かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞  291

2021-08-22 19:21:14 | 短歌の鑑賞
 渡辺松男研究36(16年3月実施)
    【ポケットベル】『寒気氾濫』(1997年)120頁~
     参加者:石井彩子、泉真帆、M・S、曽我亮子、船水映子、渡部慧子
     レポーター:鈴木 良明 司会とテープ起こし:泉 真帆


291 精神は肉体よりもごつごつと函館の夜を市電にゆらる

        (レポート)
 仕事で函館に出張したときの景だろう。好景気の頃なら楽しい筈の函館出張も、たぶん明日にでも報告書をまとめなければならないような重い課題を抱えての出張では、ぎすぎすしたこころにならざるを得ない。ぐったりと疲れ切った肉体よりも精神の方が「ごつごつ」とリアルに感じられるのである。(鈴木)


        (当日発言)
★よっぽど難しい心情だったんじゃあないか、って思うんですね。肉体よりも精神の方が、
 っていうのが「ごつごつと」と表現されていてリアルな感じですね。(曽我)
★精神というのは形がない、肉体というのは形がある、そいういうものを比較されるのは
 やはり松男さんらしいなと思って読みました。疲れきった肉体ですねえ、それよりもリ
 アルに精神の方が感じられると、そいうことをレポーターは書いてらっしゃるんですけ
 れどもその通りだなあと思いました。「ごつごつ」というのが何かちょっと不器用な、
 例えば市電に揺られているあの、ゴットンゴットンとした音の響きとかも関連している
 のかなあとも思いました。作者はぐったり疲れている肉体よりも精神の方に重きを置い
 てらしゃる、そいういう情景も分ります。(石井)
★私もこの「ごつごつ」の表現が見事だと思います。「イライラ」とか「キリキリ」、と
 かそういうのではなくこの「ごつごつ」が実に上手に表わしているなあと思います。
    (M・S)
★普通だとこ〜「疲れた」とか「胃が痛む」とかね、そういう言い方しちゃいますけど、
 そういうところ超えちゃってるんですよね。「ごつごつ」ってもう物みたいになっちゃ
 ってる無感動な状態っていうか、そういうのを「ごつごつ」っていう言葉で。上手いな
 あ〜と思いますね。普通だと感情の世界で納めようとする訳ですよ、だけど感情を超え
 ちゃってる、そこがやはり普遍的な感じがするんですよね、この歌。(鈴木)

コメント
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