へなちょこな詩 その４１ 宮尾昌成

こないだ、僕は、ある精神科で

ロールシャッハ・テストを受けた

心理士の女性が一枚一枚パネルを僕に見せて

そこに描かれているものが何か？何に見えるか？

を答えるというものだった

描かれていると言っても、

描こうとして描いた絵ではない

多分、インクとかをこぼした用紙を真ん中あたりで

二等分に折って、ベターっとくっつけて、　

それを開いたら、こんな感じになっちぃましたー

って感じのものだった

で、１０枚の「絵」を、一枚一枚見て

僕は〇〇に見えます。とか〇〇かなあ？。とか

さかさにすると〇〇に見えてきた。とか

〇〇にも見えるけど〇〇にも見えます。とか

なんだか、くたびれたけど

一応、何に見えるか？の問いに、全部、答えた

ところが、これで終わりではなかった

心理士の女性は、また、さっきの１０枚のパネルを

一枚一枚、僕に見せて

「先ほど、〇〇に見えると言われましたが

なぜ、〇〇に見えたのですか？」と聞いてきた

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なぜ？って、え？どういうこと？

僕は、この心理士の言ってる意味が理解できなかった

〇〇に見えるから〇〇に見える

僕の中では、そこで完結している

なぜ、そう見えるか？

そう見える理由は何か？

そう見えるからそう見えるのである

ロールシャッハ・テストでは、

こういう質問をする決まりになってるんだろうか？

それとも、この心理士独自の質問なんだろうか？

僕は答えようがなかったが

心理士がしつこく聞いてくるから

「わかりません」とか、あるいは

かなり適当な返事をして、ごまかした

しかも１０枚のパネル

一枚一枚に対して、合点のいかない気持ちで

なんとか、しのいだ

そして、ふと、あることを思った

僕には、好きな人が沢山いる

たびたび、恋もする

人を好きになるとき

人に恋をするとき

理由なんてあるだろうか？

好きだから好きなのである

優しいから。とか　可愛いから。とか

言ったりするけど、

それは、きっと本当の理由なんかじゃない

本質的に、理由なんて存在しない

好きなものは好き

嫌いなものは嫌い

ただ、それだけのことなのだ