小説家、精神科医、空手家、浅野浩二のブログ

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信心深い銀行強盗(小説)

2018-05-03 02:49:38 | Weblog
信心深い銀行強盗

ある所に、信心深い、銀行強盗、が、いました。
男は、キリスト教を信仰していましたが、非常に信仰心が強く、若い頃、洗礼を受け、クリスチャンとなっていました。
大人になっても、男は、強い信仰心を持ち続け、日曜日には、かかさず、教会に行っていました。
そして、三度の食事の前には、必ず、「主の祈り」、をしていました。
男の信仰心は、それはそれは、強く、聖書を完全に暗記していました。
男の仕事は銀行強盗でした。
明日は、犯行の決行の日でした。
男は、手を組み、神に祈りました。
「神さま。どうか、明日の銀行強盗が成功しますように。アーメン」
翌日の銀行強盗は、成功しました。
幸運なことに、その日、ちょうと、隣りの街で、別の銀行強盗が起こって、犯人は犯行に成功して、逃亡して、警察官が、ほとんど駆り出されていたので、警察官の人数が、手薄、になっていたので、逃亡に成功したのです。
それでも、一台、パトカーが、逃亡する、彼の車を追いかけてきました。
男は、猛スピードで逃げました。
ちょうど、先に踏み切り、が、見えてきました。
電車が、近づいてきて、カンカンカン、と、音が鳴り、踏切りの、遮断機が、降り始めました。
男は、猛スピードで、降り始めている、遮断機を、突破しました。
しかし、追跡していたパトカーが、踏切り、の手前に来た時には、遮断機は、完全に降りてしまっていたので、パトカーの警察官は、「チッ」、と、舌打ちしましたが、止まるしかありませんでした。
こうして、男は、パトカーを振り切って、逃亡することに、成功しました。
男は、その夜、祈りました。
「神さま。銀行強盗を成功させて下さりまして、有難うございます。アーメン」
しかし、銀行員の証言から、そして、防犯カメラの映像から、彼の容貌が、犯人に似ている、と、警察に通報されました。
それで、男は、参考人として、警察に呼ばれました。
男は、前の晩、神に祈りました。
「神さま。どうか、私をお守りください。アーメン」
翌日、男は、警察官の取り調べ、を、受けました。
警察官は、眉を寄せながら、男を見ました。
「あなたは、どういう人が、ということを、近所の人に聞きました。みな、あなたは、礼儀正しく、日曜には、かかさず、教会に行く、と言って、とても、銀行強盗をするような、人間ではない、との発言ばかりだ」
そして警察官は続けて言いました。
「しかし、人が良くて、教会に行っているからといって、犯罪を犯さない、とは、言いきれない。教会に行くことによって、周りの人に、善人を装っている、可能性もあるからな。そこでだ。お前が、本当に、クリスチャンだというのなら、聖書を暗唱してみろ」
警察官は、聖書を開いて、聖書のあらゆるヵ所を、ランダムに、男に聞きました。
「マタイ伝3章24節を言ってみろ」
「ヨハネ伝4章21節を言ってみろ」
「コロサイ書3章11節を言ってみろ」
「イザヤ書5章31節を言ってみろ」
男は、それに、全て、正確に答えました。
警察官は、うーん、と唸りました。
「嫌疑不十分」
ということで、男は、釈放されました。
その晩、男は神に祈りました。
「神さま。私を守って下さって、有難うございます。アーメン」
こうして男は、銀行強盗を続けました。
犯行は、はれずに、男は、80歳まで、長生きし、家族に見守られながら、安らかに死んでいきました。
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