私は環境教育をすすめるNGO、エコプラットフォーム東海のメンバーとして、2005年に開催された愛・地球博の地球市民村に参加しました。愛着<衣>生活館という出展で、今の衣生活が持続不可能なことを学び、持続可能な衣生活を提案するものでした。以下は展示のためのストーリーノートです。どこにも発表していないので、ここでみなさんに読んでいただければと思います。
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「一枚の服が作られてから処分されるまでにはさまざまな物語があります。
今からそのほんの一部をご紹介します。
それは私たちにとってびっくりするような物語です。」
●基本コンセプトについて:「着すて生活から愛着生活へ」
今の先進国ではあらゆるモノが商品となり、生活の必要以上のモノを購入し、使い捨てています。衣服はその典型です。かつて布は貴重品であり、ぼろぼろになるまで使い回されました。今は流行を追って次々に購入しては捨てるという生活=「着すて」生活が一般的です。服といっしょに服をつくる過程で発生した人々の労苦と環境負荷も捨てられていきます。それに対して、好きな服こだわりの服を大切に着て、さらに着なくなったら持ち主を変えたりデザインを変えたりして一枚の布を長く愛しながら使おうという提案が「愛着」生活です。このプログラムを通して来場者には「簡単に手に入るものは簡単に作られたわけではない」ことに気づいてもらい、着すて生活をふりかえるきっかけにしていただいきたいと思います。
●繊維の分類
繊維には天然繊維と化学繊維があります。
天然繊維には綿、羊毛、絹、麻などがあります。化学繊維には木材パルプなどから作る再生繊維(レーヨンなど)と石油を原料とする合成繊維(ナイロン、ポリエステル、アクリルなど)があります。世界の服の原料としては、綿、羊毛、合成繊維がほぼ1/3ずつを占めています。
これらの原料から紡績(糸を紡ぐ)、製織(布に織る)、染色、裁断・縫製をへて衣服になります。布には織物と編み物があります。編み物とはジャージのように伸び縮みする布のことです。
【土づくり・育てる・摘む】
「一着150gのTシャツをつくるのには350gの綿花が必要です。」
●綿の歩留まり
収穫時のコットンボールの重量を100%だとすると、ゴミと繊維の短い真綿と呼ばれる部分を取り除くと40%減、染色で6%減、布の裁断により19%減で、最終的に43%が衣服になります。
[綿花物語資料室 http://www.homeworks.jp/cgi-bin/labo/board.cgi]
「平均的な農地では5.2m2にそれは育ちます。」
●綿花の作付面積と生産量
2004年には、世界で3300万haに綿花が作付けられ、2220万トンの綿花が収穫されました。平均反収は675kg/10aです。中国ではざっと1000kg/10a程度、アメリカは600kg/10a程度、インドは300kg/10a程度の反収です。
[International Cotton Advisory Commitee, Cotton: Review of The World Situation, Vol.58 No.2, 2004. http://www.icac.org/cotton_info/publications/samples/reviews/erev_november_04.pdf]
●綿花生産大国
2003年の綿花生産の上位5カ国は以下のとおり。
1)中国 492 万トン
2)アメリカ 375 万トン
3)インド 231 万トン
4)パキスタン 174 万トン
5)ウズベキスタン 102 万トン
[『繊維ハンドブック』]
「安く大量の綿をつくるために、広大な土地に一面の綿花が植えられます。
そうすると害虫の被害にさらされるため大量の殺虫剤が撒かれます。また機械でつみ取りをする際には枯葉剤で葉っぱを落としてからつみとります。
世界の農薬の25%が綿花畑に撒かれています。綿花畑は世界の農地の2.3%にすぎません。世界中で農民の健康や周囲の水質に悪影響がでています。」
●農薬投入について
綿花は食用ではないため大量に農薬が投入されています。特にbollworm(“ワタイモムシ”)という害虫がコットンボールを食い荒らして大きな被害を及ぼします。2003年、アメリカ・ルイジアナ州では29種類の化学農薬が10aあたり2.8kgほど散布されました。
[http://www.nass.usda.gov/la/0337.PDF]
インドやパキスタンでは、農民が農薬の危険性に関する詳しい知識がないまま取り扱う場合が多いため、健康被害がひろがっています。アメリカのカリフォルニアでは河川が農薬で汚染されることが問題になっています。
一方、統合農薬管理Integrated Pest Managementと呼ばれる技術で農薬の使用量を減らす努力も行われています。中国では麦と綿花の二毛作を行い、麦の収穫期と綿花の苗の時期を2ヶ月ほど重ねると、麦に寄ってくるテントウムシが綿花の苗につくアブラムシの天敵であり、これによってアブラムシによる被害を抑えることができるようになりました。
[Meng Fanxi, Integrated Pest Management in China Upon Cotton/Wheat Intercropping System, 1999. http://computing.breinestorm.net/china+cotton+system+world+intercropping/ 2005/4/25]
「1998年の不作の年にはインドでは360人の綿花農家が自ら命を絶ちました。
肥料や農薬を買うお金が払えないからです。」
●インドの綿花農家の自殺について
インドでは一般に緑の革命によって農作物の生産量は飛躍的に増大しました。緑の革命とは、ハイブリッド種子の使用、化学肥料や農薬の大量投入など、農家にとっては生産コストが多額にかかる農法への転換でした。綿花栽培も例外でなく、大量に安価に生産する必要からモノカルチャーとなり、農家は資金を調達して種子・肥料・農薬を購入し、生産物を売って返済するとともに、自分で食べる食糧も市場で購入することになります。綿花の国際市場価格はこの20年間上昇しておらず、インドに多い零細農家は苦しい経営を強いられ、しだいに負債が積み上がっていきます。したがって不作は経営的に大きな痛手となります。1998年の不作はbollwormによる被害が原因でした。その収穫期から1年程度以内での自殺犠牲者は約360人とされていますが、その後も自殺は続いており、総計ではWarangal州だけで600人を超えるという報告もあります。
[G.D.Stone, Biotechnology and Suicide in India, 2002.
http://www.artsci.wustl.edu/~anthro/research/biotech_suicide.html 2005/4/18]
「一方、害虫をよせつけない種が栽培されはじめました。遺伝子組換による新品種です。
これを使うとコストが安くなるため綿花の国際価格は下がり、小農家の経営はますます困難になっています。
今ではアジアで生産される綿の服の60%以上は遺伝子組換綿花を使用していると推測されています。
この人工的な生き物が、自然の生き物たちの世界にどのような影響を及ぼすかについてはよく分かっていません。それがわかるまでには長い年月を必要とします。」
●遺伝子組換綿花について
アメリカの種苗会社モンサントはbollwormの病原菌であるBtバクテリアの遺伝子を組み込んだコットンの種を開発し、これはBtコットンと呼ばれています。これはbollwormを寄せ付けず、農薬使用量を減らすことができます。その結果アメリカでは生産コストを抑えることができるようになったため、最近の綿花の市場価格は低下傾向にあります。2005/2006年のシーズンには世界の作付け面積の26%、綿花生産量の35%が遺伝子組換綿花によるものと予測されています。またアメリカやオーストラリアで生産された遺伝子組換綿花の輸出先はアジア地域に集中する傾向があるため、近年アジアで生産される綿製品の遺伝子組換綿花依存度が急激に上昇しています。食用の遺伝子組換作物はヨーロッパや日本で消費者からの拒否反応を受けていますが、綿花に関しては今のところそのような動きは見られません。
[International Cotton Advisory Commitee, Cotton: Review of The World Situation, Vol.58 No.2, 2004. http://www.icac.org/cotton_info/publications/samples/reviews/erev_november_04.pdf]
●オーガニックコットンについて
化学肥料や農薬を使用せず、遺伝子組換種子でなく伝統的な種子を使って栽培される綿花で一定の条件を満たして認証されたものがオーガニックコットンです。最近ではオーガニックコットンを素材に、染料も天然染料を用いた服が、環境にも身体にもやさしい服として注目されています。アウトドア衣料のブランドである「パタゴニア」のように綿糸に関してはオーガニックコットンを使用するという方針を採用しているアパレルメーカーもでてきました。
【紡ぐ・織る】
「今から300年前、日本の農家の嫁は一晩で一反(約11m)の布を織ったそうです。
朝には姑が次の糸を持って待っていました。
そのころ、夜なべ仕事の明かりとして松明をともすため
松の木の根を掘ったので、はげ山がひろがりました。」
●江戸時代の綿生産とエネルギー問題について
江戸時代中期になると農村にも貨幣経済が浸透して、農家にも現金収入が必要となり、綿製品生産をはじめとする副業が各地にひろまりました。地域によっては1反(約10a)あたり米ならば1石半のところ、綿花を育てると米4石分の銀で売れたために、綿と麦の二毛作が行われました。三河(愛知)と河内(大阪)が当時の二大生産地で、生産された綿花は大阪と江戸の問屋に集められたあと、地方の農村に送られ、農家の副業として糸紡ぎ・機織りが行われました。
副業は「夜なべ仕事」として行われました。このころ、夜の照明は松の木の根を小さく割ったものを燃やしていました。それで副業が盛んだった地域では入会地で松の木の根が掘られたためはげ山が広がりました。私有地の森林は荒れておらず、今日、開発途上国で「共有地の悲劇」として知られるメカニズムがすでに日本では江戸時代にはたらいていたということがわかっています。
[『はげ山の研究』]
「今から109年前、蒸気の力で動く織機が発明され
人々は手織りの仕事を失うとともに過酷な労働から解放されました。
最新の機械は一日で550mの布を織ります。幅は手織り機の10倍です。」
●紡織の機械化について
豊田左吉が石炭炊きの蒸気で動く「豊田式汽力織機」を発明したのが1896年です。(ちなみに左吉がこれら自動織機の特許権をイギリスのプラット社に譲渡した際に得た資金で息子の喜一郎が自動車の制作をはじめたのがトヨタ自動車のはじまりです。)現在の最新の織機はウォータージェット織機という機械で、はば140から390cmの布を一分間に38cm織ることができます。消費電力は3kWで50台から100台に一人の作業員で運転します。
[産業技術記念館による]
「今では150gのTシャツ一枚を作るのに、一軒の家が使う電力の7時間分のエネルギーを消費し、90gのごみをだし、1240gの二酸化炭素を排出します。」
●繊維製品のライフサイクルアセスメント(LCA)について
ある製品が原料の採取からお店で売られるまで(場合によっては処分されるまで)のすべてのプロセスにおける環境負荷を見積もるのがライフサイクルアセスメントです。経済産業省繊維局が2003年に行った衣料品のLCA調査では、綿の生産、輸入、紡績、製織、染色、縫製、流通の各段階における固形廃棄物、NOx、SOx、CO2の排出量とエネルギー消費量を主に業者へのアンケート調査によって見積もっています。綿製品についてエネルギー消費量が大きいプロセスは、染色、縫製、綿の生産、製織の順番です。
[経済産業省『繊維製品(衣料品)のLCA調査報告書』2003年]
「一方で日本では手織りの良さが見直され、機で自分の着る服の布を織る人が増えています。」
【色とりどりに染める】
「今から40年ほど前から石油を原料とする合成染料が普及し、服は鮮やかで多彩な色に染め上げられるようになりました。その一方で、染色工場は製紙工場やメッキ工場と並んで川の水を汚す排水源のひとつとなりました。また合成染料が人間の身体に悪影響を及ぼす場合があることがだんだんわかってきました。今年の4月には中国でよく使われてきたある染料に発ガン性があることがわかって使用禁止の措置がとられました。身体に影響がでるのに20年かかるため、今まで分からなかったのです。
自然の草木を煮出した染料では、鮮やかさはありませんが、落ち着いた風合いの布に染め上がります。」
●服装新聞(中国、2005年4月14日付け) 中華服装网記事
「服装染料の発癌性が「蘇丹紅」より高い
国家織物服装製品品質監督検査センターは、最近、織物服装に使用されているベンジダインなどアゾ染料が分解した発癌性物質の毒性が、ホルムアルデヒドや蘇丹紅より高いと発表した。しかも、この毒性は人体に20年も潜伏することができる。来年の1月1日から、すべてのアゾ染料を使用する織物が禁止される。
アゾ染料は、三級発癌物の第一グループに属し、悪性毒瘤を誘発する可能性がある。一方、よく知られている蘇丹紅はまだ三級発癌物の第二グループに属し、毒性がそれほどではない。ベンジダインによく接する人は普通の人たちより膀胱癌になる可能性が28倍分増えて、体に20年も潜伏することができる。さらに、アゾ染料は水に解けないので、水域や環境に悪く、汚染がとてもひどい。
国家織物服装製品品質監督検査センターの責任者によると、服装企業がたくさんのアゾ染料を使うのは、価格が安いだけではなく、いろいろな色がそろっている、着色しやすい、色が鮮やであせにくいことによる。一方、環境によい染料は、色の種類が限られて、着色しにくい、色も鮮やかでなく価格も高い。」
[http://www.51fashion.com.cn/BusinessNews/2005-4-14/54172.html 紀文彬訳]
【布が「衣服」に】
「大阪万博より前、日本人の服はお母さんか街の仕立屋さんが縫ってくれました。
今、日本人の着る服の70%は中国の女性たちによって大量生産工場で縫われています。
彼女たちの賃金は1時間50円ほどです。いなかから都会に出てきた少女たちは将来を夢みながらけんめいに働いてます。」
●中国と日本の繊維産業の盛衰について
日本の繊維産業は明治期の産業革命のころから日本の主力産業であり輸出産業でした。その生産量は1980年代半ばまで上昇した後に近年急激に減少しています。現在では衣服の自給率は19%、布で9%、糸で8%、繊維原料(石油、綿、羊毛)では0%です。
一方、中国の繊維産業の成長はめざましく、中国の経済発展の原動力のひとつになっています。中国ではこれまで国内で生産された繊維原料を使って紡績・製織・染色・縫製を行ってきました。現在では年間150億着の衣類を生産しています。そのうち約3割が外国に輸出され、最大の輸出先が日本です。中国は世界最大の綿花生産国ですが、中国国内で生産される綿花では不足するようになり輸入が急増、綿花の世界最大の輸入国になりました。2005年には世界の綿花の貿易量の32%を中国が輸入すると見込まれています。
『繊維ハンドブック』、経済産業省『繊維・生活用品統計年報』、『中国紡織業発展報告』
「一方では手作りやオーダーメイドで世界に一着しかない服を着ることが、最高のおしゃれとして見直されはじめました。」
●日本におけるファッショントレンドについて
日本では1980年代以降、安い中国製衣類の大量消費時代に入りました。しかしながら、アパレル業界の認識では、最近の消費者動向は、量販店やデパートでの販売が不振となり、一方、小さなお店でこだわりの品を少量揃えた店の販売が伸びているし今後も伸びるとされています。誰でも同じものを持つことになる大量生産品に対する魅力がうすれてきたというのが業界の共通認識であり、好きな服こだわりの服を大切に着るという愛着生活は時代の空気になりつつあります。
[松原武幸『図解アパレル業界ハンドブック』東洋経済新報社2004年、『よみがえれファッション店』]
【運ぶ】
「この体操用ズボンは、はるか中東から原油として運ばれ、またアメリカから綿花として運ばれ、日本で糸となり、布に織られ、もう一度海を渡って中国へと送られました。そこで裁断・縫製されてまた日本に帰ってきました。全部で30,000kmの距離を旅しました。地球を3/4周する長い旅です。」
【お店で買う】
「日本ではひとりにつき毎年21着の服を購入します。
この10年で1.8倍に増えました。」
●購入数について
毎年21着というのは、紳士服・婦人服・子供服・スポーツウェア・ワーキングウェア・紳士シャツ・横編製品の販売合計約25億着を日本の人口で割った数で、肌着類・靴下類は入っていません。
[経済産業省『平成13年度繊維産業活性化対策調査』2002年]
「今年流行する服の色は3年前の世界での決定をうけて国内では1年半前に決定されます。
茶色も赤もそれぞれ約16年ごとに流行しています。」
●流行色の決定について
国際的にはINTERCOLORという組織が流行色を決定し、それをより具体化する形で国内では日本流行色協会という組織が流行色を決定します。各アパレルメーカーやデザイナーはそれを参考に服のデザインを考えます。2005年春夏の流行色のコンセプトは「Amusing」(楽しさ)で、不透明な時代だからこそ透明感あふれる白を基調に明るいブルー・グリーンなどのクリアな色が指定されています。流行は自然発生的に生じるのではなく、業界の合意として「作られる」ということはあまり知られていません。
流行を追いかけてたくさんの服を持っているのに次々に新しい服を買ってしまう人をさす「ファッション・ヴィクティム(犠牲者)」という言葉もあります。現代ではあらゆる商品について流行をつくることによって必要以上のものを買わせて売り上げを確保する社会のしくみが発達しています。衣服はその典型です。
日本の和服の世界では、母から娘に受け継がれる際に染め直しが行われていました。和服の生地は色を落として白に戻すことができます。サイズも着付けによっていかようにも変更可能です。また最近では古着を積極的なファッションアイテムとしてとらえる動きも活発になってきました。飽きたら捨てるのではなくて、持ち主を変えたり、デザインを変更したりしながら大切に着ることができるようなしくみが整えば愛着生活が現実のものになるでしょう。
「服を選ぶときに49%の人はデザインが自分に似合うかどうかを、17%の人はサイズを、11%の人は値段を重視します。どこで誰がどのように作ったかを気にする人はほどんどいません。」
●衣料購入時の最重点項目について
これは日本アパレル産業協会が2002年に実施した消費者に対するアンケート調査の結果です。質問項目には「生産国」「環境への負荷」などはそもそも入っていません。
「一軒の平均的な日本人の家のたんすには270着の服が保管されています。」
●これは日本アパレル産業協会が実施したアンケート調査結果で、270着の内訳は成人女性用113点成人男性用89点子供用68点です。この中に下着類は入っており靴下、ネクタイ、スカーフ類は入っていません。
[経済産業省『平成13年度繊維産業活性化対策調査』2002年]
【着なくなる】
「たんすの服はおよそ5年間使った後に処分されます。
回収されて古着として利用されるもの、裁断されてウェスとなるもの、ワタにして作業用手袋となるもの、などがあります。
再利用されるのは全体の21%です。回収されても使い道が少ないからです。残りは焼却されます。」
●衣服の処分について
経済産業省『平成13年度繊維産業活性化対策調査』2002年によれば、着なくなった服の79%は廃棄されそのほとんどは一般廃棄物として処分されています。譲渡・バザー・フリマ・中古衣料輸出というかたちでリユースされるのは13%、ウエス(機械をふくぼろ布)や反毛(フェルトとして自動車の断熱材に使われたり、クッションの中綿になったり、糸にして軍手を編んだりする)としてリサイクルされるのが8%です。
また、経済産業省『繊維製品リサイクル懇談会報告書』2001年によれば、故繊維業界が回収した使用済み繊維製品の量は1998年の年間約20万トンから2001年の約50万トンへ急増しているのに対して、中古衣料・ウエス・反毛の需要は20万トンから25万トン程度と横ばいで、結局回収量が増えた分はリサイクル不能として処分されていることになります。服をより長く使い購入数を減らして年々の処分量を減らしていかなければ繊維のリサイクルシステムは行き詰まってしまいます。
「たくさんの物語でいろどられた一枚の服。
そのひとつひとつに思いをはせながら、大好きな服をいつまでも大切に着ませんか。
それが私たちが提案する愛着<衣>生活です。」
●人口減少社会にむけて
日本ではちょうど今年か来年が人口のピークでこれから人口は減少していきます。当然全体の商品の需要も低下し、経済も縮小していくと考えられます。企業は計画的に事業を縮小させて利益を確保し、また、従来将来の投資のために企業に内部留保していたお金を労働者に配分し、労働時間を短くすることによって、労働者もより豊かな暮らしを実現することができます。これからは賃金はそれほど上昇しませんが、余暇の時間が増えると期待されます。すなわち「スローライフ」を実現できる社会的な条件が整うというわけです。人々の嗜好も大量生産品にはあきたらず、こだわりのモノ・一品モノ・手作りのモノに対する関心が強くなっています。人口減少社会の先には成熟した持続可能な社会が展望できます。そういう時代の転換点に立って、進む向きをどちら向きに変えるかを指し示すのが愛着<衣>生活館のプログラムのもつ意義です。
[『人口減少社会を設計する』中公新書2002年、神野『地域再生のための経済学』中公新書2002年]
謝辞
このストーリーをつくるにあたって、名古屋大学の学生である佐藤陽祐さん(理学部4年・当時)、服部亜由未さん(文学部2年・当時)、鶴田牧子さん(情報文化学部2年・当時)に全面的に協力していただきました。また中国からの留学生、紀文彬さん(文学部2年・当時)には中国語の文献の翻訳・解説をしていただきました。記して感謝します。
今後よく考えて、愛着を持って
生活したいと思います。
なかなか考えさせられました。