感染症・リウマチ内科のメモ

静岡県浜松市の総合病院内科勤務医ブログ

ANCA関連血管炎への診断的アプローチ:後半

2013-03-07 | 免疫
前回の続き。ANCA関連血管炎(AAV)への診断的アプローチについて。前回は症候やANCA検査について。今回は臓器系統別の考慮すべきこと。結局生検と病理組織学的診断が一番重要ということ。

Rheum Dis Clin North Am. 2010 Aug;36(3):491-506.
Diagnostic approach to ANCA-associated vasculitides.
Gaffo AL.




臓器別の診断時配慮すべきこと

呼吸器

・単純X線やCT検査でWGを示唆に関する所見は、結節または不規則な薄壁空洞の存在、通常は複数(症例75%)、両側性で、わずかに胸膜下やperibronchovascular領域に好発。  空洞は敗血症性塞栓、転移、または肺膿瘍に間違えられうる。 WGの肺胞出血や気管支肥厚によりエアスペースの浸潤影領域を示しうる。
・MPAではより下肺区域に好んでエアスペースの混濁を斑状またはびまん性両側性に発生し肺胞出血を示唆する。 MPA患者においてすりガラスと網状陰影、中隔肥厚、蜂巣を含む肺線維症のCT所見が記載され、それは不顕性および再発性肺出血に続発することが理論付けされている。
・CSSは肺野周辺部に好んで一過性かつ対称性のすりガラス陰影または浸潤影、気管支壁肥厚、胸水、結節がみられる。

・気管支鏡検査の役割。 肺胞出血疑い例の評価、鑑別疾患除外のため、気管支内病変の評価のため。 CSS疑いでは良好な収集率が報告、しかしWGでは採取サンプルは多くの場合適切な診断評価には不十分。
・症例が圧倒的に診断的特長があるとか、手技が絶対禁忌でない限り、胸腔鏡下手術による外科的肺生検はAAVによる肺病変の疑い例で、 診断を確立するための最適な手順である。

頭頸部

・WG限局型で副鼻腔炎、中隔の穿孔、及び鞍鼻変形などが見られる。これら所見は診断的そして治療指示的意味があり、限局型の患者はIIFのANCAやPR3、MPOなどANCAが陰性でありうる。
・頭頸部CTは、WGの副鼻腔洞変化を明らかにする鋭敏なテストで、所見は粘膜肥厚、洞不透明化、硬化性中耳炎、および骨破壊や肥厚。
・涙腺領域または眼窩腫瘤性病変のCTやMRI所見は、WGによる眼科病変を示唆。
・WG疑い患者における眼科検査は、 強膜炎の有無、角膜炎、ブドウ膜炎、網膜病変について評価するため、 細隙灯顕微鏡検査と眼底検査を含める必要がある。
・眼窩腫瘤の例で組織生検は リンパ腫、サルコイドーシス、バセドウ病、眼窩偽腫瘍など他の条件からWGの肉芽関与を鑑別する。 副鼻腔は、WGのための生検を考慮することができる追加の領域だが、WGのための特定の所見の診断率は比較的低い。 同様に、口腔、喉頭、外耳または中耳、そして声門下部の生検では、技術的に困難としばしば診断がつかない。

腎臓

・全身性病変兆候のないAAVの腎限局型は、時折報告され、稀とされている。
・腎生検は糸球体障害では重要な検査で、AAV疑い例で、糸球体に免疫複合体を沈着させる他疾患からの鑑別を可能にする。 AAVは免疫複合体の沈着に依存しない機序によって糸球体腎炎を誘発する。 "pauci -immune "糸球体腎炎
・腎生検材料の免疫蛍光染色で、基底膜にIgG線状沈着を特徴とする抗GBM誘発性疾患からのAAV鑑別を可能にする
・腎臓の病理組織におけるAAVの共通の特徴は、フィブリノイド壊死、細胞および繊維状半月体、糸球体硬化症、および傍糸球体periglomerularの浸潤。
・肉芽腫性反応は、AAVの診断を確立するために有用ですが、腎生検で発見されるのは稀である(症例の2-4%)

神経系

・末梢神経系の関与は、AAVの初発症状である可能性がある。 しかし鑑別疾患は幅広い、虚血(例えば、糖尿病、アミロイド)、炎症(例えば、サルコイドーシス、特発性、中型血管炎)、感染(例えば、ハンセン病、HIV感染、ライム病)の神経障害、と悪性病因(例えば、腫瘍随伴性)など。
・神経伝導検査と筋電図は神経学的症候群を定義 (例えば、単ニューロパシー、多発単神経炎、対称または非対称の多発性神経障害)、生検に適した神経を同定する。
・神経伝導検査上の所見は、病態関与の主なパターンが軸索変性である
・前脛骨筋と腓腹筋とともに腓腹と腓骨神経は、生検のための優先部位である。
・神経病理組織学的所見では、通常、非特異的で、血管周囲の炎症細胞浸潤、軸索変性、壊死性変性を伴い、活動性、非活動性、または治癒。
・すべてのAAVは、中枢神経系に及ぶことができ、 中枢神経系(CNS)血管の血管炎の関与を通じて、もしくは脳実質や髄膜の肉芽腫病変の関与にて、焦点病変を引き起こす。
・WGの稀ではあるが十分に記述された病型は慢性硬膜炎pachymeningitisで、陰性または非定型的なANCA検査と、陽性のMPOやPR3のELISA検査を伴う。
・腰椎穿刺と脳脊髄液分析は、細菌、ウイルス、結核性髄膜脳炎を含め、感染症や炎症性疾患の区別のため重要。(結核性髄膜脳炎はpositive IIF testing for ANCA and ELISA for PR3 and MPO[90]を示しうる).


皮膚

・皮膚生検は、AAVを有する疑いのある患者には非常に有益となりうる
・理想的な生検は、発生48時間未満の若い病変で、圧痛のある紅斑または紫斑病変で、皮下組織にまで及ぶもの。 血管炎の病理学的特徴は、この段階で存在している可能性が高くなる、そして直接免疫蛍光法(DIF)のテストの収率が最適である。
・深生検は時折WGで発生する大血管の関与を明らかにし、結節性多発動脈炎などのような中型血管に影響を及ぼす血管炎に期待されるべき。
・生検を施行する医師はDIFのための試料処理はルーチン組織病理と異なるため、AAV診断をいつも念頭におくこと

・WGの丘疹状病変は白血球破砕性血管炎に似たパターンを示し、通常皮膚小血管周囲に好中球浸潤。
・DIFの検査で免疫複合体と補体沈着の欠如は白血球破砕性血管炎、クリオグロブリン血症、SLE、およびヘノッホ•シェーンライン紫斑病、からAAVを区別することができる。これらでは沈着の異なるパターンが発見。


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