ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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海外派遣労働者による外貨稼ぎ、昔の韓国と今の北朝鮮の違い 

2010-05-19 01:34:36 | 韓国の時事関係(政治・経済・社会等)
 韓国の保守言論の代表格「朝鮮日報」については、いろいろ批判もありますが、読んでみたくなる記事が多いのも否定しがたく、私ヌルボもエンタメコリア月額313円を支払って過去記事を読んだりもしています。

 最近では、5月11日イジンソク記者が「北朝鮮の人夫と韓国の鉱夫の違い」というタイトルで書いた記事を興味深く読みました。
原文
→日本語訳(上)(下)

 このブログでも昨年12月4日12月24日、今年3月14日の記事で北朝鮮の外貨稼ぎのための海外派遣労働者のことを書きましたが、上記「朝鮮日報」の記事によると、今北朝鮮の海外派遣労働者の職種は4つに大別されます。

 それは①建設②縫製③飲食④貿易で、彼らが稼ぎだす外貨は3~4000万ドル、レストラン経営の収入は1300万ドルにのぼるとか・・・。1万数千人にのぼる彼ら北朝鮮労働者は、賃金の半額程度を<忠誠資>」の名目で当局に差し出しているそうです。

 実は韓国でも、朴正煕大統領時代の1960~70年代、外国の炭鉱に労働者や看護婦を、外貨稼ぎを目的として派遣していたとのことです。(知らなかった・・・。)

 イ・ジンソク記者は「北朝鮮も30~40年前の韓国のように海外に人材を派遣し、ドル資金を稼いでいる。しかし、北朝鮮の経済が一向に改善しないのはなぜか」と問題を提起し、記事を続けます。

 ある時西ドイツを訪れた朴正煕大統領夫妻は、坑道(←갱도なんですね)や霊安室で働く鉱山労働者や看護婦のもとに赴きます。彼らの歌う愛国歌(国歌)は涙のため最後まで歌えなかったそうです。すると、彼らを派遣した貧しい国の大統領夫妻も彼らとともに泣いたといいます。

 1963年から77年まで、西ドイツに派遣された鉱山労働者7万9000人、看護師1万人。彼らが稼いだお金を担保に韓国政府は担保に借款を確保しました。そして産業発展に投資を行い、造船所や製鉄所を建設しました。

 一方、金正日総書記はというと、周知のように最近中国を訪問しましたが、最高級のベンツに乗り、面積750平方メートルの高級ホテルのスイートに泊まったそうです。そして数年前のロシア訪問の時もそうでしたが、今回も金総書記が中国やロシアで必死に外貨を稼ぐ北朝鮮の労働者に会いに行ったという話はありません。

 イ・ジンソク記者は、最後に、朴大統領とは対照的に、「金総書記と党幹部は労働者が汗水流して稼いだ外貨を独占し、北朝鮮の住民はそのカネがどこに使われているのかも知らない。これこそが南北の違いだ」と結んでいます。

 なるほどなー。1960年代の日本では朴正煕は武力で人民を抑圧する軍事政権の親玉という印象で、金日成&北朝鮮は反米・反帝のプラスイメージが広範にありましたが、今では・・・。

 今の韓国で朴正煕大統領を評価する人たちが大勢いるのも上の記事のような話があるからでしょうね。もちろんそれで民主勢力に対する非道な弾圧等が相殺されるというものでもありませんが・・・。

 ところでところが、同じ「朝鮮日報」の2008年の過去記事の中で、「ドイツ派遣鉱夫らの賃金担保に借款説は事実無根」というのを見つけまして、レレレのレーとなってしまいました。

 調査にあたった過去史整理委員会が借款を提供したドイツ債権銀行に確認したら、「借款提供は派遣鉱夫や看護士とはまったく関係ない」との回答を得たとのことなんですよ。
 さらに、「鉱夫・看護士の賃金担保借款導入説」は90年代、朴正煕政権の一部関係者が「鉱夫5000人と看護士2000人を派遣し、彼らの給与を3年間、ドイツのコメルツ銀行に強制的に預け入れる方式で借款を導入した」という主張により明らかになった、とあります。
 記事によると、過去史整理委員会は「しかし、ドイツに派遣された鉱夫や看護士らが韓国の経済発展に寄与したことは事実」だとしているそうです。

 朴大統領が西ドイツの炭鉱を訪れた時のエピソードは(誇張や脚色があるにしろ)事実でしょうし、関連の美談が場合によっては意図的に作られ、それが受け入れられていくのも、朴大統領の<力量>といったものかもしれません。