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一橋大学名誉教授・村井敏邦氏の見解

2015-12-18 | 石川健治「7月クーデター説」の論理
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2015年12月18日(金)10時45分55秒

>筆綾丸さん
昨日の投稿で触れた海渡雄一・清水勉・田島泰彦編『秘密保護法 何が問題か─検証と批判』(岩波書店、2014年)に村井敏邦氏の「刑事法から見た秘密保護法の問題点」という論文が載っていますが、これもちょっとすごいですね。
肝心の部分は短いのですが、恣意的な引用ではないことを明確にするため、周辺を含めて引用してみます。(p185)

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 「特定有害活動」と「テロリズム」については、適正評価の項目のところで、その定義が出てくる。そこでは、前者は「公になっていない情報のうちその漏えいが我が国の安全保障に支障を与えるおそれがあるものを取得するための活動、核兵器、軍用の化学製剤若しくは細菌製剤若しくはこれらの散布のための装置若しくはこれらを運搬することができるロケット若しくは無人航空機又はこれらの開発、製造、使用若しくは貯蔵のために用いられるおそれが特に大きいと認められる物を輸出し、又は輸入するための活動その他の活動であって、外国の利益を図る目的で行われ、かつ、我が国及び国民の安全を著しく害し、又は害するおそれのあるものをいう。」とされ、後者は「政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要し、又は社会に不安若しくは恐怖を与える目的で人を殺傷し、又は重要な施設その他の物を破壊するための活動をいう。」とされている。
 前者のうち、「公になっていない情報のうちその漏えいが我が国の安全保障に支障を与えるおそれがあるものを取得するための活動」というのは、「外国の利益を図る目的」ということで限定されるにしても、戦時下ならば、いわゆる利敵行為一般である。九条下の日本が前提であるから、利敵行為という概念ではなく、日本以外の国一般の利益を図る目的ということになり、はなはだ広い概念である。
 テロリズムは、もともと定義が難しい概念である。ここでは、「政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要」する行為がテロリズムとされており、思想の自由を侵害する規定である。
 以上のように、この法律で保護の対象とされている秘密事項は、あまりにもあいまいで広すぎる。憲法の保障する明確性の原則に反する。
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ということで、「特定有害活動」に関する部分にも若干の疑問を感じますが、<「政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要」する行為がテロリズム>は、やはり清水勉弁護士(の旧説?)と同じく三類型説と判断せざるを得ないですね。
うーむ。
清水氏は『世界』851号で紹介されているプロフィールによると(p147)、

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一九五三年生まれ。東京弁護士会所属。日本弁護士連合情報問題対策委員長・秘密保全法対策本部事務局長。共著に『プライバシーがなくなる日』(明石書店)『「マイナンバー法」を問う』(岩波ブックレット)他。
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というそれなりの肩書きを持った人ですが、村井敏邦氏は一橋大学名誉教授だけでも立派な肩書きなのに、元日本刑法学会理事長でもあるそうで(ウィキペディア)、そんな人でも<「政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要」する行為がテロリズムとされており、思想の自由を侵害する規定である>と断定するんですねー。
びっくりしましたが、特定秘密保護法のテロリズムの定義を誤解していたのはこの二人だけではなく、まだまだ沢山いそうですね。

村井敏邦(1941-)

>青柳瑞穂
ちょうど『青柳瑞穂の生涯─真贋のあわいに』(新潮社、2000年)を読んでいるところなのですが、骨董に関する薀蓄をちりばめたほのぼの物語かと思ったら、祖父を怜悧なメスで解剖して行く孫娘の手術記録みたいなもので、ちょっと恐ろしい作品ですね。


※筆綾丸さんの下記投稿へのレスです。

ホワイト・ゴッド 2015/12/17(木) 11:25:45
小太郎さん
清水弁護士の迷解説を読むと、本当に司法試験に合格した人なのか、信じられないですね。弁護士資格を返上したほうがいいかもしれません。
四方田氏も、テロルと映画を論じながらテロリスムの定義を誤解しているようでは、話になりません。ボケるにはまだ早すぎます。

http://www.whitegod.net/
犬と言えば、映画『ホワイト・ゴッド』は面白かったです。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9D%92%E6%9F%B3%E7%91%9E%E7%A9%82
青柳いづみこ氏の祖父は青柳瑞穂ですか。ドビュッシー好きは祖父の影響が強いのでしょうね。青柳氏と村上春樹氏の対談が実現すれば面白くなりそうです。

YouTubeはとても便利で、最近はCDを買わなくなりました。
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