リーバスシリーズの最新刊。
リーバスは、もう金の万年筆がもらえる歳で、性格上問題も多い警部なので、上司からは嫌がられ、犯罪捜査部の組織再編成の折には、自分のテーブルすらない。
窓際族(古っ)というか、無言の意図で退職を迫られているわけだ。
そんな事情を察しながらも、いつものようにハイレベルなユーモアを披露し、
なつかしのロックを口笛でしつこく吹いている。
唯一の救いは、シボーンと同じ警察署に所属しているということぐらい。
そのシボーンは、どんどんリーバス化しているのが目立ちます。
今回の作品は、リーバスの退職に先駆け、足跡をいろいろなところに残していこうというような雰囲気がなんとなく漂っている印象を受けます。
そうそう、前作のインターネットに引き続き、
リーバスは携帯からメールが送れるようになりました。
受け取った方は、解読に苦労しそうなメールですが(笑)
今回の作品は、もしかしたらシリーズ最高傑作かもしれない。
リーバスシリーズは、多少ハードボイルド気味で、事件を社会的な視点から捉え、解決していくものが多く、上辺は美しいエジンバラの街並みの下にある暗部を際立たせている。
それは、街全体の歴史であり、国の歴史でもある。
現在は過去からつながっており、どんなに麗麗しく街を飾ったとしても、その過去は消えることはなく、少し掘り起こせば過去が暴かれ、歴史があらわになる。
ちなみに、今回、地下室のコンクリートの下から発見される骸骨は、250年前の魔女の骨。
その骨を教材用として使用していたエジンバラ大学には、ロバート・ノックスの頭蓋骨が飾られており、ノックスといえば、死体盗掘人と共謀した人物。
これだけでも幽霊ツアーに参加した気分を味わえる。
今までのリーバスシリーズを読んでいる読者なら、骸骨がどんなに重要なポイントになり、リーバスがとことん追求していくのではないかと思うでしょうが、その役はシボーンが引き受け、また、シボーンは、家出人の捜索と出所したばかりの強姦犯の殺人事件も抱えて大忙し。
じゃあ、リーバスは何をしているのかといえば、難民の刺殺事件を追っている。
そう、今回の事件は派手な事件ではないが、大きな社会問題を浮き上がらせているのだ。
BS2で放送のあった『第一容疑者』でも移民問題や外国人労働者を取り扱い、先日TV放送のあった『102』では、密入国者を不当な賃金で働かされているシーンが登場する。
日本では、あまり実感がわかない問題かもしれないが、
劣悪な状況でコンテナーに詰め込まれた人々や、あふれるくらいに人が乗りこんだボートなどのニュースを一度はみたことがあるのではないだろうか。
彼らは、なぜ自国を出なければならないのか、また、強制送還されたとしても、そこで生きていくことができるのだろうか。
これらの事件は、話の展開からひとつにつながっていくことが推測されるけれど、どれも独自の展開をみせ、かなり後半にならないと全体としてのかかわりがわからない。
複雑に絡んでいるようで、いないようなプロットに最後まで付き合ったとしても、
はっきりとした正義は示されない。
非常に読み応えがある作品に仕上がっている。
リーバスとシボーンのその後を期待する読者には、ちとがっかりなところだけれど、なんというか2人の仲は、いまどきの中学生だってもっと発展的だぞと思わせるものがあって、もどかしいといいましょうか、、、そんなところが、リーバスだね。
蛇足
リーバスが、ジャクージに入っているカファティを訪ねるシーンで次のような会話がある。
「赤が似合う」
「メフィストフェレスってことか?」
ぶはっと吹き出してしまった。
何で笑ってしまったかは『よしきた、ジーヴス』を参照あれ。
『獣と肉』のラストのオチなど、イアン・ランキンはウッドハウスのファンに違いない。
獣と肉
リーバスは、もう金の万年筆がもらえる歳で、性格上問題も多い警部なので、上司からは嫌がられ、犯罪捜査部の組織再編成の折には、自分のテーブルすらない。
窓際族(古っ)というか、無言の意図で退職を迫られているわけだ。
そんな事情を察しながらも、いつものようにハイレベルなユーモアを披露し、
なつかしのロックを口笛でしつこく吹いている。
唯一の救いは、シボーンと同じ警察署に所属しているということぐらい。
そのシボーンは、どんどんリーバス化しているのが目立ちます。
今回の作品は、リーバスの退職に先駆け、足跡をいろいろなところに残していこうというような雰囲気がなんとなく漂っている印象を受けます。
そうそう、前作のインターネットに引き続き、
リーバスは携帯からメールが送れるようになりました。
受け取った方は、解読に苦労しそうなメールですが(笑)
今回の作品は、もしかしたらシリーズ最高傑作かもしれない。
リーバスシリーズは、多少ハードボイルド気味で、事件を社会的な視点から捉え、解決していくものが多く、上辺は美しいエジンバラの街並みの下にある暗部を際立たせている。
それは、街全体の歴史であり、国の歴史でもある。
現在は過去からつながっており、どんなに麗麗しく街を飾ったとしても、その過去は消えることはなく、少し掘り起こせば過去が暴かれ、歴史があらわになる。
ちなみに、今回、地下室のコンクリートの下から発見される骸骨は、250年前の魔女の骨。
その骨を教材用として使用していたエジンバラ大学には、ロバート・ノックスの頭蓋骨が飾られており、ノックスといえば、死体盗掘人と共謀した人物。
これだけでも幽霊ツアーに参加した気分を味わえる。
今までのリーバスシリーズを読んでいる読者なら、骸骨がどんなに重要なポイントになり、リーバスがとことん追求していくのではないかと思うでしょうが、その役はシボーンが引き受け、また、シボーンは、家出人の捜索と出所したばかりの強姦犯の殺人事件も抱えて大忙し。
じゃあ、リーバスは何をしているのかといえば、難民の刺殺事件を追っている。
そう、今回の事件は派手な事件ではないが、大きな社会問題を浮き上がらせているのだ。
BS2で放送のあった『第一容疑者』でも移民問題や外国人労働者を取り扱い、先日TV放送のあった『102』では、密入国者を不当な賃金で働かされているシーンが登場する。
日本では、あまり実感がわかない問題かもしれないが、
劣悪な状況でコンテナーに詰め込まれた人々や、あふれるくらいに人が乗りこんだボートなどのニュースを一度はみたことがあるのではないだろうか。
彼らは、なぜ自国を出なければならないのか、また、強制送還されたとしても、そこで生きていくことができるのだろうか。
これらの事件は、話の展開からひとつにつながっていくことが推測されるけれど、どれも独自の展開をみせ、かなり後半にならないと全体としてのかかわりがわからない。
複雑に絡んでいるようで、いないようなプロットに最後まで付き合ったとしても、
はっきりとした正義は示されない。
非常に読み応えがある作品に仕上がっている。
リーバスとシボーンのその後を期待する読者には、ちとがっかりなところだけれど、なんというか2人の仲は、いまどきの中学生だってもっと発展的だぞと思わせるものがあって、もどかしいといいましょうか、、、そんなところが、リーバスだね。
蛇足
リーバスが、ジャクージに入っているカファティを訪ねるシーンで次のような会話がある。
「赤が似合う」
「メフィストフェレスってことか?」
ぶはっと吹き出してしまった。
何で笑ってしまったかは『よしきた、ジーヴス』を参照あれ。
『獣と肉』のラストのオチなど、イアン・ランキンはウッドハウスのファンに違いない。
獣と肉
ストーリー展開、キャラクター、ユーモア、謎解き、オチ、どれをとっても私好みです。
最近のイギリス産ミステリをあまり読んでいないので、ほかと比べることはできませんが、リーバスシリーズは古くからあるイギリスらしさを踏襲した上で、現代のミステリを描いていますから、古典好きの私にもジャストフィットなんです。
ユーモアやオチは、皮肉が利いていて、好みが分かれるところかもしれませんが。
>はっきりとした正義は示されない
のがリーバスシリーズの魅力だと思います。
不良警官のリーバスに萌え萌えですぅ!
「黒と青」は、文庫化されたんですね。
新作、いや、邦訳されていない中間部は、出版されるんでしょうか、心配だなぁ。