

     (レポート)
 エレクトラが父の仇を討とうとするところからこの歌劇は始まる。強烈な音楽の後に幕があがるが、迫力あるソプラノでうたうエレクトラの姿を「闇に滾れる」と表現したところは実に巧みな作者だと感銘。(藤本)


     (当日発言)
★幕が上がる前に歌うんでしょう?だから歌った時は暗かったと思う。(曽我)
★いや、幕が上がってから歌い始めるんだと思う。(藤本)
★いや、幕が上がる前に歌い出す場面もあると思うけど、この場面は最初とは限らないので
 は?作者がのめり込んで観ている様子が伝わってきますね。(鹿取)
★「予言のごとく」という言葉に魅了される。この言葉があって、下の句がいきいきとし
 ている。(崎尾)
★「予言のごとく」は聖書の言葉を預かるもの、という意味だと思っていたけど読み違え
 ていた。ここでは劇のあらすじを予言するようだ。(慧子)  
★ウィーンの話でしょう。言葉が分からないとお話しにならないじゃない。(K・I)
★字幕が出るんですよ、今。(藤本)
★日本ならそれでよいけど、ウィーンで日本語の字幕なんか出ないでしょう。(K・I)
★内容はもちろん先生は勉強して行かれたんでしょう。言葉は分からなくても歌の調子や身
 振りで感情は分かります。(鹿取)
★意味ではなく表情や動きだから。(藤本)
   

   (まとめ)
 「エレクトラ」は当時としてはもっとも進歩的で、不協和音などをとりこんだ大胆な音楽技法が使われた傑作だという。劇の冒頭は毎日夕闇が迫るとエレクトラは狂ったようになって、父が殺害された状況を歌い、改めて復讐を誓う場面だそうだ。とすると私が言った冒頭を詠ったとは限らないという発言は間違いで、この歌は劇の冒頭場面をえがいていることになる。そうすると「予言のごとく」は、父に復讐を果たす予言という具体的な意味になるだろう。(鹿取)

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