京の昼寝~♪

なんとなく漠然と日々流されるのではなく、少し立ち止まり、自身の「言の葉」をしたためてみようと・・・そんなMy Blogに

『紙屋悦子の青春』

2006-09-10 | 邦画


大切なものを、忘れていませんか。

 

 



■監督 黒木和雄
■脚本 黒木和雄・山田英樹
■原作 松田正隆
■キャスト 原田知世、永瀬正敏、松岡俊介、本上まなみ、小林薫

□オフィシャルサイト  『
紙屋悦子の青春

 昭和20年の春、両親を失ったばかりの娘・紙屋悦子(原田知世)は、鹿児島の田舎町で優しい兄・安忠(小林薫)、その妻・ふさ(本上まなみ)と肩を寄せ合う慎ましい毎日をおくっていた。
 そんな彼女が胸に抱く願いは家族の平穏と、密かに想いを寄せる兄の後輩、海軍航空隊に所属する明石少尉(松岡俊介)の無事だけである。 ところがある日、兄は別の男性との見合いを悦子に勧めてきた。 それも相手は明石の親友・永与少尉(永瀬正敏)で、明石自身も縁談成立を望んでいるらしい。 やがて明石の真意が明らかになり、悦子は衝撃を受ける。


 おススメ度 ⇒★★★ (5★満点、☆は0.5)
 cyazの満足度⇒★★★★


 まず、僕の大好きだった黒木和雄監督のご冥福をお祈りいたします。


 残念ながら本作が黒木監督の最後の作品となってしまいました。 享年75歳でした。 まず思うことは少なくても「戦争」について、商業ベースにのらず、真正面から作品作りをされたその姿勢に感心させられました。

 避けて通れない「戦争」というテーマに、決して戦争が良いと悪いとかではなく、史実としてそこに生きた人たちの生き様を、派手な戦闘シーンもなく、必要最小限の役者で、いかにその戦争が悲惨で愚かだったかを、如実に引き出した作風が、他の監督さんにはできない仕事だったと思います。

 昨年は戦後60年ということもあり、戦争テーマの映画が多かったですね。 『
男たちのYAMATO』は現在DVDも発売されていて、これは戦争テーマの邦画DVDとしては結構売れているそうです。
 それは、恐らくタイトルで掲げる“男たちの”ではなく、死に行く息子たちへの心境を語る「3人の母たち」に代表された、見送るものたちの心情が反映された映画だったからでしょう。

 そして、この映画は原作者の松田正隆氏自身がお母さんをモデルとして、当時特攻基地のあった鹿児島県出水市を舞台に、昭和20年の庶民生活を描いた戯曲です。


 『父と暮らせば』をご覧になった方には非常に説明しやすい映画です。 殆ど二人劇のような映画でした。 この映画は敗戦に導かれる広島原爆投下の親子の生活、その中での会話が主軸となっていました。 宮沢りえちゃんと原田芳雄ちゃんの会話が技ありの素晴らしい映画でした。

 今回の作品でも、ここに登場する出演者はほぼ上記の5名です。
ナイーブなテーマながら、余計な飾りも戦闘シーンもなく、そこにあるのは国のために若い命をかけて戦う男と、二度と帰っては来ない男を見送る人たちの、何気ない生活の中での日々の会話の中に、「戦争」という史上最悪の愚かな出来事に対して、黒木監督が送ったプロテスト・メッセージだったように思いました。

紙屋悦子の青春 photo2


 紙屋悦子を演じる原田知世さんはこの悦子のイメージにしっくりくる女優さんだったと思います。 本当は出撃する明石に想いを寄せながら、その時代背景から兄の紹介した長与と見合いをし、結婚の申し出を受ける。 今ならノーと言えることもそれぞれの“想い”を傷つけないように自分の感情を押し殺す。 
 数年前に、実際に原田知世さんにお会いしたことがあります。 ここでも何度か書いたことがあるのですが、実に透明感と清潔感のある女優さんです。 多くのカラーに染まらないところが、この時代の紙屋悦子を演じるには必要じゃなかったと思いました。 
 出撃して明石が亡くなったことを長与から知らされ、出撃の前に悦子に書き残した手紙を読み、号泣していた姿は、それまで我慢していた、兄にも見せなかった初めての涙だったのかもしれません。 それゆえ淡々と描かれるこの作品の一番の「戦争」が犯した罪の大きさを余計に感じ入るところでした。 

 悦子の兄役の小林薫さん。 もうこの人には何も言うことはないでしょう。 色んな役柄を演じても、どれも自分の物にして、また監督の意図通りにはまってしまう希有の役者さんですね。

 そして、この兄の嫁役を演じた本上まなみさん。 この時代にこんな大きな女性は居なかったと想像するのですが、でもこれも監督が本庄さんをキャスティングした意味が良くわかりました。 監督のスマッシュヒットかもしれません。
 それは悦子を含め、この家族、明石・長与を含めた会話の中に、この時代をして、何気ない生活の中に、笑いのペーソスを十分持たせているからだ。 先の『父と暮らせば』もそうだったが、二人の会話が本当に面白かったし、まるで父娘の親子漫才のようでもあった。
 何故、本上まなみさんだったのか。 これは自然な笑いを生活の中で出すのには、彼女が大阪出身でそういった笑いの土壌で生活していたからに他ならないと思う。 彼女の“間”と、この時代にはこんな背の高い女性はいなかったこと、そして思っていることをオブラートに包まず思ったままに口にする女性を通して、やや反体制的な姿勢を彼女のセリフの中に織り込んでいたような気がする。

 松岡俊介は今作の骨太な役柄に合っていました。 今までの作品はともかくこれは良かったですね。 『
やわらかい生活』での寺島しのぶとのやり取りも無難だったけど、彼は2枚目より2枚目半の方がいいかも。

 そして永瀬正敏。 この時代にはこんな気骨な男が普通だったんだと思えましたね(笑) 女性を前にしたら何も話せなくなってしまうことって、現在では皆無に等しいのかもしれませんが、なんだかホッとしてしまいますね。 悦子と明石の会話には、悦子の兄・義姉との会話同様の面白さがありました。 

 映画の冒頭は、悦子と永与の引きの映像で、二人が回想するシーンで始まる。 ずっとしばらく引いたままの映像は、それだけで二人がどんな時の流れを過ごしてきたか、静かに観ている側に訴えてくる。

 帰って来れたものが幸せなのか、国のために逝った方が幸せなのか。 残されたものが全て幸せだと言えるのか・・・。 この時代を、そして戦争を知らない僕にはわからない。 答えを知りたいとも思わない。 ただ実際に何の得もない戦争と言う悲劇があったことを、誰しもが忘れてはならないと思う。


 この映画を観たとき、実は荻原浩氏の『僕たちの戦争』を読んでいる最中だった。 「目が覚めると、1944年だった・・・。」 現代を生きるサーファーの健太と「海の若鷲」に憧れ霞ヶ浦練習航空隊に所属する吾一。 互いがそれぞれの時代を逆転することで、その時代を生きることのギャップと新たな発見を、周りの人たちとの触れ合いのなかで、違った意味での生きていくことの厳しさ・難しさを経験する。 まだ読み終わっていないので結末はわからないが、これを読んでいたことが妙にこの映画を観たとき、リアル感が増した。 これは9/17夜9時からTBS系で放映される。 主演を演じるのは森山未來、共演は上野樹里、内山理名。
 TBSスペシャルドラマ 「
僕たちの戦争



 この映画は平日に「岩波ホール」で観た。
ここは都心にありながら場末の映画館を感じる作りだ。 映画を観る環境としては、シネコンの快適さに比べると比べようもなく良くない。 しかしながら上質の映画を提供してくれる。
 映画の内容からして(他の作品でもそうなのだが)、年齢層が非常に高い。 この映画もボクが一番若く感じるくらいだった(笑)。 入替制なので当然上映前は階段に並ぶことになるのだが、結構混んでいる。 思うのは劇場側の対応の悪さだ。 まずホールは10Fにあるのだが、エレベーターで10Fまで上がると、混んでいるため階下に階段で下りることになる。 客層は老人が多い。 当然階段は辛いに決まっている。 混雑状況(階段の)をみて、劇場側或いはチケット売り場で「ただいま混雑のため8Fで降りて階段沿いにお並び下さい」とメッセージできないものだろうか。 ボクなどが言うのもおかしいが、こんな映画環境の悪いホールに足を運んでくれるお年寄りに失礼ではないか。 ひと言声をかける、エレベーターの中にメッセージボードをつけるくらいどうってことないと思うのだが。 ホール内の女性店員さんは接客態度はいいのだが、何故年寄りを労わるくらいの提案が出来ないものだろうか?
 岩波ホールの社員の方、あなた方はこの先、年を取らないとでも思っているのですか?





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69 コメント

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Unknown (Ageha)
2006-09-11 16:09:30
戦争で死ぬのも地獄、

生き残っても何かしらそのことに後ろめたい気持ちを

抱えてしまう辛さ。

戦争へ駆り出されたものもそれを見送るものも

だれひとり幸せになれないのに

誰もその状況から逃れられない。



・・・で、コレと対照的に

今とっても「太陽」が見たい。

日本人が描くには勇気が必要で

でも今だから知りたいことがいっぱいある。

コレを撮ったロシアの監督は

これをきっかけに日本人がこのセカイを

描いてくれるきっかけになることを望んでる。



映画そのものの感想からはそれたコメントばかりで

申し訳ないですが

うちのダンナは鹿児島出身でして

親戚に人間魚雷で命を落としたひとがいて

「出口のない海」がどうしても見たいと

言うております・・・。



以上9・11の日にツラツラと。



誰もが誰かの命を奪っちゃいけない。

それがどんな理由であっても。



・・・それって偽善ですかね・・・。



トラバ、ありがとうございます。 (はんな)
2006-09-11 18:14:25
トラバ、ありがとうございます。

cyazさんもご覧になったのですね。^0^



私も先週、観てきました。

京都は年輩のお客さんが多かったです。

でも、70歳の方と80歳の方では、戦時下、全く立場が違っているなぁ~、って思いました。



私は近しい人間が、戦時中、陸軍病院で赤十字の看護婦をして兵隊さんの看病をしたり、飛行機に乗っていたりしていたもので、それなりに戦争の悲惨さは知っているつもりです。

そういう側面から言うと、少し、内容的に物足りなくもあったのですが、直接的に表現していないことが逆にリアリティーがあるのかも・・・?と思いました。



私も本上まなみさんがちょっとひっかかりました。あんな背の高い今風のルックスも違和感があって・・・。

余談になりますが、この前も、沖縄戦の際のひめゆり部隊のドラマをO.A.していたようですが、あんなまつ毛クルリン、下手したら整形・・・みたいなルックスの女の子ばっかり集めてもらっても・・・っていう気もしました。なのでチラリと見てチャンネルを替えました。(苦笑)(昔、ひめゆり部隊の女学生の名簿を見たことがあるもので、余計に・・・)



大阪ですか・・・なるほど・・・年齢的(見た目)に原田知世さんとつりあうかどうかわかりませんが、では池脇千鶴さんはどうでしょう?あの人もまさに「大阪」って感じ。(笑)



ただどうしても気になったのは、あのセットのちゃちさ、なのですが・・・。娯楽時代劇のセットと同じくらい、「屋外」のセットがお粗末だったように思うのですが・・・。結局、それって予算の問題なのでしょうか?



この翌日に、「蟻の兵隊」を観たのですが、衝撃的でした!(まだアップしていませんが・・・)



なんだか、ツラツラと書いてしまい、お邪魔さまでした。m(_ _)m
TB有難うございます (マダムS)
2006-09-11 19:57:17
静かな反戦映画でしたね。

私が行った時は、そういう案内していましたよ

「上から並んでいますので、7階あたりでエレベーター降りた方が良いですよ」って。ご親切にって思いました。
星三つ? (壮大な零)
2006-09-11 20:17:15
「合理的な愚か者の好奇心」の管理人です。

トラバありがとうございました。映画冒頭の病院の屋上シーンの質の高さについて、賛同してくれる方があまり多くないのが残念です。この映画の管理人さんの評価が星三つしかありませんが、ずいぶん厳しいですね。勝手ながら、トラバのお返しをさせていただきました。
TBありがとうございました。 (とわとわ)
2006-09-11 21:12:47
 初めまして。TBありがとうございました。

 こちらのレビューを読ませていただき、また頭の中に映画のシーンが思い起こされました。見終わった直後よりも少し時間が経った今の方が、良さを感じるような気がします。
合掌~ (cyaz)
2006-09-11 22:34:49
Agehaさん、コメントありがとうございますm(__)m



その時代に生きていれば、少なからず選ばない死を選択しなければならない状況はあったかもしれないし、人のためにこそ死ねるいやおうない哲学がそこに存在したのかもしれませんね?死を美化するわけではなく、それによって何人かに生存の道があったのかも・・・。



>「太陽」

機会あればこれは観たいです。

日本人が描くには勇気が必要で



>コレを撮ったロシアの監督はこれをきっかけに日本人がこのセカイを描いてくれるきっかけになることを望んでる。

日本もそうだけど、自身が自国を描けないが如く、他の世界の目を持って表現ができることもあると思います。それにしてもイッセー尾形・・・似ている。



>「出口のない海」

佐々部監督なのでもちろん観ます^^



>誰もが誰かの命を奪っちゃいけない。それがどんな理由であっても。



日めくりのように殺人が起こるこの国のために、命を賭けた人たちは、情けない世界を想像してたでしょうか・・・?



5年前のこの時間には・・・合掌!
間接的表現~ (cyaz)
2006-09-11 22:40:37
はんなさん、TB&コメントありがとうございますm(__)m



>70歳の方と80歳の方では、戦時下、全く立場が違っているなぁ~、って思いました。

そうかもしれませんね。



>そういう側面から言うと、少し、内容的に物足りなくもあったのですが、直接的に表現していないことが逆にリアリティーがあるのかも・・・?と思いました。

直接的でないところが、監督の良さだと思うのですが。



>私も本上まなみさんがちょっとひっかかりました。あんな背の高い今風のルックスも違和感があって・・・。

ま、映画として観るしかなかったですが(笑)



>では池脇千鶴さんはどうでしょう?あの人もまさに「大阪」って感じ。(笑)

それは逆にイケないでしょうね(笑)?



>どうしても気になったのは、あのセットのちゃちさ、なのですが・・・。娯楽時代劇のセットと同じくらい、「屋外」のセットがお粗末だったように思うのですが・・・。結局、それって予算の問題なのでしょうか?

どちらかというと予算タップリで作れる作品ではないので、そこは我慢しないと仕方ないでしょうね(笑)

そうでしたか~ (cyaz)
2006-09-11 22:43:04
マダムSさん、TB&コメントありがとうございますm(__)m



>私が行った時は、そういう案内していましたよ

「上から並んでいますので、7階あたりでエレベーター降りた方が良いですよ」って。ご親切にって思いました。

そうでしたか^^ じゃあボクがいたときがダメだったんでしょうね(笑)?

どうも~ (cyaz)
2006-09-11 22:46:42
壮大な零さん、TB&コメントありがとうございますm(__)m



>映画冒頭の病院の屋上シーンの質の高さについて、賛同してくれる方があまり多くないのが残念です。

映画の冒頭は、悦子と永与の引きの映像で、二人が回想するシーンで始まる。 ずっとしばらく引いたままの映像は、それだけで二人がどんな時の流れを過ごしてきたか、静かに観ている側に訴えてくる。cyaz



>この映画の管理人さんの評価が星三つしかありませんが、ずいぶん厳しいですね。

 おススメ度 ⇒★★★ (5★満点、☆は0.5)

 cyazの満足度⇒★★★★

というわけで星は四つですが・・・。
おはつです~ (cyaz)
2006-09-11 22:48:11
とわとわさん、TB&コメントありがとうございますm(__)m



>こちらのレビューを読ませていただき、また頭の中に映画のシーンが思い起こされました。見終わった直後よりも少し時間が経った今の方が、良さを感じるような気がします。

そうですね! じわじわと感じるものがありますよね^^

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