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短文感想『鏡』

2018-10-24 16:58:01 | 断片・詩・構想・屑
村上春樹の『鏡』だ。ついに村上春樹を読み出したか、というわけではなく、これはあくまでも講義で用いられたので読んだに過ぎない。
  さて、「鏡」というのは文学だけでなく、あらゆる虚構において一つの役割が与えられているように思う。ファンタジーなら何かの扉の役割を果たしているだろうし(英米の児童文学にあったように思う。あるいはブラッドボーンでも良い)、リアリズムなら幻覚的作用を催すもの、だろうか。概ねこの幻覚の元はアイデンティティが関係しているだろう。言い方は悪いが、大抵リアリズム系統の「鏡」が自分を映す場合、当人たちは嫌悪感を抱きがちではないだろうか。まあそう例を挙げられるわけでもないが。
  この『鏡』もまた、アイデンティティに関係する作品で、建前と本心、理想と現実、あるいは、無個性と個性、というような対比の役割を担っている。だいぶ丁寧な作品だろう。高校か中学の教材だそうだが、その辺りに読んでもらうにはちょうど良い作品だと思う。また、軽やかさの裏にある語り手の暗い心情を極力隠した形となっているのも、一つの特徴だろう。意外とこのような点は井伏鱒二なんかの系譜に近いような気もする。
  もちろん好みかどうかというのは別問題で、この『鏡』だけではあまりまだ入れ込める気にはなれない。いずれ読みたいとは思いつつ、先延ばしにしている作家だ。
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