ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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[韓国語]えっ!? 「コンガン(健康)ハセヨ」は文法的に誤りだって!(・・・と言われても・・・)

2010-06-07 17:11:15 | 韓国語あれこれ
 日本人だからといって、日本語を正しく使っているとはかぎりません。
 「ら」抜き言葉についてはいろいろ論議もされ、「どんでもありません」とかも指摘されたりしています。
 私ヌルボが昨今気になっているのは、「○○みたいに・・・」というべきところを「○○みたく・・・」といったり、「○○とは違って・・・」を「○○と違くて・・・」という人が増えていること。
 言葉も時代とともに変化するものだとはいえ、ヌルボとしてはもちろん「○○と違くて・・・」などは断じて使うことはありません。

 ほとんど皆が間違って使っている場合は、上記のような話題にさえなりません。間違ったまま、辞書でも慣用語として定着します。

 たとえば漢字の読みで例をあげてみましょう。クイズ形式にしました。
※範囲指定をすると正答が現れます。ついでにハングル表記も考えてみて下さい。

①独擅場 → ○どくせんじょう ×どくだんじょう 韓国語では독천장
②洗滌  → ○せんでき    ×せんじょう 韓国語では세척
③撒水  → ○さっすい    ×さんすい  韓国語では살수
④捏造  → ○でつぞう    ×ねつぞう  韓国語では날조
⑤十本  → ○じっぽん    ×じゅっぽん 
※十回、十階、十手、十戒 → どれも<じゅっ>は×で<じっ>が○

 韓国語でも、同様に韓国人の間でもふつうに用いられていても、文法・語法上では誤りとされる例はいろいろあるようです。

 最近、KBSが子ども向きに編集した「어린이를 위한 바른말 고운말(子どものための正しい言葉 きれいな言葉」という本を読みました(下参照)。
 間違えやすい言葉を具体的な場面を例にわかりやすく説明した本です。
 「なーんだ、韓国人(の子ども?)もけっこう基本的なレベルで間違って使っているんだなー」と思い、なぜかうれしくなりました。“우리 아빠가 수영을 배워 주셨다.”とかね。もちろん배워→가르쳐です。

     

 ところが、この本で心中で思わず「エーッ!」と声を上げたのが1ヵ所、次の例です。
 先生の家を訪ねた子どもの、帰り際のあいさつ。これが間違いとされてる文です。
 “선생님도 항상 건강하세요. ”
 「コンガンハセヨ(ご健康でいらっしゃってください)」ですよ。このよく聞かれる言葉が語法に合わないと表現だというわけです。

 以下、説明の部分を要約すると次の通りです。
 「韓国語では、ふつう命令形として使えるのは動詞や<名詞+하다>の形で動詞として使われる言葉である。形容詞や、幸福(행복)하다や健康(건강)하다のように<名詞+하다>の形でも形容詞として使われる言葉は命令形をとしては使われないようになっている。」
 さらに例をあげて、<예쁘십시오>や<뜨거우세요>はありえないでしょ、というわけです。

 なるほどなー・・・、と素直なヌルボは3割ほどナットクしかけたところで、「待てよ・・・」という心の声が聞こえてきました。
 ネット上で探ってみると、たとえば阿部美穂子さんは건강하세요について次のように記しています。
 「別れ際により多く使われます。日本語の「お元気で」や「お体に気をつけて」のような位置づけになるでしょうか。「건강하세요(コンガンハセヨ)」は、手紙などでも文末のあいさつとして重宝されています。」

 他の多くのサイトでも、多くの皆さんが疑問もなく使っています。

 韓国サイトを見てみると、やっぱりふつうに使っています。
 あるブログに、「コンガンハセヨは間違ってるといわないでください!!」というタイトルの記事もありました。
 中学生の時、塾の試験問題(国語)で、「次の中で間違った表現を選べ」というのがあって、その正答が「할아버지, 건강하세요!」だったというもの。
 この問題を何年か後にも覚えているのは、やはり韓国人にとってもひっかかるものがあるからでしょう。さらに続けて、「今まで新年の挨拶(세배.歳拝)にもそう言ってきたのに・・・、そんな以前から使ってきた言葉を、後から形容詞だからとか言って誤りだとは.. ㅠ.ㅠ」と、最後はもう泣きまで入ってます。

 上記の本では、正しい用い方として“건강하게 지내십시오.”“행복하게 지내세요.”をあげています。
 たしかに、日本語でも「お幸せに・・・」や「お元気で・・・」は連用修飾語で、後に「お過ごし下さい」のような動詞命令形が付くわけで、それと同様に考えればいいということでしょう。

 ここまで書いてふと思った疑問なんですが、「コンガンハセヨ」が間違いなら、「アンニョン(安寧)ハセヨ」だってダメなんじゃないの? ・・・ということ。これも形容詞ではないですか。

 命令形で、また1つふと思い出したことがあります。日本語の動詞で、文法の間違いというのとは違くて、意味的にありえないだろうと思った例です。
 ある学校の先生が、いくらていねいに説明しても「わかりません」を連発する生徒に業を煮やして、「わかれっ!」と怒鳴ってしまったという話。(・・・あんまりおもしろくなかったですか?)

※7月4日の付記
 その後この件について話題にしたところ、「アンニョン(安寧)ハセヨ?は疑問文だから問題はありません」との指摘を受けました。
 その時は、「そうか、これはイージーミスだったなー」と素直に思いました。しかし後で考えてみると、この頃お店屋さんを出るときなど、フツーに「アンニョンハセヨ~」といわれますが、疑問文じゃなく命令文として用いられてるのでは、という疑念がフツフツと起こってきました。これはいかように考えるのがいいのでしょうか? →さらに2011年4月5日の付記 ヌルボの韓国語の先生=言語学者N先生から「それは「アンニョンヒカセヨ~」の聞き間違いでしょ?」と言われてしまいました。たしかに文中のhはほとんど消えるし、そう言われればそうかも・・・(恥)。さらに追い打ちで、「なんで「コンガンハセヨ」がいけないの? ら抜き言葉がなぜいけないの?」とたたみかけられ、返答に術なし。十本をジッポンと言うのが歴史的には本来の形だとしても、そう発音しなければならないという根拠はない、というのが文法より実際の言葉の使われ方を重視するN先生らしいところです。