ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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韓国内の映画 Daumの人気順位 と 週末の興行成績 [11月13日(金)~11月15日(日)]

2015-11-17 23:54:24 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
 今年は70本以上映画を観ても「これは今年のベスト!」どころか「ベスト候補」といえる作品が思い浮かばず、「不作の年」かな?と思っていましたが、13日に観た「顔のないヒトラーたち」は期待以上の秀作で、暫定1位としてもいいくらいです。アウシュビッツ関係の映画でも、過去の多くのアメリカ映画とは違い、このドイツ映画は「自分たちの問題」と真摯に向き合っている点に共感を覚えました。つまり「一般国民の加害者性」といったことです。たぶんこの映画を観た多くの人たちもそうだったと思いますが、私ヌルボも「1950年代後半多くのドイツ人はアウシュビッツのことを聞いたことがなかった」とは知りませんでした。そして、それが共通認識になるまでにはいろいろあったわけで、とくにこの作品に描かれた1963年のアウシュビッツ裁判に至るまではやはり世間の反発は大きかったのですね。以後も、か。「収容所で平然と残酷に人を殺した当人が戦後はふつうの気の好いパン屋さんになっていた」とか、「裁判の中で自責の念を表明した被告は1人もいなかった」とか、「どこまでも過去の自分たちを美化したがる戦友会」といったこと等々、ホントにドイツも日本も(アメリカ、韓国等々も)よく似ているものです。ただ、日本にはこのような映画はありますか??

 韓国で昨年11月公開された「カート」が「明日へ」という邦題になって11月6日から新宿ピカデリー等で上映中なんですね。全然違うタイトルなので最近まで気が付きませんでした。スーパー(韓国語ではマート)の非正規職の店員たちの解雇問題というドキュメンタリー的なテーマを掲げたドラマです。韓国の代表的なマートの店員で正職員になる直前だったソニ(ヨム・ジョンア)を始め、シングルマザーのヘミ(ムン・ジョンヒ)、清掃員のスルレ(キム・ヨンエ)たちは会社から突然解雇通知を受けてしまいますが、彼女たちは勇気を出して会社に立ち向かうという物語で、2007年従業員が大型スーパーを長期間占拠した実際の事件に基づいた作品です。観に行かれない方にも、この公式サイト(→コチラ)はぜひ見てほしいと思います。私ヌルボは近日中たぶん鴨居のららぽーとで観てきます。そういえば、SARUさんがツイッター(→コチラ)でこの映画のパンフをほめていたなー。

※先週は「朝鮮日報」11月6日掲載の「封切映画 ぴったり10字評」は掲載されていません。

           ★★★ Daumの人気順位(11月17日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】

①危路工団(韓国)  9.3(32)
②アマデウス  9.2(238)
③ミューン:月の守護者  9.2(31)
④チュニ マギ(韓国)  9.1(43)
⑤JSA(韓国)  8.9(361)
⑥エターナル・サンシャイン  8.8(478)
⑦あなたをずっとあいしてる(日・韓)  8.8(87)
⑧ウィ・アー・ユア・フレンズ  8.6(38)
⑨ブリッジ・オブ・スパイ  8.5(120)
⑩エール!  8.6(38)  8.3(108)

 今回の新登場は⑧「ウィ・アー・ユア・フレンズ」だけです。元々ジャンルを問わず音楽には自信があったはずの私ヌルボですが、21世紀になるととてもついていけません。この映画の「若手DJのEDMドリーム”ともいうべきサクセスストーリーを描いた作品」というフレコミを見ても<EDM>というのがわからず。ウィキペディア(→コチラ)によると<Electronic Dance Music>の略語で、「その場の人々を躍らせるという明確な目的のもとDJの道具として作られる音楽」とのことです。つまり、DJが主役なんですね。で、ストーリーはというと・・・、コール(ザック・エフロン)は野心的なアマチュアDJ。麻薬と酒の入ったパーティーを楽しむことが彼と友人の日常。しかしコールは音楽作業も怠っていません。ある日彼は有名DJのジェームズ・リード(ウェス・ベントレー)に会い、彼に才能を認められて一緒に作業もするようになります。ところが、コールはジェームズの助手であり恋人でもあるソフィー(エミリー・ラタコウスキー)に引きつけられていき、ソフィーもまた彼に心を開いて、短い密会を楽しむようになりますが、結局ジェームズに事実を知られて作業室から追い出されてしまいます。また親友スクォラルが麻薬の過剰摂取で死亡する事故も起こってコールは絶望に陥ります。そんなコールがこれまで作っておいたトラックを集めて向かった先はやっぱりジェームズの所でした・・・。感覚的な映像と音楽でいっぱいの作品のようです。韓国題は「위아 유어 프렌즈」、日本公開は未定です。

     【専門家による順位】

①タクシー  8.5(6)
②今は正しいがその時は間違いだ(韓国)  8.2(4)
③ブリッジ・オブ・スパイ  8.1(8)
④危路工団(韓国)  8.0(7)
⑤エヴァの告白  8.0(5)
⑥オデッセイ  7.8(6)
⑦ザ・ロブスター  7.6(6)
⑧EDEN/エデン  7.6(3)
⑨ザ・ウォーク  7.2(7)
⑩マン・オン・ワイヤー  7.0(6)

 ⑩「マン・オン・ワイヤー」が新登場ですが、ワールド・トレード・センターのツインタワー間での綱渡りを達成したフランスの大道芸人フィリップ・プティの挑戦を中心にしたドキュメンタリーで、日本でも2009年に公開されています。今彼を主人公にした「ザ・ウォーク」が公開されている(日本では来年1月)ので、このドキュメンタリーも再び注目されているというわけです。韓国題は「맨 온 와이어」です。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績[11月13日(金)~11月15日(日)] ★★★

         「黒い司祭たち」が「007シリーズ」の新作を抑えて連続1位

【全体】

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・週末観客動員数・・・累計観客動員数・・・累積収入・・・上映館数
1(1)・・黒い司祭たち(韓国) ・・・・・11/05・・・・・・・・・・1,089,302 ・・・・・・・・3,501,030・・・・・・・・・27,747・・・・・・・1,109
2(23)・・007 スペクター ・・・・・・・・・11/11 ・・・・・・・・・・・828,639・・・・・・・・1,185,163 ・・・・・・・・・・9,418・・・・・・・1,105
3(2)・・オデッセイ ・・・・・・・・・・・・・・10/08・・・・・・・・・・・・・57,101 ・・・・・・・・4,841,695・・・・・・・・・39,380 ・・・・・・・・258
4(8)・・エターナル・サンシャイン・・11/10・・・・・・・・・・・・47,898 ・・・・・・・・・・312,305・・・・・・・・・・2,299・・・・・・・・・108
5(4)・・ブリッジ・オブ・スパイ ・・・・11/05 ・・・・・・・・・・・・38,239 ・・・・・・・・・・243,163・・・・・・・・・・1,894・・・・・・・・・260
6(3)・・あいつだ(韓国)・・・・・・・・・・10/28 ・・・・・・・・・・・・31,585・・・・・・・・・1,031,497・・・・・・・・・・7,994・・・・・・・・・264
7(51)・・カエル王国・・・・・・・・・・・・・11/12・・・・・・・・・・・・23,122・・・・・・・・・・・・24,821 ・・・・・・・・・・・176・・・・・・・・・227
8(7)・・マイ・インターン・・・・・・・・・・・9/24 ・・・・・・・・・・・・20,598・・・・・・・・・3,585,986・・・・・・・・・28,336・・・・・・・・・106
9(81)・・モンスター・ハント ・・・・・・11/12 ・・・・・・・・・・・・16,695・・・・・・・・・・・・20,418 ・・・・・・・・・・・154・・・・・・・・・184
10(5)・・バーント ・・・・・・・・・・・・・・・11/05 ・・・・・・・・・・・・16,419 ・・・・・・・・・・177,277・・・・・・・・・・1,413・・・・・・・・・217
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 今回は1、2位こそ約110万人と80万人を動員していますが、3位は6万人以下という少なさ。たまたまファンの関心をよぶような作品の端境期になっているのか、他に理由があるのかよくわかりません。12日の修能は関係なさそうだし、あ、日曜の大規模デモがもしかして影響してるのかも・・・。
 2・7・9位の3作品が新登場ですが、7・9位は中国作品。こういうところにも韓中接近が読み取れます。
 2位「007 スペクター」は、前作「007 スカイフォール」に続くシリーズの第24作目。少年時代の思い出が詰まった生家スカイフォールで焼け残った写真を受け取ったボンド(ダニエル・クレイグ)が、その写真の謎を解き明かすため単身メキシコとで、ぼちぼち諸情報が流されています。
 7位「カエル王国」は、原題が「青蛙王國」という中国アニメです。
両親の意思ではなく、自らが選択した人生を夢見るカエル王国の威風堂々としたお姫様ジャッキーは男に変装して王国のオリンピック出場を決心します。そして市場での戦いに巻き込まれてなんでだかオリンピックに出場することになったさすらいの昆虫焼き商人(?)フレディたちとオリンピックで競うようになります。一方、カエル王国の永遠の仇敵ヘビ魔王は長い間の恨みを晴らそうと、カエル王国のオリンピックの場で恐ろしい計画の実行に取りかかります・・・。競技よりも何よりも、王国を守るべき立場となったジャッキーと選手たちですが・・・。・・・と、女性の社会的地位等、随所に今の中国社会が反映されてるようです。ヒロインのジャッキーは「アナ雪」みたいでけっこう魅力的ですが、あんなに口が小さくてはカエルとして生きていけるのかな? また両生類なのにムネが豊かなのはヘン。(笑) 韓国題は「개구리왕국」です。日本公開はなさそう・・・。
 9位「モンスター・ハント」も、「捉妖記」という原題の中国製ファンタジー・アドベンチャーで、アニメと実写が半々の作品で、中国では今年7月に公開され、歴代最高の興行収入を収めているそうです。日本でも10月23日からの<2015東京・中国映画週間>でオープニング作品として上映されました。舞台は人間と動物や妖怪が一緒に住んでいる超越的時空。しかし人間が妖怪を山へと追いやってしまいます。人間界へ降りてくる妖怪は妖魔払いの道師によって「処理」されます。天荫(ティエンイン)は山奥の村の村長。彼は妖怪を追ってきた道師・小嵐(シャオラン)とはからずも一夜を過ごし、男なのに妊娠して(!)妖怪・胡巴(フーバー)を出産します。人間との戦いから生き残った妖怪の皇后が、まだお腹にいる息子を天荫のお腹に入れちゃったのです。小嵐はある魂胆を秘めつつ天荫と胡巴を連れて村を出ますが、3人は旅の中でさまざまな妖怪や道師と出会ってハプニングを引き起こします・・・。相当に奇想天外な物語だと思ったら、「聊斎志異」中の1篇が原型なのか。ネチズンの間では「おもしろい!」という評価もあり極端に低い点もあり。ヌルボとしては観てみたいかも。しかし日本での一般公開は未定のようです。韓国題は「몬스터 헌트」です。

【多様性映画】

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(1)・・エターナル・サンシャイン・・・・・・・・・11/10・・・・・・・・・・・・・47,894・・・・・・・・・・・312,305・・・・・・・・・・・2,299 ・・・・・・・・108
2(新)・・老いた自転車(韓国)・・・・・・・・・・・・11/12 ・・・・・・・・・・・・・・・765・・・・・・・・・・・・・1,619 ・・・・・・・・・・・・・10 ・・・・・・・・・17
3(4)・・アマデウス・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10/29 ・・・・・・・・・・・・・・・706 ・・・・・・・・・・・・・9,130・・・・・・・・・・・・・76 ・・・・・・・・・・7
4(新)・・セカンド・マザー・・・・・・・・・・・・・・・・11/12・・・・・・・・・・・・・・・・694 ・・・・・・・・・・・・・1,479・・・・・・・・・・・・・11 ・・・・・・・・・18
5(5)・・さいはてにて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11/05 ・・・・・・・・・・・・・・・459 ・・・・・・・・・・・・・2,081 ・・・・・・・・・・・・・15 ・・・・・・・・・・7
       ~やさしい香りと待ちながら~(日本)

 2・4位の2作品が新登場です。
 2位「老いた自転車」は、韓国の家庭(?)ドラマ。気むずかしくて偏屈な性格のせいで誰にも相手にされず、酒と古い自転車を友として生きてきたカンマン(チェ・ジョンウォン)の前に、数年前に家を出て行った息子カルジェの子プンド(パク・ミンサン)が、カルジェが事故で死んだという知らせを持って現れます。血縁は明らかなのに、カンマンは自分の家系の者じゃないとプンドを絶対に認めようとしません。ずうずうしい一面もあるプンドは泣きわめいて床に寝転がり、結局カンマンのもとに残ることに成功しますが、毎日2人はぶつかってばかり。はたしてカンマンとプンドは平凡な(?)家族になれるのか? ネチズン7人の評点は平均9.7の高得点。原題は「늙은 자전거」です。
 4位「セカンド・マザー」は、2015年サンダンス映画祭で審査員特別賞、同ベルリン国際映画祭でフィクション映画部門の観客賞を受賞し、第88回アカデミー賞外国語映画賞にエントリーしているブラジル映画。サンパウロの裕福な家庭でハウスメイドとして働いているバルは、その家の息子をかわいがって育ててきた一方、故郷で暮らす自分の娘ジェシカとは13年離れて過ごしています。ある日そのジェシカ大学入試のため母親の仕事場所に来て13年ぶりに一緒に住むことに。うれしいようなそうでもないような同居生活ですが、自由奔放な娘ジェシカは母親と終始ぶつかってしまいます。バルの方もこれまで守ってきた穏やかな生活は揺れ、母娘間の葛藤は積もっていきますが、次第に変化が訪れる、のかな? 韓国題は「세컨드 마더」。日本公開は未定のようです。