京の昼寝~♪

なんとなく漠然と日々流されるのではなく、少し立ち止まり、自身の「言の葉」をしたためてみようと・・・そんなMy Blogに

「プリズム」/百田尚樹

2014-08-04 | Book

「プリズム」/百田尚樹(幻冬舎)

 

前に読んだ百田さんの「モンスター」。
この「プリズム」と“対”になっている作品だ。

「モンスター」は、生まれたながらに顔が変形し、周囲から“モンスター”と

呼ばれ続けた女性が、生死をかけて整形を繰り返し、ハンパない
美しさを手中にし、初恋ともいえる男性を振り向かせるというストーリー。
女性の怖さと恐ろしいまでの執着心を、鳥肌を立てながら読み終えた。

この「プリズム」は、一人の男性の中にある多重人格の、
そのうちの一人を好きになってしまう既婚女性の話だ。

世田谷にある古い洋館に家庭教師として通うことなった聡子。
小学4年生の修一とは打ち解け、順調に仕事をこなしていった。
ある日、屋敷を散策中に、屋敷の離れに住む謎の青年と出会う。
その青年は逢うたびに全く違う振る舞いをする。時には攻撃的に
時にはプレイボーイに、そして時には知的で穏やかな紳士。
そんな青年だが、聡子は次第に打ち解けてゆく。 だが、
屋敷の人間はその青年について、なぜか固く口を閉ざすのだった。

一個の人間の容姿は変わらない。
しかしながら、その中に棲む何人もの違った人格を持つ青年のうちの一人に
聡子は恋をしてしまう。 最初は興味本位で向き合っていたのだが、
結果的にはミイラ獲りがミイラになってしまう。
ただ、好きになった彼は本当の人格ではなく、いつも存在するわけではない。
わずか6時間の間しか存在できないのだ。 同じ容姿なのに違う人格が
出ているとわかれば、その人に対する嫌悪は否めないし、
もちろん・・・愛せない。

どうして二人は結ばれていくのか。 そして、ずっと愛し合うには
どんな不条理で理不尽な見えない糸でも、手繰り寄せるしか術がない。
最後には、聡子は究極の選択を迫られる。

かつて、ドラマや映画などでも一時多重人格者がテーマの物語があった。
この物語は、聡子が彼の担当医師との話を絡めながら、「モンスター」とは
また別の視点で女性の男性に対する“愛の形”を掘り下げている作品だ。
最初はちょっと様々な人格に戸惑ったこともあったが、
実に味わい深く描かれていることに感心した。

コメント (4)
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