小説家、精神科医、空手家、浅野浩二のブログ

小説家、精神科医、空手家の浅野浩二が小説、医療、病気、文学論、日常の雑感について書きます。

花粉症SM

2010-02-26 13:51:41 | Weblog
愛子はクラス委員長で秀才である。愛子は花粉症の季節が苦手だった。毎日マスクをしてた。いつも、クシュン、クシュンとつらい思いで授業を受けていた。だが今年は、有難いことに花粉の飛散量が少なかった。ある日の放課後の帰宅途中のことである。同じクラスの団鬼二がぱっと建物の陰から飛び出した。
「あっ。鬼二君」
愛子はニコッと笑った。だが鬼二は、愛子の手をグイとつかむと、ズルズルと愛子を連れて行った。
「お、鬼二君。どこへ連れて行くの?」
「うるせー。黙ってろ」
鬼二は愛子の手をつかんで愛子を、廃屋に連れて入った。そして、椅子に座らせて、後ろ手に椅子に手を結びつけ、足も椅子の脚に縛りつけた。愛子は動けない。
「お、鬼二君。何をするの」
鬼二は、黙って、カバンを開けた。そして、ビニールに包まれたスギの枝を取り出した。鬼二は愛子のマスクを取り外した。
「ふふ。こうするのさ」
そう言って、鬼二は、スギの枝を愛子の顔の前に持っていって、ふー、と枝に息を吹きかけた。
「ああっ。やめて。そんなこと」
愛子は髪を振り乱して叫んだが、鬼二は、やめない。ふふふ、と不敵に笑っている。スギ花粉が愛子の鼻腔や目の結膜に入った。愛子は、クシュン、クシュンと、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、に、目は充血して、痒さに何度も、瞬きした。
「や、やめて。鬼二君。なぜ、こんな事をするの?」
愛子は激しく訴えた。鬼二は不敵に笑った。
「ふふ。毎年、この季節は、花粉で苦しむお前の姿を見るのが、俺の楽しみなのさ。美人が、鼻水を垂らして何度もティシュで鼻をかんでいる姿を見るのは最高だからな。俺は、女のみじめな姿を見る事に最高の興奮を感じるんだ。だが今年は花粉の量が少なくて、お前が苦しむ顔が見れなくて、残念に思ってたんだ。どうやら、今年は、お前の苦しむ顔が見られそうもないから、スギ林へ行って、スギを取って来たんだ」
そう言って鬼二は、ふー、と杉の雄花を吹きつけた。
「や、やめて。鬼二君。そんなこと」
玲子は、クシュン、クシュン苦しみながら、鬼二に哀願しつづけた。だが鬼二は、笑いながら、ふー、と杉の雄花を吹きつけつづけた。玲子は、クシュン、クシュン言いながら苦しみつづけた。鼻水がダラダラと制服の上に流れ落ちた。
「ほら。チーしな」
そう言って鬼二は、ティシュペーパーを取り出して愛子の鼻をティシュペーパーで挟んだ。愛子は、チーした。
「こうやってるのは、お前をいじめるため、だけじゃないぞ。お前は、弱っちろい体質だから、花粉症になるんだ。だから、こうやって、花粉に強くなるよう鍛えてやってるんだ。ありがたく思え」
そう言って鬼二は不適に笑った。
「お、鬼二君。それは違うわ。花粉症はアレルギー疾患なの。アレルギー疾患の患者は、IgE抗体が肥満細胞にくっついて感作されてしまっていているの。だから、花粉症の場合は、アレルゲンである花粉に接触しないようにすることが大切なの。アレルゲンに晒されていると、ますます感作されてしまってアレルギーが悪くなるの。この前の生物の授業で、習ったでしょう」
愛子はくしゃみをしながら苦しそうに言った。
「うるせー。そんなの間違いだ」
鬼二は愛子に説教されて怒って、またスギの花粉を愛子に吹きつけた。
「違うわ。あっ。そういえば、この前の生物の授業の時、鬼二君、寝ていたじゃない。ちゃんと聞いてれば、そんな誤解は起こらなかったわ」
愛子は、くしゃみをしながら訴えつづけた。だが鬼二は聞こうとしなかった。


こういう小説を読みたい人は、私のホームページの「愛子と鬼二」を御覧下さい。
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