あやし小児科医院 第2ホームページ

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1歳2ヵ月の男児、アトピーで血液検査をしたら貧血が見つかりました   

2006-08-14 22:48:14 | Weblog

Q  1歳2ヵ月の男児です。アトピーかどうか調べるために皮膚科で血液検査をしたところ、アトピーの可能性はなかったのですが、ヘモグロビンの値が9.0でした。説明で貧血が発達に影響するということでしたが、詳しく教えてください。 (K.A 診察券NO.14729 )

A 乳児期で貧血の状態が長期にわたると、身体や精神発達に影響がでることがあります。

1)たまたました血液検査のヘモグロビン(血色素)の値が9.0だったとあります。ヘモグロビン値の単位はg/dlと表示され、100ccの血液中にこのヘム蛋白質が何gあるかを表しています。
この値は大人ですと男性が13~18g/dl、女性では11~16g/dlが正常範囲です。
子どもでは年齢差があり、生後1ヵ月では11.5g/dl以下、3~6ヵ月では10.5g/dl以下、6ヵ月~6歳では11.0g/dl以下が貧血と考えられています。年齢がいくつでも、ヘモグロビン値が10g/dl以下になったら貧血の治療を受けた方がよいです。

2)貧血には原因によりいろいろな貧血があります。このケースではすでに貧血の原因については検査が済んでいると思います。そしてここでは、この年齢で圧倒的に多い鉄欠乏性貧血について話をすすめます。

一般に胎児は妊娠後期に母親から、生後4~5ヵ月位までは外から鉄の供給を受けずに育つことができるに十分な鉄を与えられて誕生してきています。しかし、出生体重が小さい場合、多胎児の場合、出産時に胎盤早期剥離や前置胎盤などの出血があった場合などは、十分な鉄を与えられずに出生しています。したがって、このような場合は、乳児期早期に貧血の状態になってしまいます。

3)乳児では貧血が進行すると、不機嫌、不活発、食欲不振が現れます。これが長期にわたると身体および精神発達が遅れることが生じます。
身長はあまりこの影響を受けませんが、体重は増えが悪くなります。精神発達では知能や言語の発達障害を認めます。ウォルター医師はヘモグロビンが10.5g/dl以下が3ヵ月以上続くと発達障害が出てくると報告しています。

4)母乳は鉄の含有量がミルク(調整粉乳には鉄が添加されている)に比べ少量なので、母乳だけで育てた場合、生後4~5ヵ月以後には鉄が不足することが起こります。そのために、5ヵ月からは鉄分の入った離乳食を与えることが必要となります。低出生体重児では生後2ヵ月から鉄剤の投与を受けるとよいでしょう。

一般に肉・魚などの動物性食品中の鉄の方が、穀物・野菜・卵黄などに含まれた鉄よりも吸収のよいことがわかっています。毎日少量でも、肉や魚を摂取するようにしてください。