ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

①韓国文学②韓国漫画③韓国のメディア観察④韓国語いろいろ⑤韓国映画⑥韓国の歴史・社会⑦韓国・朝鮮関係の本⑧韓国旅行の記録

韓国内の映画 Daumの人気順位 と 週末の興行成績 [1月17日(金)~19日(日)]

2014-01-21 23:54:44 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
 発売から間もない「キネマ旬報2月上旬号」を今日図書館で読めるとはけっこうなことです。
 韓国映画関係に限ると、2月7日公開の「スノーピアサー」についていろんな人がいろいろ書いています。
 「「殺人の追憶」ではトンネル、「グエムル-漢江の怪物」では下水道、そして「母なる証明」では、主人公である母親が営むうなぎの寝床のような漢方薬の店-。意識してか無意識的にか、ポン・ジュノ監督は、これまでの作品の中で必ずといっていいほど、狭く細長い空間を、ポイントとなる箇所で舞台として使ってきた。それゆえ、最新作「スノーピアサー」の内容を聞いたときは、妙に納得がいったものだった。」・・・という塚田泉さんの指摘はなるほど、言われてみればその通り。
 その他、委細省略。公式サイトは→コチラ。もちろん予告編あり、です。

 近日公開の韓国映画をみると、1月25日から「同窓生」「7番房の奇跡」。1月26日のみ「母なる復讐(ドント・クライ・マミー)」。2月1日からイ・ジョンジェ、チェ・ミンシク、ファン・ジョンミン共演の「新しき世界」「結界の男(パクスコンダル」)
 ・・・しかし、「母なる復讐」とか「結界の男」とか、よくこんなふうに訳したものです。

 1月26日には渋谷で<高岩仁監督作品上映会>というのもあって、「江戸時代の朝鮮通信使」(1980年)等が上映されるのですが、私ヌルボ、あいにく所用のため行けないのが残念。詳細は→コチラ

 別件で、個人的に注目&期待の北朝鮮関係映画その1は、前にも少し書いた「北朝鮮強制収容所に生まれて」。3月に渋谷ユーロスペースで公開されるということで、公式サイト(→コチラ)もできています。これまた1月26日午後に明治大学でシン・ドンヒョクさんを迎えてトーク付特別先行上映会が開かれるのですが、あいにく・・・。
 とりあえず、YouTubeに予告編があったので載っけておきます。

  

 なお、この映画については北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会の三浦小太郎さんがご自身のブログで詳しく紹介しています。(→コチラ。)

 そして、同じく3月にもう1つの北朝鮮映画がやはり渋谷のシアター・イメージフォーラムで公開されます。
 「シネマパラダイス★ピョンヤン」がそれ。シンガポールの2人の映像作家が、年間100本近くが作られているという北朝鮮の映画事情を、当然当局の<案内員>の監視つきとはいえ、2年間、4度にわたる長期滞在により取材・撮影したドキュメンタリーです。ピョンヤン演劇映画大学で学ぶ学生や、ベテラン監督などが主な取材対象で、映画制作に打ち込む彼らの姿を映し出す、とのことで、この作品も→コチラで予告編を見ることができます。公式サイトは→コチラ、関係記事は→コチラ
 この作品も1月25日早稲田の大隈記念講堂で試写会があるのですが、あいにく・・・。とほほ。

 ユーロスペースでは3月末に済州島4.3事件を描いた「チスル」も公開されるし、また西ヶ原字幕社のサイト(→コチラ)によると、アップリンクで4月26日から朝鮮戦争当時の智異山パルチザンの戦いを描いた「南部軍」(1990年.詳細は→コチラ)や、80年代の民主化運動家への弾圧・拷問を描いた「南営洞1985」(2012年)が公開されることが決まったとか。

 韓国映画以外。ヌルボ行きつけのシネマ・ジャック&ベティの今後の上映予定をみると、「さよなら、アドルフ」、「鉄くず拾いの物語」、「陸軍登戸研究所」、「ブランカニエベス」、「Fly Me to Minami〜恋するミナミ」、「ペコロスの母に会いに行く」等々、見逃したものも含めていろいろ目白押しなのがすごくうれしい!

           ★★★ Daumの人気順位(1月21日現在上映中映画) ★★★

【ネチズンによる順位】

①弁護人(韓国)  9.5(28955)
②八月のクリスマス(韓国)  9.5(546)
③アデル、ブルーは熱い色  9.2(35)
④あまり者たちのヒッチハイキング(韓国)  9.2(63)
⑤アンニョン?! オーケストラ(韓国)  9.2(29)
⑥ワイルド・ビル  9.1(79)
⑦サンダーと魔法の屋敷  9.0(52)
⑧ラブ・アクチュアリー  9.0(622)
⑨ジャスティン  8.8(42)
⑩ターザン 3D  8.8(150)

 新登場は③「アデル、ブルーは熱い色」だけです。2013年の第66回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを獲得、また東京国際映画祭でも特別招待作品として上映されたフランス映画です。教師志望の女子高生アデル(アデル・エグザルコブロス)は、ある日街ですれ違った青い髪の女性画家エマ(レア・セドゥ)に心を奪われます。その後再開した2人は愛を育むようになります。エマとの関係を通して成長していくアデル。数年後、念願かなって教師になったアデルは、エマと共に暮らし、幸せな日々を過ごしますが、時が経つにつれ2人の気持ちはすれ違いはじめ、いつしか修復できないほどの隔たりが・・・。カンヌの審査委員長スピルバーグは「これは同性愛の物語ではなく、素晴らしい愛の物語だ」と絶賛したとか。また史上初めて監督のほかに出演女優の2人にもパルム・ドールが贈られました。また日本での一般公開は4月5日。韓国題は「가장 따뜻한 색, 블루(いちばん暖かい色、ブルー)」です。

     【専門家による順位】

①楽園の瑕  8.5(2)
②ゼロ・グラビティ  8.2(5)
③アデル、ブルーは熱い色  7.8(5)
④グロリアの青春  7.7(4)
④風景(韓国)  7.7(4)
⑥そして父になる(日本)  7.6(6)
⑥ある過去の行方  7.6(6)
⑧イントゥギ(韓国)  7.6(3)
⑨あまり者たちのヒッチハイキング(韓国)  7.3(3)
⑩弁護人(韓国)  7.2(10)

 新登場は③「アデル、ブルーは熱い色」だけです。これについては前述しました。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績[1月17日(金)~19日(日)] ★★★

         「弁護人」、2位に落ちるも1000万人を超える

【全体】

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・週末観客動員数・・・累計観客動員数・・・累積収入・・・上映館数
1(22)・・アナと雪の女王・・・・・・・・・・・・・1/16 ・・・・・・・・・・1,036,088 ・・・・・・・1,202,305・・・・・・・・9,282 ・・・・・・1,009
2(1)・・弁護人(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・12/18 ・・・・・・・・・・・・510,753 ・・・・・・10,162,460・・・・・・・74,016・・・・・・・・629
3(51)・・エージェント:ライアン ・・・・・・・1/16 ・・・・・・・・・・・・210,724 ・・・・・・・・・254,211・・・・・・・・1,876・・・・・・・・419
4(2)・・容疑者(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・12/24 ・・・・・・・・・・・・183,381 ・・・・・・・4,063,755・・・・・・・29,562・・・・・・・・399
5(5)・・ウルフ・オブ・ウォールストリート・・1/09 ・・・・・・・・・・129,296 ・・・・・・・・・480,571・・・・・・・・3,697・・・・・・・・329
6(4)・・プランマン(韓国)・・・・・・・・・・・・・1/09 ・・・・・・・・・・・・116,392 ・・・・・・・・・602,303・・・・・・・・4,319・・・・・・・・354
7(3)・・ターザン 3D・・・・・・・・・・・・・・・・・1/09 ・・・・・・・・・・・・104,944 ・・・・・・・・・551,192・・・・・・・・4,146・・・・・・・・337
8(7)・・LIFE! ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12/31 ・・・・・・・・・・・・・57,674 ・・・・・・・・・901,353・・・・・・・・6,585・・・・・・・・218
9(新)・・殺人者(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・1/15 ・・・・・・・・・・・・・49,158・・・・・・・・・・・73,922 ・・・・・・・・・554・・・・・・・・207
10(6)・・劇場版ポケットモンスター・・・・1/09 ・・・・・・・・・・・・・45,536・・・・・・・・・・311,436 ・・・・・・・2,025・・・・・・・・249
        ベストウイッシュ 神速のゲノセクト ミュウツー覚醒(日本)
       ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 「弁護人」は2位に落ちましたが1000万人を突破。しかし韓国映画歴代1位の「グエムル 漢江の怪物」の1301万人という数字はまだまだ先。
 今回は1・3・9位の3作品が新登場です。
 1位「アナと雪の女王」はアンデルセンの「雪の女王」に着想を得たというディズニー・アニメ。日本では3月14日公開ということで、すでに公式サイト(→コチラ)で予告編も見ることができます。韓国題は「겨울왕국(冬王国)」です。
 3位「エージェント:ライアン」はトム・クランシー原作の<ジャック・ライアン>シリーズの最新作。経済アナリストからCIAエージェントに転身したばかりのライアンの活躍が描かれる・・・、っていう設定からして私ヌルボの脳内にはいろんな疑念がアタマをもたげてくるんですけど・・・。日本公開は2月15日。韓国題は「잭 라이언:코드네임 쉐도우(ジャック・ライアン:コードネーム シャドウ)」です。
 9位「殺人者」は韓国スリラー。連続殺人魔という正体を隠して田舎の村で静かに暮らすチュヒョプ(マ・ソンドク)。しかし彼の殺人本能を静めた息子(アン・ドギュ)に女の子の友だち(キム・ヒョンス)ができた。ところが彼女はチュヒョプの正体を知っている唯一の存在。チュヒョプは自分と息子のために彼女を消すことにするのですが・・・。原題は「살인자」です。

【多様性映画】

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(13)・・アデル、ブルーは熱い色 ・・・・・・・・・・・1/16 ・・・・・・・・・・7,009 ・・・・・・・・・・・・・・11,144・・・・・・・・・・・88・・・・・・・・・38
2(2)・・そして父になる(日本) ・・・・・・・・・・・12/19 ・・・・・・・・・・・・・5,199 ・・・・・・・・・・・・・・94,179・・・・・・・・・・711・・・・・・・・・35
3(1)・・オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ・・1/09 ・・・・・・・・・・・5,192 ・・・・・・・・・・・・・・22,767・・・・・・・・・・172・・・・・・・・・44
4(3)・・ドン・ジョン ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1/09 ・・・・・・・・・・・・・1,198・・・・・・・・・・・・・・・11,304・・・・・・・・・・・90・・・・・・・・・19
5(新)・・フルートベール駅で・・・・・・・・・・・・・・1/16・・・・・・・・・・・・・・・962 ・・・・・・・・・・・・・・・・2,051 ・・・・・・・・・・13・・・・・・・・・17

 1・5位の2作品が新登場です。
 1位「アデル、ブルーは熱い色」は上述しました。
 5位「フルートベール駅で」は、2009年ニューイヤーズ・デイに22歳の黒人青年が鉄道警官に射殺されたという実際の事件に基づいた作品。アメリカでは当初7館だけで公開スタートしたのが異例のヒットで1063館へと拡大公開され、サンダンス映画祭では作品賞、観客賞をダブル受賞したという話題作です。主人公のオスカーが命を絶たれるまでの一日を再現しながら、彼を取り巻く人々の愛情と悲しみを浮き彫りにしていくという内容で・・・、というあらすじを読んだだけでも心が痛みます。日本公開は3月21日。韓国題は「오스카 그랜트의 어떤 하루(オスカー・グラントのある1日)」です。

[韓国]民族主義の色濃い伝統的な地理観? <白頭大幹>をめぐって③

2014-01-21 09:21:27 | 韓国・朝鮮関係の知識教養(歴史・地理・社会等)
 → <[韓国]民族主義の色濃い伝統的な地理観? <白頭大幹>をめぐって①>
 → <[韓国]民族主義の色濃い伝統的な地理観? <白頭大幹>をめぐって②>

 昨年6月、私ヌルボはサークル仲間と計4人ので聞慶方面漫遊の旅に出かけ、聞慶からはバスで店村に出て、そこから店村→栄州→堤川→清州とぐるっと韓国内陸部のローカル線の旅を楽しんできました。
 その時は<白頭大幹>のことは言葉さえ知りませんでした。ところが、後になって知ったところでは、その頃「白頭大幹観光列車」という観光列車が運行していたのです。そして、われわれ4人がマッコリを飲みながら「何の変哲もない田舎だな~」とぼんやりと景色を眺めたりしていた栄州~堤川も、その観光列車の路線の一部だったのです。(その時の旅行記録は→コチラ。)

 その「白頭大幹観光列車」については、<コネスト>の記事で詳しく説明されています。(→コチラ。)
 それによると、運行期間は2013年4月12日~12月31日。
 「O-train」と「V-train」の2種類があり、「O-train」は堤川~栄州~太白~堤川の路線を約5時間で1周する循環列車、「V-train」は白頭大幹の峡谷部を往復する峡谷列車で、汾川~鉄岩間を約1時間かけて運行します。

     
         【「O-train」と「V-train」の運行地図。】

 この観光列車はなかなかの人気だったようで、「100日間で10万人突破」というニュースが7月<聯合ニュース>等で報じられました。(→コチラ。)

 関係の動画もいろいろありますが、次の動画は国土交通部(日本の国土交通省に相当)作成のもので、KORAIL(韓国鉄道公社)及び慶尚北道・忠清北道・江原道の3自治体も名を連ねています。
 タイトルが<몸과 마음의 정화, 백두대간 탐방열차 타고 에코힐링여행 떠나요(体と心の浄化、白頭大幹探訪列車に乗ってエコヒーリング旅行に出かけましょう)>。この文言だけでも<白頭大幹>がどんなイメージで宣伝されているかがよくわかります。

   

 では、このような<白頭大幹>のブームはいつ頃から起こったのでしょうか?

 これまで見てきたように、90年代登山家の間で注目され、縦走が行われるようになったのが最初です。

 雑誌「山(산)」の2003年4月号に<백두대간 종주기 발행 붐 뜨겁게 인다(白頭大幹縦走記ブームが熱い)>という記事がありました。(→コチラ。)
 この記事によると、.登山家たちの間に白頭大幹の縦走ブームが続いたのは95年前後から。その中で、とくに1994年7月17日~9月25日の71日間を単独無支援で縦走したキル・チュンイルさんが96年に縦走記「71일간의 백두대간(71日間の白頭大幹)」を刊行。悪条件の中を苦労して縦走した体験とともに準備や所要時間、日程表等の情報や資料も載せたこの本は「しばらくの間、大幹縦走者たちに教科書のような本として人気を集めた」そうです。その後、白頭大幹の全行程を1度に縦走するのでなく、週末等に少しずつ何回、何十回にも分けて縦走を達成する形式もふつうに行われるようになり、またその記録もさまざまなものが書かれるようになりました。中には、行くことのできない北朝鮮部分の白頭大幹を「地図の上で歩く」、つまり仮想山行記まで書かれるようになったとか。
 また、この記事の中でやっぱり、と思ったのは「このように絶えず出ている大幹縦走記の共通点は、<大幹を縦走する間に生まれる私たちの国土を愛する心>である」という点です。
 この白頭大幹縦走ブームは、日本での「日本百名山ブーム」にも相通じる部分が少しあるかもしれませんが、<愛国心>という要素は韓国らしいところです。

 このような白頭大幹縦走記は今ネット上でいくつも読むことができます。
 そんな中、2008年の<アジア経済>に「白頭大幹、縦走ブームに毀損深刻」という記事が掲載されました。(→コチラ。) 10年来の縦走ブームや開発等によって白頭大幹の生態系が脅かされているというもの。これまたさもありなん、という内容です。

 ところで、白頭大幹という概念が太白山脈等学校教育の中で教えられてきた山脈図を否定するような形で注目されてきたということは、もしかして学問的に問題を生ずることがあるのでは・・・、ということを前の記事で書きましたが、韓国のサイトをいろいろ見てみると、次のような記事が見つかりました。

 2005年<ハンギョレ21>の「山地図の激突が始まる」と題した記事です。(→コチラ。)
 それによると、国土研究院は地表の指標の高低データと衛星映像などを活用して、3次元映像による新しい朝鮮半島の山脈地図を発表したが、この山脈地図は既存の小•中•高の地理の教科書に掲載されたものと非常に異なっている。新たに描かれた韓半島の山脈は、既存の14の山脈ではなく、48個の山脈を含んでおり、山の位置や外見も差が大きい。この発表の通りなら、韓国の国民は100年近く「事実でない知識」を「騙されて学んだ」ことになる。また、この地図は登山家や在野の学者が支持する「山経表」の山並みの体系と似ている
 一方、これに対して地理学界の反応は冷ややかで、「国土研究院の山並み概念は、自然科学で扱う山脈とは異なる概念である。山地の規模と連続性のほかにも、山脈の生成原因、地質などが山を分ける重要な基準になる」との批判があるということだ。

 ・・・さて、この対立する2つの概念はどういう形で決着がつけられたのかはよくわかりません。
 ただ、山林庁の公式サイト(→コチラ)を見ると、「2つの方式の表記の長短所」という次のような表が載せられています。
     
   区分   白頭大幹    山脈体系
   性格○山と川を基礎として山並みを形成
○山並みは山から山へのみに続く
○地形と一致する自然な線
○地下の地質構造線を根拠として土地の上の山を分類
○山脈線が中間で川によって途切れる
   長所○景観上よく見られる断絶のない分水嶺を中心として河川・山並み等の把握が容易
○したがって山地利用計画と実践に便利
○風水地理的韓国の地形と山系の理解に便利
○国際慣行に符合している
○山脈形成の原因と関連性が深い

 ・・・つまりは、両論併記ということですね。

 そして、この<白頭大幹>概念の復活に当初からつきまとっていた要素が近年いよいよ形をとって現われてきたようです。
 それは風水思想とか(民族の)<気>といった考え方。

 たとえば、2012年11月の「中央日報(日本語版)」の<植民地時代に断絶された「梨花嶺」を復元>という記事(→コチラ)を読んでみてください。
 日本語版では白頭山脈と表記されていますが、原文はもちろん白頭大幹です。白頭大幹の一部である聞慶に近い梨花嶺は日本強制占領期の1925年に道路が造成されて脈が途切れたが、87年ぶりに韓国政府が復元に着手して、従来の道路の上にトンネルを造成した、というものです。
 また2012年2月の「朝鮮日報」の記事(→日本語)によると、白頭大幹は植民地時代や開発時代に各種の道路工事が行われる過程でおよそ50ヵ所が断ち切られたが、43億6000万ウォンをかけて梨花嶺のトンネル造成を進める他にも、「政府は江陵の大関嶺、聞慶のボル峠、尚州のヌル峠・ピ峠・化寧峠、南原のサチ峠・女院峠など計13ヵ所を2020年までに復元することとした」とのことです。

  
   【梨花嶺。以前は道路によって分断されていた分水嶺(左)が、トンネルが造成されてつながったのです。(右)】

 いやあ、これは2ちゃんねらー等々のかっこうのネタになるというか、すでになってますね。
 しかし、太白山脈の北の、北朝鮮領内の楸哥嶺(チュカリョン)構造谷という低地帯では鉄道(京元線)がトンネル一つなく敷設されているそうだし、運河も低地帯に沿って突き抜けているというし、そこにも将来的にはトンネルを造って白頭大幹をつなげるという構想なのでしょうか?

 ・・・白頭大幹について3回にわたり長々と書きました。
 12月8日の<★ジュニア向き教養書「大東輿地図」を読む>からだと4回です。
 思わぬところから韓国人の伝統的地理観や、その喪失と復活及びその背景等々を知ることとなりました。
 例によって細々と書きすぎた感もありますが、基本的には読者の皆さん向けというより(勝手ながら)自分が調べたことの備忘録のようなものなのでご容赦を・・・(!)。