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書評:丸島和洋著『戦国大名の「外交」』

2013-12-01 | 丸島和洋『戦国大名の「外交」』
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2013年12月 1日(日)22時52分53秒

久しぶりにアマゾンに書評を投稿してみました。
絶賛しています。
総合評価は星五つ。

http://www.amazon.co.jp/review/R1ZPUD6W0FFN11/ref=cm_cr_pr_perm?ie=UTF8&ASIN=4062585596&linkCode=&nodeID=&tag=

>筆綾丸さん
3年前もけっこうヤバい話なのでは、と思いましたが、想像以上でしたw
今回拘束された方は85歳で持病もあるそうですから、仮に死亡するようなことになればアメリカも黙っていないでしょうね。
旅行者は激減して貴重な外貨獲得もできなくなるのは明らかなのに、三代目の考えることは訳が分かりません。

※筆綾丸さんの下記投稿へのレスです。
http://6925.teacup.com/kabura/bbs/7047

※追記(アマゾンへの投稿内容)

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5つ星のうち 5.0 簡明な記述の背後にある膨大な学識, 2013/12/1
By 鈴木小太郎
レビュー対象商品: 戦国大名の「外交」 (講談社選書メチエ) (単行本(ソフトカバー))

戦国大名の「外交」という不思議な書名に魅かれて本書を手に取ったのですが、最初の方で「主権」概念に関する著者の考え方が理解できず、躓いてしまいました。
私は法学部出身なのですが、憲法と国際法の世界では主権は「国家の最高独立性」を意味するのが通常です。
そのため、著者の<戦国大名をひとつの「主権的な国家」、日本国に対する「下位国家」として把握する>(p8)といった表現には抵抗を覚えました。
また、著者は戦国大名を「国家」と把握する理由をp8以下で三つ挙げていますが、第一の理由(法律の制定権)と第二の理由(戦国大名が自分自身を「国家」「御国」と呼んだということ)、 第三の理由(ポルトガル宣教師の視点)の相互関係が今一つ理解できませんでした。
そこで、自分の掲示板に拙い感想を書いたところ、書名で検索されたらしい著者が訪問してくださり、私が抱いた疑問に対し、丁寧にご説明して頂きました。
まず、基本的な心構えとして、「一般書」に論文レベルの説明を要求する発想はいけないとのご指摘を受けました。いわゆる「意識高い系」になってはいけない、という御注意です。
次に、私は一般向けに書かれた本から文章を引用し、専門用語を理解しようとしている、そして自分が知っている専門用語を使って、議論を進めようとしているとのご指摘を受けました。
即ち、「ことば」として専門用語を知っているだけであって、理解はしておらず、そのことを自覚できていないから、話は延々と空転し続ける、との厳しいご指摘でした。
丸島先生によれば、概して、一般向けに書かれた本では、専門用語の説明は捨象されるか、きわめて単純化されるそうです。
他方、専門家というものは、自分のフィールドにおいて幅広い議論を有しており、丸島先生であれば、大名間外交論、取次論、国衆論、地域国家論、領域支配論など広汎な領域をカバーされており、本書ではそのうち最初のふたつに話をしぼって、他のものは簡易的な説明にとどめたそうです。
そこまで絞っても、1冊の本に2つの議論というのは多いので、丸島先生は色んな方から持ちネタを使いすぎだとからかわれたそうですが、ただ、丸島先生の中では、大名間外交論と、取次論のうちの半分はセットなので、1冊にまとめたほうが読者に親切だろうと判断して本を書かれ、その結果、当然、その他の議論はさわり程度となったのだそうです。
つまり、研究者の議論というのは、表に出ている部分はほんの一部で、バックグラウンドにあるもののほうが大きいことがしばしばあり、研究者が考えていることすべてを出すには、1冊の本では足りないし、もしそのようなことをしようものなら、話にまとまりがなくなって、本として成り立たなくなるとのご説明でした。
そして、丸島先生が重要な教訓として強調されたのは、研究者に接する時には、「その人がまだ書いていない構想」を想像するということも必要になるということでした。
研究者・研究史に敬意をもって接する、というのはそういうことなのだそうです。
もちろん、丸島先生は自分に敬意をもて、といっているわけではないことは強調されていました。
さて、私が当初に抱いた疑問ですが、丸島先生は憲法・国際法についての議論はもちろん詳細にご存じでした。
そして、憲法・国際法のみならず、西欧政治史・思想史・外交史・法哲学に関する膨大な学問的蓄積を踏まえた上で、日本中世史の学説は独自の発展を遂げており、その研究成果は着実に戦国時代の地域国家論に反映されているとのご説明を受けました。
詳細は煩雑になるので省略しますが、私は日本中世史の専門家とばかり思っていた丸島先生が、西欧の歴史に関しても膨大な知識と深遠な洞察力を有されていることに驚嘆しました。
以上、いささか長くなりましたが、本書の簡明な記述の背後に存在する膨大な学問的宇宙、そして丸島先生の博覧強記に対する私の畏敬の念は伝えることができたのではないかと思います。
本書は簡明でありながら日本の歴史学の水準の高さを世界にアピールすることのできる稀有な書物なので、是非とも英語等に翻訳して世界各国で出版していただきたいと願っております。
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