ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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韓国内の映画 週末の興行成績 [11月29日(金)~12月1日(日)]と、人気順位 ►好きじゃなくてもキム・ギヨン監督作品を観るワケがある

2019-12-04 17:08:44 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
▸今回は久しぶりにちょっと濃ゆい韓国映画ネタです。11月30日(土)からシネマヴェーラ渋谷で<生誕100年記念 異端の天才 キム・ギヨン>(→コチラ)特集が始まりました。12月13日(金)まで全13作品上映されます。私ヌルボは2日(月)に行ってまずは「死んでもいい経験」「肉体の約束」「ノダジ」の3作品を午前11時から6時間15分続けて観てきました。(※「ノダジ」はチョン・チャンファ監督作品。) しかし、2015年11~12月に京橋のフィルムセンターで開催された<日韓国交正常化50周年 韓国映画1934-1959 創造と開花>(→コチラ参照)で16作品まとめ見した時のようなワクワク感は全然ナシ。というのは、そもそもキム・ギヨン監督作品にはどうも<なんだかなー感>といったものがあるから。過去3作品しか観てませんが、何と言ってもあの「下女」(1960)の印象が強烈で。「下女」と言えば韓国映画史上名作中の名作とされるほど高く評価されている作品で、たとえば韓国映像資料院選定の<韓国映画100選>(→コチラの表.韓国語)2013年版でも「誤発弾」「馬鹿たちの行進」とともに1位になっています。で私ヌルボ、20年ほど前(?)の初鑑賞の感想は「なんかすごいもん観たなー」。いや、以前にも書きましたが、<感動>とか<心打たれた>というのではなく、オゾマシイすごさ。→コチラのクチコミ記事を見るとおよその内容がわかります。ヌルボとほぼ同様の感想も。こういった作品が歴代の韓国映画の中で最高位にランクされるのも、もしかしたら<恨(ハン)>という民族的心性に沿ったものかも・・・。(と安易に書いたところで、鄭百秀「コロニアリズムの超克」という本に「「恨」言説は解放後に金東里や徐廷柱によって初めて提出された」といったことが記されていたことを思い出しました。)

▸最初に観た「死んでもいい経験」は、やっぱりなーのキム・ギヨンの世界。むき出しの感情的対立、怨恨と復讐がトグロを巻いてます。アレ!?尹汝貞(ユン・ヨジョン)先生が出てるのか。キム・ギヨン監督の遺作(1990)とのことですが、冒頭の配役・スタッフ等はすべて漢字表記で、なぜか監督名だけハングル。この作品についての詳しいブログ記事(ネタバレあり)は→コチラ
 「肉体の約束」(1975)はいかにもらしいタイトルですが、むしろ「死んでもいい経験」ほどキツいドロドロ感はありません。これまでいろんな形でリメイクされてきたイ・マニ監督の「晩秋」(1966)のリメイクなので、です。模範囚の女囚が数日の外出許可を得てという基本設定ですが、本作では女性看守が同行して麗水への鉄道の旅。
 それにしても、「死んでもいい経験」にしろ「肉体の約束」にしろ男が女を当たり前のように殴ったりとか、子供ができない嫁に義父母が離婚を強要して拇印を押させるとか、男尊女卑の事例がいっぱい。女性の側は抗議の声さえ上げることができない、そんな時代だったんだなー。(と過去形で語るのも問題だが・・・。) 見どころはやっぱり主演の金芝美(キム・ジミ)。「60年間700本の映画に出演し、700種類の人生を生きた」と言いこの大女優については書くとキリがないので端折ります。40年以上も前の映画を観ていて興味深いのは、かつての街のようすや自然の景観が見られること。それ以外にも、物語の本筋とは全然関係のないところでいろいろ興味深い知識を仕入れることができました。次に観た「ノダジ」はとくに、なのですが、長くなりすぎるのでそれはいずれということで。

▸今回シネマヴェーラで上映のキム・ギヨン作品の多くはYouTubeで観られます。とくに<한국고전영화 Korean Classic Film>のアカウント(→コチラ)>
 これに関連して私ヌルボ、2017年に<YouTubeで手っ取り早く視聴できる韓国映画(1936~2000年)の名作150編(&特別映像2つ) 全リスト>という記事を書きました。(→コチラ。) その後も数は増え続けて、現在は193作品になっています。ぼちぼち改訂版を書く頃合いですねー。

▸上記「韓国映画100選」の新版の翻訳本が12月上旬刊行予定とのことです。→コチラ参照。画像を拡大すれば作品名がわかります。あら、「息もできない」(2009)が入ってないゾ!(怒)

         ★★★ NAVERの人気順位(12月3日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
       ※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
        「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。

①(-) 叔父(韓国)  9.73(33)
②(-) 詩人おばあちゃん(韓国)  9.65(139)
③(2) ヘロニモ(韓・米)  9.62(173)
④(4) 氷点下の風(韓国)  9.54(24)
⑤(-) スーパーディスコ(韓国)  9.50(26)
⑥(-) 主戦場  9.49(995)
⑦(-) オフィシャル・シークレッツ  9.44(59)
⑧(5) きのうのことはみんな大丈夫(韓国)  9.36(176)
⑨(-) マリッジ・ストーリー  9.29(104)
⑩(-) 家の話(韓国)  9.29(58)

 ①⑤⑦⑨⑩の5作品が新登場です。こんな大量に入れ替わったのは初めてかも。
 ①「叔父」は、韓国のミステリー&スリラー。キム・ヒョンジン監督の長編デビュー作です。19歳の少女イプセ(チョン・イェジン)は心理的な外傷のためベッドの外に出ることができず日々を過ごしています。まるでイプセ(잎새=葉)という名前のように植物そのものの生活。そんな彼女の家に、ある日見知らぬ男(カン・シニョ)が訪ねてきます。自分をイプセの叔父だと名乗る彼は新しい保護者なのか、それとも別の捕食者なのかイプセにはわかりません。はたして彼女は最終的にベッドからに抜け出すことができるでしょうか・・・。母の代、つまりイプセが子供の頃から暴力に無防備にさらされた女性の心理と復讐、それを取り巻く人間の暗い欲望を描いた<今日的>作品のようです。原題は「삼촌」です。
 ⑤「スーパーディスコ」は、韓国のドキュメンタリー。<チャン・ギハと顔たち>というインディーズ系のグループの日本での認知度&人気度はどんなものでしょうか? 「安物コーヒー」(싸구려 커피.サグリョ コッピ)[→YouTube]が大ヒットしたのが2008年。(そんなになるのか・・・。) ソウル大出身というチャン・ギハは2015年にIUとの熱愛が伝えられましたが約3年で破局したとか。そしてチャン・ギハと顔たちは昨年の大晦日に解散。まさに「10年経てば山も川も変わる(十年一昔)」です。さて、そのチャン・ギハと顔たちを世に出したのが独自の方向性を持ってスタートしたプンガブンガレコードでした。チャン・ギハと顔たちに続いて新しい看板スターになったのはスルタン・オブ・ザ・ディスコです。そのマネージャーだったイ・ジュホは、2014年にイギリスのグラストンベリー・フェスティバルに招請されたことをきっかけに彼らのドキュメンタリーを作る決心したとのこと。そして本作がその完成品です。日本にも14年の初来日以降、17年の初の日本全国ツアー等の公演を続けています。原題は「수퍼 디스코」です。
 ⑦「オフィシャル・シークレッツ」は、アメリカのドラマ&スリラー。イギリスの情報部要員キャサリン・ガン(キーラ・ナイトレイ)の任務は盗聴で全世界の情報を集めること。2003年のある日、彼女はアメリカ・イギリス間の極秘事項のメモを入手します。その内容は国民を欺こうとするものでした。彼女は悩んだ末勇気ある選択をします。それはメモ書きを報道機関にリークすることでした。マーティン・ブライト(マット・スミス)は政府寄りの新聞社の記者。ところが受信した膨大な情報調べて、国が隠そうとしている醜い真実を知って世に知らせます。政府は<裏切り者>であるキャサリンの起訴を画策します。正義のために国を裏切った人々をどう裁くべきか? 人権弁護団所属の弁護士ベン・エマーソン(レイフ・ファインズ)はいかに闘うのか? ・・・と、これもまた<今日的>な作品です。韓国題は「오피셜 시크릿」。日本公開は未定、なのかな?
 ⑨「マリッジ・ストーリー」が新登場です。スカーレット・ヨハンソンとアダム・ドライバーが共演するアメリカのドラマ。日本でも2日遅い11月29日から公開されています。韓国題は「결혼 이야기(結婚の物語)」です。
 ⑩「家の話」は、韓国のドラマ。ソウルで一人暮らしをしている新聞社の編集記者ウンソ(イ・ユヨン)は、住んでいた家の契約が終わりに近づいた時、次に気に入った家が見つらないと父が住んでいる実家にしばらく身を寄せることにしています。仁川で24時間出張OKの鍵の専門店をやっている父ジンチョル(カン・シニル)は、家族が皆いなくなってしまった家で1人で住んでいます。一緒に暮らした私たちの家を離れ、それぞれの家ができてしまったウンソの家族。予期せず父と2人きりになったウンソは、その実家で過ごしている間忘れていた家族の痕跡と向き合うことになり、またこれまで他人の家の閉ざされたドアだけを開けていたジンチョルはウンソを介して自分の家族たちに少しずつ心の扉を開き始めます・・・。原題は「집 이야기」です。

     【記者・評論家による順位】

①(1) アイリッシュマン  9.11(9)
②(2) パラサイト 半地下の家族[寄生虫](韓国)  9.06(16)
③(-) マリッジ・ストーリー  8.50(2)
④(3) ハチドリ(韓国)  8.38(13)
⑤(4) モーリス 4K  8.00(5)
⑥(5) ブラッド・シンプル  7.75(4)
⑦(7) 象は静かに座っている  7.67(3)
⑧(8) ジョーカー  7.64(11)
⑨(9) ドクター・スリープ  7.50(2)
⑩(10) 台北ストーリー  7.40(5)

 ③「マリッジ・ストーリー」が新登場です。この作品は、上述のように日本でも公開されています。

      ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績11月29日(金)~12月1日(日) ★★★
           イ・ヨンエの14年ぶりのスクリーン復帰作「私を探して」が初登場で2位に

【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・・累積収入・・上映館数
1(1)・・アナと雪の女王2 ・・・・・・・・・・・11/21 ・・・・・・・2,585,464・・・・・・8,583,611 ・・・・・・・71,680・・・・・・2,368
2(新)・・私を探して(韓国)・・・・・・・・・・・11/27 ・・・・・・・・・292,071・・・・・・・462,605 ・・・・・・・・3,689 ・・・・・・・838
3(2)・・ブラックマネー(韓国)・・・・・・・・11/13・・・・・・・・・225,730・・・・・・2,259,955 ・・・・・・・19,096 ・・・・・・・728
4(65)・・クロール ―凶暴領域―・・・・・・11/27・・・・・・・・・・68,256 ・・・・・・・110,081・・・・・・・・・・893 ・・・・・・・612
5(51)・・セカンドサイトでの愛 ・・・・・・11/27・・・・・・・・・・23,387 ・・・・・・・・54,322・・・・・・・・・・436 ・・・・・・・144
6(新)・・ハスラーズ ・・・・・・・・・・・・・・・・11/27・・・・・・・・・・17,140 ・・・・・・・・35,620・・・・・・・・・・289 ・・・・・・・416
7(3)・・神の一手:鬼手編(韓国)・・・・・・11/07・・・・・・・・・・16,598・・・・・・2,147,836 ・・・・・・・18,397 ・・・・・・・152
8(4)・・82年生まれ、キム・ジヨン(韓国)・・10/23・・・・・・・・13,743・・・・・・3,665,816 ・・・・・・・30,203 ・・・・・・・181
9(6)・・ユニへ(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・11/14・・・・・・・・・・10,629 ・・・・・・・・86,344・・・・・・・・・・686 ・・・・・・・・81
10(新)・・マリッジ・ストーリー ・・・・・・11/27・・・・・・・・・・・6,325 ・・・・・・・・・9,615・・・・・・・・・・・77 ・・・・・・・・83
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 「アナと雪の女王2」が3週目で早くも850万人を超えました。来週は1千万人の大台に乗っていることでしょう。
 今回の新登場は2・4・5・6・10位の5作品です。
 2位「私を探して」は、韓国のスリラー。話題は「親切なクムジャさん」(2005)以来以来14年ぶりというイ・ヨンエの映画出演。(ドラマは2017年に「宮廷女官チャングムの誓い」(2004)以来13年ぶりに「師任堂、色の日記」に出演しました。) その間2011年に男女の双子の赤ちゃんを出産。15年にその兄妹を連れてポンゲメンのの公演会場に現れた時の写真が「女性東亜」に載っていましたね。(→過去記事。) その子たちは8歳で、イ・ヨンエは48歳になるのか・・・。で、今作ではやはり子供を持つ母親を演じます。チョンヨン(イ・ヨンエ)は、6年前から行方不明になっている息子を見たという連絡を受けます。これまで何度もあったデマ情報とは違って、外見から傷跡まで全く同じ子供を見たという見知らぬ人の話に、チョンヨンはさっそく1人で知らないその場所に向かいます。しかし、警察のホン巡査長(ユ・ジェミョン)はチョンヨンの登場を警戒しているようだし、村人たちはよく似た子供は見たこともないと言うばかり。彼らは何かを隠していることを直感したチョンヨンは、あきらめずに真実を見つけようとしますが・・・。 韓国題は「나를 찾아줘」です。
 4位「クロール ―凶暴領域―」は、日本では6週も早い10月11日から公開されています。韓国題は「크롤」です。
 5位「セカンドサイトでの愛」(仮)は、フランス・ベルギー合作のラブロマンス&コメディ。パリ、2009年。高校生のラファエルは親友のフェリックスと一緒に日々を過ごしていましたが、偶然ピアノを弾く女の子オリビアと出会います。初めてのSF小説を執筆中だった彼は、その出会いの後インスピレーションを得て小説を仕上げます。10年後ラファエルはベストセラー作家になっていました。オリビアとも結婚しています。しかし余裕を失った彼とオリビアとの関係は冷えていきます。そして言い争って泥酔した状態で眠り、目覚めた時。ラファエルはいつもと違うように感じます。同じようだけど他の世界。作家としての人生は形もなく、中学校の先生になっています。フェリックスは卓球狂になっていて、オリビアはなんと有名ピアニストになっているとは! オリビアとの不仲が変調(?)の原因と思ったラファエルは、再び彼女の愛を得れば現実の世界に戻ることができると信じて接近を試みますが、彼女のそばにはすべてが完璧なマークがついています。ラファエルはフェリックスの助けを借りてなんとか彼女の心を攻略する機会を得ようとしますが・・・。韓国題は「러브 앳(ラブ・アット)」ですが、英題「Love at Second Sight」に基づいて仮題としました。日本公開は未定のようです。
 6位「ハスラーズ」は、ウォール街を震撼させた驚愕の実話に基づくアメリカの犯罪&ドラマ。ストリップクラブで働く女性たちが、ウォール街の裕福なサラリーマンたちから大金を奪うことを企てます。権力とお金があればすべてのものを買うことができるという彼らに対して、外見と頭脳プレーの両方を備えた彼女たちがひそかに動き始め、そして痛快な1発をくらわします・・・。韓国題は「허슬러」。日本公開は2020年2月7日です。
 10位「マリッジ・ストーリー」は、上述のように日本でも公開されています。

【独立・芸術映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・・・上映館数
1(1)・・ユニへ(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・・・・11/14 ・・・・・・・・10,629 ・・・・・・・・・86,344・・・・・・・・・686 ・・・・・・・・・・81
2(新)・・アメイジング・グレイス・・・・・・・11/28 ・・・・・・・・・1,220・・・・・・・・・・2,562 ・・・・・・・・・・20 ・・・・・・・・・・30
3(3)・・ヘロニモ(韓・米) ・・・・・・・・・・・・・・11/21・・・・・・・・・・・922・・・・・・・・・・7,141 ・・・・・・・・・・60 ・・・・・・・・・・18
4(2)・・きのうのことはみんな大丈夫(韓国)・・11/21 ・・・・・・663・・・・・・・・・・9,437 ・・・・・・・・・・83 ・・・・・・・・・・・9
5(95)・・私の家(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・・・8/22 ・・・・・・・・・・550・・・・・・・・・55,579 ・・・・・・・・・441 ・・・・・・・・・・・2

 2位「アメイジング・グレイス」が新登場です。2006年に同タイトルのイギリス映画が作られましたが、それは名曲「アメイジング・グレイス」にまつわるドラマで、コチラは1972年ロサンゼルスの教会で催されたアレサ・フランクリンのライヴです。その後ワーナーがゴスペルのドキュメンタリーに市場性がないと判断したことや、映像と音源の同期がうまくいかなったこと等でお蔵入りとなっていたそうですが、近年公開の動きが出てきた時にはアレサ自身が拒否したとか。それが昨年彼女が世を去ったことが契機となって、ライブから47年経った今ようやく公開に至ったとのことです。韓国題は「어메이징 그레이스」。日本公開は未定です。DVDは前から出てるし、ストリーミングも可能です。


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