宮古島から船で15分のところに、大神島(おおがみじま)という小さな島がある。全島でも住人は50名程度で、合同の小中学校の在校生は現在4名。そして何よりも、ここは昔から「神の島」として崇められる存在である。詳しくは調べていないのだが、一度行ってみると得体の知れない「オーラ」があるように感じる。僕は毎年のように、この大神島に足を運んでいる。神のことはともかく、なーんもないただ静かな島になぜ行きたくなるのか。
それはひとえに「なーんもなくなりたい」からである。現世から隔絶されたような、ただ波の音が静かに聞こえるだけの空間で、ベンチに寝転がりながら、通り抜ける風を感じる。何かしようにも、何もすることがない。帰ろうにも、船は2時間に1本くらいしかない。「ああー、いいねぇ…」ただそう呟きたいがために、僕は今年も大神島に行くことにした。
その日はリプトンとティンと一緒に、ぶーらぶらとレンタカーで港まで向かった。2人とも大神行きは初めてなので、わーいわーいと車内はにぎやかである。途中のコンビニでご飯を買い準備も万端!このバカっぷりが神に見とがめられないかだけが心配である。
船に乗り込みいざ出発。宮古の青い空と海が目の前に広がり、気持ちいい風がひたすら吹いている。言葉少なに、その景色を眺める。
着いてすぐ、急な坂道をのぼって展望台へ。笑っちゃうくらい急な階段に「ヒザがアレになっちゃう」「神は我々を拒みたもう」と弱音炸裂。しかし。頂上に着いた瞬間に疲れは吹き飛んだ。「うわあ…」360°パノラマの、ただひたすら美しい世界が目の前に広がった。あっちを見ればさっきまでいた宮古島。こっちを見ればどこまでも続く海。しばし声を忘れ、考えることすら忘れた。「いいねぇ、大神…」誰かが呟いたその言葉が異様に気持ちよかった。
展望台をおり、そのまま広場へと向かう。何のために作ったのか、芝生のような草が一面に敷き詰められたどでかいスペースが存在する。横にはきれいなトイレも完備、おまけに大理石で作られた休憩所は屋根も大きく最高に涼しい。20歩も歩くと海が広がり、画期的に透明な水の中に青い魚が見える。そして、音がほとんどない。
「これは…いいねぇ」僕らはさっそく休憩所に陣取った。暑いと言っては海で漂い、ホースで水浴びをする。「たそがれ清兵衛」などとほざいて一人で海を眺めに行く。つまらないギャグを動画で撮って爆笑する。とにかく本当になーんもないので、当然することもない。というより、別に何もしなくていい気持ちになってくるので、しまいには誰もがベンチに寝そべってダラダラしていた。これぞ大神の真骨頂、骨抜き人間バンザイである。リプトンなどは本当に眠っていた。
「さて、お昼にしようか」
コンビニで買ったお弁当で昼食をとる。ティンは何を勘違いしたのか、港に置いたレンタカーにパンをそのままにしてきたらしい。バカだなーと笑っていたが「あ…」よく考えると、僕もタコライスを持っていないことに気づいた。しかも、である。「そういえば俺…車に持って入った記憶もない…」コンビニを出た直後、ゴミを捨てようとタコライスをどこかに一時避難させた…ところまでは覚えているが、運転席に座った段階では持っていなかった気がする。てことは何か!僕は買って1分でタコライスとさよならしたのか!どれだけ脳がとろけているのだ!
2人の大爆笑をよそに、僕は頭を抱えた。こんな大失態は30年弱の人生を振り返っても記憶にない。「神よ…私はお腹ペコペコです…」泣ける、いや涙も出ない。結局僕とティンは「後ほど肩をお揉みします」「では私は乳のほうをモミモミ…冗談です」と平身低頭しながら、リプトンのおにぎり弁当を恵んでもらったのであった。救えないバカである。
僕らは大神のなーんもなさを満喫して、船で宮古へと戻った。2人とも痛く大神を気に入ってくれたようで、案内人の僕としても大満足な旅であった。
なお、その言葉に尽くせない開放感のあまり、芝生のど真ん中で素っ裸になったという事実は、神のみぞ知る秘密である。ごめんなさい。
それはひとえに「なーんもなくなりたい」からである。現世から隔絶されたような、ただ波の音が静かに聞こえるだけの空間で、ベンチに寝転がりながら、通り抜ける風を感じる。何かしようにも、何もすることがない。帰ろうにも、船は2時間に1本くらいしかない。「ああー、いいねぇ…」ただそう呟きたいがために、僕は今年も大神島に行くことにした。
その日はリプトンとティンと一緒に、ぶーらぶらとレンタカーで港まで向かった。2人とも大神行きは初めてなので、わーいわーいと車内はにぎやかである。途中のコンビニでご飯を買い準備も万端!このバカっぷりが神に見とがめられないかだけが心配である。
船に乗り込みいざ出発。宮古の青い空と海が目の前に広がり、気持ちいい風がひたすら吹いている。言葉少なに、その景色を眺める。
着いてすぐ、急な坂道をのぼって展望台へ。笑っちゃうくらい急な階段に「ヒザがアレになっちゃう」「神は我々を拒みたもう」と弱音炸裂。しかし。頂上に着いた瞬間に疲れは吹き飛んだ。「うわあ…」360°パノラマの、ただひたすら美しい世界が目の前に広がった。あっちを見ればさっきまでいた宮古島。こっちを見ればどこまでも続く海。しばし声を忘れ、考えることすら忘れた。「いいねぇ、大神…」誰かが呟いたその言葉が異様に気持ちよかった。
展望台をおり、そのまま広場へと向かう。何のために作ったのか、芝生のような草が一面に敷き詰められたどでかいスペースが存在する。横にはきれいなトイレも完備、おまけに大理石で作られた休憩所は屋根も大きく最高に涼しい。20歩も歩くと海が広がり、画期的に透明な水の中に青い魚が見える。そして、音がほとんどない。
「これは…いいねぇ」僕らはさっそく休憩所に陣取った。暑いと言っては海で漂い、ホースで水浴びをする。「たそがれ清兵衛」などとほざいて一人で海を眺めに行く。つまらないギャグを動画で撮って爆笑する。とにかく本当になーんもないので、当然することもない。というより、別に何もしなくていい気持ちになってくるので、しまいには誰もがベンチに寝そべってダラダラしていた。これぞ大神の真骨頂、骨抜き人間バンザイである。リプトンなどは本当に眠っていた。
「さて、お昼にしようか」
コンビニで買ったお弁当で昼食をとる。ティンは何を勘違いしたのか、港に置いたレンタカーにパンをそのままにしてきたらしい。バカだなーと笑っていたが「あ…」よく考えると、僕もタコライスを持っていないことに気づいた。しかも、である。「そういえば俺…車に持って入った記憶もない…」コンビニを出た直後、ゴミを捨てようとタコライスをどこかに一時避難させた…ところまでは覚えているが、運転席に座った段階では持っていなかった気がする。てことは何か!僕は買って1分でタコライスとさよならしたのか!どれだけ脳がとろけているのだ!
2人の大爆笑をよそに、僕は頭を抱えた。こんな大失態は30年弱の人生を振り返っても記憶にない。「神よ…私はお腹ペコペコです…」泣ける、いや涙も出ない。結局僕とティンは「後ほど肩をお揉みします」「では私は乳のほうをモミモミ…冗談です」と平身低頭しながら、リプトンのおにぎり弁当を恵んでもらったのであった。救えないバカである。
僕らは大神のなーんもなさを満喫して、船で宮古へと戻った。2人とも痛く大神を気に入ってくれたようで、案内人の僕としても大満足な旅であった。
なお、その言葉に尽くせない開放感のあまり、芝生のど真ん中で素っ裸になったという事実は、神のみぞ知る秘密である。ごめんなさい。