ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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[6月6日顕忠日あれこれ ①] KBSの式典実況中継、ヨ・ジング等が朴槿恵大統領からもらったバッジ等々

2014-06-09 23:53:47 | 韓国の時事関係(政治・経済・社会等)
 韓国では、先週6月6日(金)は顕忠日で休み。前々日の4日(水)は統一地方選挙投票日で公休日に。(日本の日曜日投票とどちらがいいのか?)
 そこで5日(木)も休みを取って5連休にした人がとても多かったようで、5日(木)の「朝鮮日報」には人のまばらな都心部(世宗路)と、外国旅行に出かける人で混みあう仁川空港の写真を並べて載せていました。

 さて、この顕忠日(현충일.ヒョンチュンイル)ですが、<殉国先烈(순국선열)>と<護国英霊(호국영령>の慰霊とその精神を継承するという日で、1956年に制定されました。

 なぜ6月6日なのかというと、元々二十四節気の9番目に当たる芒種(ぼうしゅ)の日にはお墓参り等をしてきたが、たまたまこの顕忠日制定当時は芒種の日が6月6日だったから、と→コチラの記事にありました。

 今年も国立顕忠院で午前9時55分から朴槿恵大統領等が参席して<第59回顕忠日追念式(현충일 추념식)>が催されました。

 今回の顕忠日関係のニュースの中で、日韓のメディアが伝えたのはまず朴槿恵大統領の追悼の辞の内容でしょう。
 それは後回しにして、日本のネット社会で関心をよんだのは、5月11日の「中央日報(日本語版)」の記事。(→コチラ。)
 見出しは国立顕忠院に植えられた日本原産の木、すべて植え替えへです。
 「顕忠院に植えられている日本原産の樹木は顕忠院の趣旨と合わない」との市民団体の請願を受けて、国会は5月2日の本会議で出席214人中賛成186人、反対3人、棄権25人で植え替えられることになった、というものです。樹齢40~50年のカイヅカイブキ等々全体13万2000株の約14%にもなるそうです。
 また、→コチラの<サーチナ>のニュースでは、韓国軍が今回の顕忠日から中国製太極旗の使用を取りやめ、すべて韓国製のものに取り換えると発表したとのことです。コストが中国製品の9倍かかることから多くの韓国ネットユーザーから「そんな必要があるのか」との疑問の声も出ている、とネタ元の中国メディア・財経網は報じているそうです。
 先の日本原産の樹木の植え替えにも相当な費用がかかるはずです。しかしなぜ?
 多くの日本の皆さん(私ヌルボももちろんそうですが)は、この「中央日報」の記事にまたまたカチンとくるかもしれません。
 読者の感想は、「面白い(476件)」が「腹立つ(422件)」を上回っていますが・・・。「面白い」というのは、ここまでくると呆れてしまう、ということでしょうか?
 私ヌルボの感想&見解は、議員たちや記者、そして国民の多くは木の植え替えや韓国製の国旗への変更に純粋に賛成しているとは言えないのではないかということです。つまり、「正論」だから逆らえないのでは、ということ。先のセウォル号沈没事故で犠牲者の家族の声に非を唱えられなかったことにも通じるような・・・。
 で、このようなことをもって韓国社会にそんなピュアな愛国主義が強まっているとは言えないということ。
 ヌルボが懸念するのは、むしろ、セウォル号の件(ラーメン長官や鄭夢準の息子等々)にしろ独島問題等にしろ、「正論」に対して「異論」が言えない雰囲気が濃くなること。政治家も、メディアも、一国民も・・・。

 さて、今回の<第59回顕忠日追念式>もKBS(1TV)で中継されました。私ヌルボは、後からKBSのサイトで視聴しました。

     

 その中で、日本のメディアでほとんど伝えられなかった場面を1つ紹介します。

     

 人気若手俳優のヨ・ジング君(16歳!)です。
 彼が朴槿恵大統領手ずから胸につけてもらったのは「ナラサラン クンナム・バッジ」(下)

     
 ヨ・ジングの他に、祖父が国家有功者という歌手のキム・ヒョニルや、「女子重量挙げの女王」張美蘭(チャン・ミラン)選手等もこのバッジを授与されました。
 ※張美蘭は五輪に3回出場し、金・銀メダル各1個を獲得、世界選手権では4連覇。

 この「ナラサラン クンナム(나라사랑 큰 나무)」とは「国への愛 大きな木」という意味で、2005年に国家報勲処が国のために犠牲となったり国に貢献した人への感謝と礼遇の心の象徴として作ったものです。
バッジの他、いろんなところで用いられているようです。(が、必ずしも十分に知られているとは思えませんが・・・。)
 この図案の上部は太極旗、中央の青い鳥と緑の新芽は自由と未来への希望を表しているとのことです。そういえば、東学農民軍の指導者全奉準を敬愛して歌われたといわれる「セヤセヤ、パランセヤ(鳥よ鳥よ、青い鳥よ)」を思い出されますね。

         

 上左は2013年の高陽(コヤン)世界花博覧会で造られたナラサラン クンナム塔。バッジの260倍の大きさ(5m)なのだそうです。
 右は2013年6月12日の蚕室(チャムシル)球場。プロ野球の斗山ベアーズとSKワイバーンズの試合中の観客席で、やはり国家報勲処の肝いりで行われたイベントです。
 このように愛国心の宣布に力を入れているのは、この数十年の間に「愛国心が薄れてきた」という状況があるから、というのはヌルボ個人の見解というよりもむしろ一般的な見方ですね。
 ナラサラン クンナム・バッジも、別に人気俳優や有名スポーツ選手でなくても→コチラのサイトで会員になると500ウォンで入手できるようで、今回大統領から直接授与された人たちは国民の代表として、という意味あいだったようです。

 さて、KBSの実況中継放送の中では過去の日本の統治下の時代~朝鮮戦争等の画像もいろいろ盛り込まれていました。
 その中で、少し驚いたのが次の画面です。

     

 「日帝強占の犠牲者」が138万余名、「6.25戦争(朝鮮戦争)期間の国軍戦死者」が137,899名、「同 行方不明捕虜」が32,833名、「国連軍戦死者」が40,676名、「同 行方不明捕虜」が9,931名。 はてさて、この138万余名という膨大な「日帝強占の犠牲者」とはどういった人たちをさすのか、よくわかりません。義兵闘争、三一独立運動、関東大震災の時に虐殺された者・・・炭鉱等での労働者等を加えても、とてもこの数字には届きそうもありません。今後の宿題にしておきます。

 なお、式典の最初の方でヌルボにはおなじみのこの人が出てきました。

     

 ベテラン俳優のチェ・ブラムさんです。彼は「祖国のために」と題した追慕の献辞を読み上げていました。
 彼は前日のKBSの人気番組「韓国人の食卓」では慶尚南道の咸陽郡方面に行ってウルシの新芽を食べたりしてましたが・・・。そればかりか、6日夜の顕忠日特集ドキュメンタリーでも語り手を担当していました。
 そのドキュメンタリーもなかなか興味深い内容だったのですが、それについてはまた今度にします。

 最後に、冒頭で少しふれた朴槿恵大統領の追悼の辞がまるごとYouTubeにあったので貼っておきます。わりと聴き取りやすい上、テロップ付きなので韓国語学習者には好都合です。

  

 一応要点は次の通りです。
 ・6.25戦争に出征しながらも国家功労者としての待遇を受けられなかった元将兵に対し、すでに亡くなった方々の位牌を国立墓地に移し、心を込めて礼遇していく。山野に埋まったままの無名の護国勇士を、最後の1人まで家族のもとに送れるように、遺体発掘事業にさらに努力する。
 ・今年、韓国政府の要請で中国のハルビン駅に安重根義士記念館が開館し、西安に光復軍第2支隊石碑が設置された。今後も烈士の愛国精神を称える事業を着実に推進したい。
 ・国家の安全管理システムの大改造と共に、公共分野の改革をはじめとする「経済改革3カ年計画」を進めていく。
 ・北朝鮮政権が真に経済発展と住民の生活向上を望むなら、核開発と挑発脅威を中断すべきである。