京の昼寝~♪

なんとなく漠然と日々流されるのではなく、少し立ち止まり、自身の「言の葉」をしたためてみようと・・・そんなMy Blogに

『おくりびと』

2008-09-22 | 邦画


□作品オフィシャルサイト 「おくりびと
□監督 滝田洋二郎
□脚本 小山薫堂
□キャスト 本木雅弘、広末涼子、山崎努、余貴美子、杉本哲太、吉行和子、笹野高史、峰岸徹、山田辰夫

■鑑賞日 9月14日(日)
■劇場 チネチッタ
■cyazの満足度 ★★★★☆(5★満点、☆は0.5)

<感想>

 普段、遺体を棺に納める“納棺師”という言葉すら、耳にすることは少ない。

 この映画は東京で楽団解散をきっかけにチェロ奏者の夢をあきらめ、故郷の山形に帰って来た小林大悟(本木雅弘)がある求人広告を見つけ、何が因果か再就職が納棺師という職業で、常に人の死に向き合いながら、故郷で関わった友人たちや家族との触れ合いを通して成長していく姿を描き出す。

 実は1年ほど前に、知人の弁護士に薦められてこの納棺師という職業について書かれた「
納棺夫日記(青木新門著/文藝春秋刊)」という本を読んだことがある。 ゆえに全く知識がなかったわけではなかった。 なんとなく因縁めいたものをこの映画前に感じたものがあった。

 モントオールでグランプリに輝いた今作。 実際に外国人の目を通してどう評価されたのか、そんなことは関係ない。
 日本人が日本人として間違いなく触れて欲しい作品の1本だと思う。 少なくとも映画好きと言われる人には。 そのくらい僕は完成度の高い作品だと思うし、おそらく今年観た邦画の中では、ここまでまず間違いなくベスト1に挙げる作品だ。
 
 僕の好きな滝田洋二郎監督が、まるで要らないところを全て削ぎ落とし、必要な部分に更に磨きをかけて、そこに描き出す人間模様は秀逸だ。

 主役を演じる本木雅弘はこの納棺師と言う役をよく理解して望んでいると感じた。 彼の納棺技術はまるで本物のように凛として美しい。 そして社長の佐々木を演じる山崎努は相変わらず味わい深い演技で本木を支える。 妻美香役の広末涼子も控えめながら芯の強いそして彼を理解しようとするひたむきさがいい。

 さらに余貴美子、吉行和子、笹野高史が脇をしっかり固める。 これまた的を得た配役とその役回りが申し分なくフィットしていて、なんとも素晴らしい演技を引き出している。 
 特に笹野さん演じる平田正吉の位置は後の大きな伏線になるから見逃せない。 笹野さんがあるインタビューで、山田洋次監督に「風景になれる役者になりなさい」と言われたそうです。 「渥美清さんは主役もできるけれど、すっと風景になれる。 だから優れた役者だと。 笠智衆さんもぱっと風景に溶け込んだ瞬間、風が吹いてくるような感じがあると。」 それでこの映画でもどんな家庭に育ったかを考え、その人の生き様、人生から醸し出される質感、匂いをちゃんと演じるよう心掛けたそうです。

 この人の生死に向かい、最も難しいのはその音楽だったろう。 滝田監督同様、必要最小限に抑えられ、しかしながらその反面最も印象に残る音。 それはこの映画のイメージを決して損なわず、且つひたむきに盛り上げている。 その決して邪魔にならない音(チェロ)を提供してくれる久石譲の音楽も、ジブリ作品とは一線を画した見事なものストーリーテラーだと言える。 久石さんの本当に手掛けたかった音楽とはこんな感じじゃなかったのかと思わせるほど。

 世の中には様々な仕事があると思う。 もしかしたら一生に知らなくて終わる仕事もあるように。 この映画はその昔、伊丹監督が『お葬式』を撮ったときのように、ある意味それまで誰も描かなかったタブーな事象を捉えたことと同様な部分に触れている。 しかしそこには決してなくてはならない職業があり、それに従事している人が少なからずいるものだ。  この映画はそういう陰の仕事人にスポットライトを当てた素晴らしい映画だと思う。

 僕の拙い言葉で全てを説明できないけれど、なかなか星を4つ半つけない僕がつけたということで、是非cyazに騙されたと思って劇場に足を運んでいただきたい。
 人生の視点が少し変わるかもしれない、そんな映画です。


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50 コメント

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へぇ~ (miyu)
2008-09-22 20:16:51
そんな本も出ているんですね!
ひょっとしたら企画を出された本木さんも
同じ本を読んでたりして?( ´艸`)
こんにちは♪ (ミチ)
2008-09-22 22:27:27
まさにモックンもその本を読んだみたいですよ。
私も是非手に取ってみたいと思います。

cyazさんもかなり高評価!
今年はこの作品を邦画ベストに入れる人が多そうですね?
こんにちは (サムディ)
2008-09-23 00:19:22
こんにちは。
いつもTBだけで失礼しています。
しかし、今回はちょいとお邪魔してコメントを。
>人生の視点が少し変わるかもしれない、そんな映画です。
同感です。私の場合は肉親の死で間近に見てしまったのですが、その分、あの驚嘆すべき仕事をどのように描いたのか、という興味もありました。しかし、描かれた世界はさらに驚嘆すべきものでした。
死が身近なものから遠ざけられていく中で、この映画の中で描かれている世界は、とても大事な事だと思います。
こんばんは~ (kira)
2008-09-23 00:28:33
ヒントを得たインド旅行のあと
その本を読み、実に10余年暖めてきた企画だそうですね。
今日(あ、もう昨日か)もTVのインタビューで
モックンがちょっと触れていました。

余さんも、吉行さんも大好きな女優さん。
どこをとっても素敵な作品でした~
TBありがとうございました (sakurai)
2008-09-23 09:34:26
なんせ故郷が舞台ですので、いろいろと思うところがありました。
無理に庄内弁にしなくてもいいのですが、いまや全国区になった方言でしょうか。
その中でもやはり笹野さんが秀逸でした。
セリフの間、佇まい、もはや風景になっているのでは。
その風景はいかがでしたか。
監督的には、風景を撮りたかったと言ってました。
私が子供ときからの見続けてきた景色です。
少々吹きだまり的な田舎の扱いに、そんなに田舎かなぁ、などとも思ったり。
まあ、その辺はひがみで、秀作だったと思います。
こんにちは、TB有難うございました (パピのママ)
2008-09-23 10:49:50
いつもTBばかりですみません。
本当に見て良かった映画でした。
納棺師の所作は美しくて、まるで着付け師のごとく、お茶のお手前のような完成度がありました。
それを演じるモックンの微妙な表情の変化。
彼は本当に、良い俳優さんになりましたね。
深みのあるチェロの音色に彩られ、人生の最後の一幕・・・納棺は、その人の命を大切にするひと時なのだと伝わってきました。
時に笑いながらも、命の尊さを静かにかみ締める秀作です。
私も、「納棺夫日記」読んでみたくなりました。

Unknown (にゃむばなな)
2008-09-23 17:35:34
この映画の笹野さんはいい感じでしたよね~。
特に火葬場のシーンなどは平田のおっちゃんが主役ちゃうんか?と思えるほどでしたよ。

個人的には『武士の一分』や『釣りバカ日誌』よりも凄く印象に残りました。
Unknown (koto)
2008-09-23 21:58:41
やはりcyazさんも見られましたね、おくりびと。
仰るとおり主役も良いですが、周りを固める俳優陣がまた素晴らしかったです。
題材としては衝撃的な作品かも知れませんが、それだけに良く知らなかった(知ることの出来なかった)職業が、こんなにも愛情に満ち溢れていることを知りました。
最近の邦画では本当に稀な作品ですね。見てよかったと思いました
自分も1っ♪ (メビウス)
2008-09-23 22:53:32
cyazさんこんばんわ♪TB有難うございました♪

今年あんまり邦画観てないせいもありますけど、自分も本作は暫定的ながら本年度の邦画ナンバー1になりましたね。納棺師の洗練された所作、山形の風情溢れる四季、そして久石譲の音楽など、『死』や『葬儀』といった暗い要素の中に『美しさ』も盛り込んだ秀逸な作品だと思いました♪
素晴らしい! (ももママ)
2008-09-24 09:22:55
とても評判の良い作品ですね。私はなかなか邦画を見ないので「今年の邦画のベスト」と書けませんでしたが、cyazさんが書いてくださったので、嬉しかったです。

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