学問空間

【お知らせ】teacup掲示板の閉鎖に伴い、リンク切れが大量に生じていますが、順次修正中です。

山口昌男と後深草院二条

2017-05-26 | 渡辺浩『東アジアの王権と思想』
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2017年 5月26日(金)23時14分37秒

24日の投稿で書いたように、私は藤田覚氏の「『後醍醐天皇』などと呼びはじめたのは、たかだか八〇年ほど前からに過ぎない」という見解は単なる勘違いだと思っています。
そこで、近世において『太平記』の読者層は具体的にどのようなものだったのかを知りたくて若尾政希氏の『「太平記読み」の時代─近世政治思想史の構想』(平凡社ライブラリー、2012、初版は1999)読み始めたのですが、この本は異常に面白いですね。
若尾氏が着目する『太平記評判秘伝理尽鈔』は、日本の「宗教的空白」がいかにして生まれ、変容して行ったか、という私自身の問題意識に照らしても、参考にできる箇所が極めて多いように感じられます。
読み終わった後で少し感想を書きたいと思います。

『「太平記読み」の時代』
若尾政希氏

>筆綾丸さん
>あの労作
ありがとうございます。
熱心に更新していたのは最初の数年だけで、後は時々補充した程度、2005年あたりからは単に閲覧できるだけの状態だったのですが、それでも時には質問をもらったりしていました。
約20年の間、誰からも指摘されなかったのですが、私としては『後深草院二条』は山口昌男のアルレッキーノ論の応用問題という位置づけでした。
1990年頃、それなりの危機感をもって様々な本を読んでいた中で、私には山口昌男の著作が特別に光り輝くものに見えました。
そしてその数年後、『問はず語り』に出会い、次いで『増鏡』を読んで、この二つの作品の間にもの凄く頭が良くて冗談好きなアルレッキーノが隠れている、ここに山口理論を全面展開できる舞台がある、と確信して、憑りつかれたように中世文学・中世史の世界に分け入って行ったのですが、これは一生の間でもめったに味わうことのできない楽しい日々でした。
今年の二月、本当に久しぶりに山口昌男の読み直しを行なったところ、昔のように山口ワールドに楽しく没入することはできず、その限界をいろいろ考えさせられたのですが、それでも山口昌男は私にとってのかけがえのない先生ですね。
山口昌男は東大国文出身で、卒論も中世を扱っていますから、『問はず語り』を読んでいないはずがないのですが、不思議なことに山口が『問はず語り』に言及した文章を見つけることができません。
あるいは山口が理解できる「笑い」の質と、後深草院二条の「笑い」の質が違うのかな、などと考えたことがあるのですが、本人にお聞きする機会は永遠に失われてしまいました。

>オマール君
ウサギの世界にもネコ界のオマール君に匹敵する存在がいるようですね。


※追記(2018.5.22)
「山口昌男は東大国文出身で」は間違いで、文学部国史学科の出身です。
ちなみに大学院は国文学を希望したものの、落ちたそうです。

「山口昌男が大学院に落ちた理由」

※筆綾丸さんの下記投稿へのレスです。

Edo ergo sum 2017/05/26(金) 19:11:47
小太郎さん
『後深草院二条─中世の最も知的で魅力的な悪女について─』がインターネットから削除された理由は知りませんが、あの労作の消失はほんとに勿体ないことです。

http://www.bbc.com/news/world-australia-39931050
あのサイトには猫のイラストがいろいろ登場しましたね。世の中には大きな猫(体長120?、体重14?)がいるもので、Cogito ergo sum が似合いそうな風格がありますが、オマール君は、むしろ、Edo ergo sum というべきかもしれません。
http://mymemory.translated.net/ja/%E3%83%A9%E3%83%86%E3%83%B3%E8%AA%9E/%E8%8B%B1%E8%AA%9E/edo-ergo-sum

-------------
"We buy human-grade kangaroo meat at the supermarket," Ms Hirst said. "It's the only meat we could find that he actually wants to eat."
-------------
スーパーで human-grade kangaroo meat を買うというのは、お国柄ですね。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 諡号「顕徳院」が追号「後鳥... | トップ | 『帝室制度史』を読む(その6) »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

渡辺浩『東アジアの王権と思想』」カテゴリの最新記事