裏磐梯 秋元湖にほど近い森の中から・・・

裏磐梯の森の中の家、薪ストーブ、庭、山、酒、音楽を愛する独居老人の日常生活の記録、綴り続ける備忘録。

 

お酒・・・日本酒 ②

2009年12月21日 | 飲む 食べる
40年ほど前、地酒ブームが起こった。口火を切ったのがご存知、越後の銘酒、越乃寒梅。社会人になった1967年ごろ、酒場で飲むお酒は杯をあげるとテーブルも一緒に持ち上がる、といわれたはべた甘、今では考えられない三倍醸造でつくられた酒がほとんどであった。戦中戦後の米不足から生まれた酒増量の必要悪、酒にブドウ糖、調味料、アルコール、水を加え、3倍に伸ばしたカクテル酒であった。当時はコクがある=甘い、であったから、ブドウ糖の混入量も多くなったのであろう。醸造石数割り当て制から生まれた悪習、販売力のある大手、灘、伏見の蔵が弱小の蔵からタンクで酒を買い取る桶買いも当たり前、雑多な酒を混ぜ合わせ、ビン詰めされた乱婚酒、良質な酒が出回る時代背景ではなかった。当時は燗酒、特に熱燗で飲んでいたと思う。バランスの崩れた酒は熱燗でないと飲めなかったのであろう。
時は所得倍増、量から質へ、そして飽食の時代へ。三倍醸造が当たり前の時代でも石高を減らしても三倍醸造に手を染めず、良質の酒を造り続けていた石本酒造、越乃寒梅が注目を集めたのは当然の成り行きだった。酒税法改正、良心に目覚めた地方の蔵が本気で酒を作り始め、注目を集め始める。そんな動きを雑誌が取り上げる。そして地酒ブーム到来だ。
酒の旨さを知らなかった私、そのとき酒の本当の旨さを知る事となる。愛媛、川之江の梅錦、吟醸酒の香り、岡山、賀茂泉、純米酒の芳醇な旨さ、日本酒開眼。
次から次地酒を漁る。香露(熊本)西の関(大分)五橋(山口)久壽玉(高山)真澄(長野)澤ノ井(東京)一人娘(茨城)白瀧(湯沢)栄川(会津)出羽桜(山形)浦霞(塩釜)北海男山(北海道)思い出せない数々の酒・・・飲んだ、飲んだ、そしていつしかふと思った。あれもよし、これもいい、日本全国銘酒、銘酒。
穀類を使った酒、日本酒。残念な事だがぶどう酒の複雑さとは比べようもない。名水、そして磨かれた酒造米、麹、純粋培養された酵母、雑菌のない清潔な環境、低温発酵、腕と舌の優れた杜氏が揃えばすぐに銘酒誕生、後は伝説を待つだけ・・・長期エージングは酒の劣化を招く短命な酒、古酒銘酒が出来ない定め、変化の乏しい単純な酒・・・日本酒を探求する情熱を失ってしまってここ十数年・・・
だがお酒の美味しさは変わったわけでない。
地酒に夢中だったころ、どうしても手に入らなかった酒、寒梅、雪中梅が手元にある。飲む機会が多くなった越後三梅とは言え、初心に戻り、正月のおせち料理とともにじっくり味わおうと思う。時代に媚びず、流行におもねることのない頑固な越後の名酒をこころゆくまで楽しもうと思う。

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