京の昼寝~♪

なんとなく漠然と日々流されるのではなく、少し立ち止まり、自身の「言の葉」をしたためてみようと・・・そんなMy Blogに

『蝉しぐれ』

2005-10-02 | 邦画


二十年、人を想いつづけたことがありますか。


「忘れようと、
忘れ果てようとしても、
 忘れられるものではございません」

 「文四郎さんのお子が、私の子で、
  私の子どもが文四郎さんのお子であるような
  道はなかったのでしょうか」



■監督・脚本 黒土三男
■原作 藤沢周平(「蝉しぐれ」)
■キャスト 市川染五郎、石田卓也、木村佳乃、佐津川愛美、原田美枝子、緒形 拳、
       柄本 明、大地康雄、大滝秀治、加藤 武、小倉久寛

□オフィシャルHP  
http://www.semishigure.jp/

 文四郎(市川染五郎)と隣同士で幼馴染のおふく(木村佳乃)。 互いに淡い想いを
 心の奥にしまい込んでいた。 二人を運命は、おふくが江戸屋敷の奥に上がることで
 急変し、二人の淡い恋は切なく終わりを迎える。 やがて文四郎の境遇にも大きな
 転機が訪れ、複雑なお家の事情に巻き込まれて行く。 さらに文四郎のもとに、
 驚くべき知らせが・・・。 おふくが殿の寵愛を受け、御子を身籠るったというのだ。
 この御子をめぐるお家騒動が、やがて二人を再び惹き合わせることになることを、
 文四郎は知る由もなかった・・・。


おススメ度 ⇒★★★☆ (5★満点、☆は0.5)
cyazの満足度⇒★★★★  


 この映画を観る前に、原作を読み終えようと頑張っていたのですが、結局読み終え
 ないままに映画を観てきました。 でもそれは結末を知って映画を観るより期待感は
 増し、結果的には良かったと思っています。

 黒土監督は大好きな監督さんです。 邦画の場合、映画を監督で観ることは少ないの
 ですが、黒土監督は別です。 監督自身、この作品の映画化についてはかなり苦労した
 ことと、シナリオを京都に1年間も籠もって書き上げたそうです。

 藤沢周平の原作は初めて読んでみました。 かつて『たそがれ清兵衛』、『隠し剣、
 鬼の爪』の原作も藤沢周平でした。 この映画の予告編を観た時、その予告編だけで
 泣いてしまいました。 初めて読んだ藤沢作品は非常に情感豊か且つ人情味に溢れた
 作風で、今思い直すと、きっと『たそがれ清兵衛』や『隠し剣、鬼の爪』の原作もきっと
 こんな感じだったのかなぁと思ったりしました。 原作は実にこと細かい描写をしており、
 まるで脚本のような小説です。 映画はその移りゆく変化を季節の映像の移り変わりで
 表現しています。 そして人物像も決してオーバーでなく原作に近い形で表現させて
 います。 原作を読まないで観ている人は、少しその物語の運びにやや物足りなさを
 感じてしまうかもしれませんが、原作を読んでいると、その細かい描写を省いていても
 ひしひしと伝わってくるものがありました。

 武士としての心音をしっかり持ち、ずっとふくを思い続ける文四郎。 『阿修羅城の瞳』では
 少しがっかりしましたが、この作品で市川染五郎はさすが歌舞伎役者の面目躍如だった
 と思います。 この文四郎の役にぴったしはまっていたように思います。 歌舞伎役者の
 顔は時代劇には合うのではないでしょうか。 原作でも文四郎は決して表情の多い
 人間ではないのですが、染五郎はそのへんのところをよくつかんで演技していたように
 思います。

 ふくとは決して結ばれないのですが、それでも好きな人のためにお互いがその“想い”を
 心にしまって、互いを思いやる姿は随所に出てきますが、こういう淡い想いとひたむきな
 想いは、なかなか表現することが簡単そうで難しいと思います。
 それは先の『たそがれ清兵衛』、『隠し剣、鬼の爪』でも同様でした。

 ふく役の木村佳乃も控えでいて強い女を、凛として上手に演じていました。
 この時代には恐らく素直に相手に対しての“想い”を伝えられない。 ましてや女性の
 場合は難しいことだったのだろうと思います。 ひたむきな文四郎への想いを丁度良い
 距離感で演じていました。

 他にもこの映画を盛り上げた役者陣は多々いました。 原作を読んでいれば、緒形 拳、
 大滝秀治、柄本 明、大地康雄を演じるところの人物は、この作品の重要不可欠な役
 どころを演じていたと思います。

 冒頭に書いた、

  
「忘れようと、忘れ果てようとしても、忘れられるものではございません」

 「文四郎さんのお子が、私の子で、私の子どもが文四郎さんのお子であるような
 道はなかったのでしょうか」

 これがこの作品の全てを表しているのではないでしょうか。
 この短い言葉のやり取りの中に、二人の幼い頃からの“想い”が託されていたような
 気がして、思わず涙がこぼれてしまいました。

 それにしてもミスキャストとはいいませんが、今田耕司、ふかわりょうの二人はそう
 なんでしょうか(笑) ?! 最近お笑いの登用が多いですが、東北の武士にはちと
 向いていないし、原作のイメージとは全く違ったような気がしますが・・・。

 この原作はもともと1968年、秋田魁新報、山形新聞など地方紙に掲載されていた
 そうです。 しかし単行本にする際、最後の部分が加除訂正されたそうです。
 つまり

 最終稿には、おふくと文四郎の告白シーンはなく、
 「馬腹を蹴って、助左衛門は熱い光の中に走り出た。」とされていたそうです。

 この映画の公開に合わせ、今月30日まで世田谷文学館で「藤沢周平の世界展」が
 開催されているそうです。 『蝉しぐれ』の生原稿や書簡・愛用品が展示され、また
 執筆の場となった書斎も再現されているそうです。

 生前、藤沢氏は「自信の一作は?」との質問に、「書きたいものを書いたということ
 ならば『蝉しぐれ』です」ときっぱり語ったということです。

≪追記≫
 映画・蝉しぐれオープンセット移設保存決定
 映画「蝉(せみ)しぐれ」の撮影セットをそのまま残し、一般公開しているオープンセット(鶴岡市羽黒町松ケ岡)が、9月に予定されていた取り壊しを中止し、隣接地に移されることになった。
 
  詳細  「asahi.com


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46 コメント

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このふくのせりふ (diane)
2005-10-03 02:06:40
二人の間のせつなさを感じましたね。

昔はよく遊びに行った仲なのにある出来事がきっかけで二人の方向性が変わってしまった。

でも、心の中では二人とも…。



市川染五郎いいなあ。こーんな人そばに居たらいいのに。
返信する
自分では~ (cyaz)
2005-10-03 08:43:35
dianeさん、コメントありがとうございますm(_ _)m



この時代は自分の意思ではどうにもならない時代でした~ねぇ・・・。特に女性の場合は。

同様の“想い”をした人たちも多かったことでしょうね!

今考えると自由な自分たちは幸せだと思います。



>市川染五郎いいなあ。こーんな人そばに居たらいいのに

ほうほうdianeさんのお好みですか?

僕は松たかこがそばに居て欲しいですね~♪
返信する
Unknown (mica)
2005-10-03 09:32:58
私も観たいです~。

藤澤周平大好きなのです。

蝉しぐれももちろん読みましたよ。

返信する
ぜひぜひ~ (cyaz)
2005-10-03 12:45:41
micaさん、コメントありがとうございますm(_ _)m



micaさんも原作読まれたんですね^^

初めて藤沢作品を読みましたが、実に優しい雰囲気の漂う小説ですね!

原作の方は佳境に入っております(笑)

多分今週中には読み終わることでしょう^^



映画観たら是非感想聞かせてくださいね!
返信する
TBありがとうございました (ミチ)
2005-10-04 00:33:35
こんにちは!

私もこの世界に弱いんですよ~。

日本人なんでしょうかねぇ。

年なのかなぁ?(ガクガクブルブル)

山田監督は「たそがれ」「隠し剣」に続く作品を撮るようですね。

3部作にしたいと思っておられたようです。

この「蝉しぐれ」も山田バージョンを見たいと思うのは私だけではないはず。

キャスティングも含めて、どのように描いてくれたか見てみたいです。

お笑いの人の抜擢、健闘していましたが、普通の俳優さんではダメだったんでしょうか?
返信する
TBさせていただきました! (snowflower_001)
2005-10-04 00:45:29
こんばんは!

原作を読み終えられたら、おわかりになると思いますけれど

この映画、とっても原作に忠実に、丁寧に撮られてるんですよねぇ。

もちろん時間的制約があるので、大幅にカットされたエピソードもありますけど、ほぼそのまま。

ただ、それに固執するあまり、少し冗長だったかなぁと感じる部分もありました。

でも、全体の出来としては及第点だったと思います。
返信する
日本人~ (cyaz)
2005-10-04 00:48:04
ミチさん、TB&コメントありがとうございますm(_ _)m



藤沢ワールドを描くと統一した優しさと古き良き時代の風景を肌で感じるような映画が観れますね!

一貫したトーンは移り行く景色と時代と、忘れてはいけない日本人の“心”を映し出しています!



お笑いの登用は、作品を選んで欲しいですね(笑) ?

なんとなく撮る側のブームみたいですが、

正直やめて欲しいですね^^

適材適所でお願いしたいですね(笑)
返信する
あと少し~ (cyaz)
2005-10-04 00:54:22
snowflower_001さん、TB&コメントありがとうございますm(_ _)m



あと少しで原作も読み終わります。

原作に忠実に描かれているのは映画を観ていて感じましたよ!

逸平や与之助のキャステキング次第では、もっと素晴らしい映画になったと思いますが・・・。
返信する
はじめまして (和希)
2005-10-04 01:46:38
勝手ながらTBさせて頂きました。宜しくお願い致します。いや良かったですね!こうした時代劇が増える事を願って止みません。日本人が日本人として日本を誇るものだと思います。世界にももっともっとこうした時代劇を発信し、ただ刀を抜いてバッサバッサと斬るのが侍じゃ無いんだよ!って知ってもらいたいです。そしてこの奥ゆかしい日本人の”心”の美!知って欲しいですね~。
返信する
ラストは切なく仕上がってました。 (kaoritaly)
2005-10-04 08:00:47
cyazさん、おはようございます。

TBどうもありがとうございました!



人によって心の琴線に触れるものは違いますが・・グッとくるシーンはいくつもありましたね。でも無用なカット割りが間延びしたような感じを与えたように思います。その辺りは原作を読んでいたら違ったのかな~・・。



染五郎の殺陣のシーンはカッコよかったし、ラストも良かった・・確かに阿修羅・・はイマイチでしたがこれで見直しました。  

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