思考ダダ漏れ

なんとなく書こう

断片

2018-08-06 11:32:17 | 断片・詩・構想・屑
以前作ったものを再構成したものだが、もう続けられそうもないので、ここに捨てておこうと思う。もう少し練った上で描き始めればよかったんだろうな。疲れた。

  暗闇嫌いの私は、年がら年中電球を付けたまま生活していた。そのせいで毎年、一部屋ずつ付かなくなっていった。その度に、隣の部屋で暮らすようになった。そして、遂に今年残り一部屋となって、それもそれまでと同じように、あっという間に足場を失い、ゴミの上に敷かれた布団だけが唯一の生活空間となってしまった。
  その日は嵐だった。午前一時過ぎに雷が鳴った。隣の住民たちはそんなことも気にせず騒いでいた。この頃はよく、男女何人かで朝方まで騒いでいるのが常だった。私はよく苛立ち紛れに壁に耳を当て、彼らの会話を聞いているのだった。おかげで彼らの名前をある程度知ることができた。どうやら学生らしかった。とはいえ、そんなことをしたところで、煮え繰り返った腹が治るわけでもなかった。結局のところ、誤魔化すには眠るに限る。ごみだらけの部屋でも横になってしまえば(私はこのゴミ屋敷の恐怖から逃れるために、眠る時に必ずイヤホンを付けていた)案外寝られるものだ。
 空白電球を浴びる瞼の裏に、緑の小さな渦が巻かれ始めた。私は緑から黄、黄から赤、赤から緑へ変わる渦の中を高速で突き進んでいた。彼らの笑い声が視神経を飛び出して、渦目掛けて白濁液を放っていた。
  突然、身体が動かなくなった。私はまた来たなと思った。雷鳴と笑い声が鼓膜の奥を響いてきた。耳の中を覗くと、悪魔たちが歪なスピーカーを運んでいた。小指を突っ込んでみると(私はもう今耳を覗いたのは誰なのかということに疑問さえ抱かなくなっていた)、彼らは驚いたのか、慌てて鼓膜を突き破った勢いで眼球をくり抜き、再び眉間から入り込むと、黄土色の膿に絡まれながら左の鼻孔を飛び出したかと思えば、右の鼻腔を突き進み、頭蓋骨を削り始めた。スピーカーから歯科で聞き慣れたドリル音が響いてきた。すると、右上の第一大臼歯の虫歯が思わず飛び出して、悪魔たちにこう叫んだ。
「お前たちのせいで痛いんだ!」
  実際、彼は私の気持ちをよく理解していたが、他の歯から除け者扱いされているせいで、どの歯も彼に賛同しようとしなかった。それどころか、彼は相変わらず抜かれないように私に媚を売っている、と口々に言いだした。悪魔たちは滑稽で仕方なかった。自分の歯の統率も取れないようなやつが、まともな生活を送れるとでも思っているのかね? 私は思っていないどころか、それよりも部屋の清掃もできないことの方が余程問題だと思った。左上の第二大臼歯と第三大臼歯の銀歯が彼を心配そうに見つめていた。くり抜かれた目玉が溜息をついた。
「どっちにしろ歯じゃねえか」
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