かっこうのつれづれ

麗夢同盟橿原支部の日記。日々の雑事や思いを並べる極私的テキスト

15 五分間の攻防 その4

2009-10-25 09:12:30 | 麗夢小説『向日葵の姉妹達』
 戦いはやはり圧倒的だった。
 所詮下級夢魔如きでは、麗夢、アルファ、ベータの三位一体に付け入る事は出来ないのだ。
 だが、麗夢は普段とは違う、妙な違和感を覚えていた。
 普通、夢魔は統制の取れた動きなどしない。
 下級夢魔ほど、とにかく数を頼んでひたすら突っこんで来る事しか知らないものだ。
 だからこそ麗夢達も全力で迎え撃ち、その悉くを返り討ちにして、極短時間で制夢権とでも言うべき秩序を回復するのである。
 だが、この夢魔達は、うち払ってもなぎ倒しても、一向に数が減った気がしないのだった。
 そればかりか、どうやら無理押ししてこない。
 普通はまるで無秩序に塊になって剣の前に飛び込んでくる彼らが、信じられないことに幾つかの集団に別れ、互いに連携を取りつつ左右上下とあらゆる方角から麗夢達を狙ってくる。
 その上、決して深入りしない。
 全滅するまで突撃を止めないのが普通なのに、ちょっと麗夢達に当たるやたちまち身を翻して逃げ散ってしまう。
 間髪を入れず次の夢魔の一団が襲いかかってくるので気づかなかったが、今や、夢魔達が高度な指揮系統を保ちつつ、ある目的を持って麗夢達に向かってきていると考えるしかなかった。
 その目的とは、どう見ても「時間稼ぎ」以外にあり得ないのである。
 佐緒里=ROMは、宣言通り麗夢をこの夢に釘付けにし、その間に本体である肉体を破壊しようと、動き始めたのだ。
 それにしても、死夢羅の他に、このように夢魔達を操るものが現れようとは、麗夢には意外でもあり、恐ろしくもあった。もちろん負ける気はしないものの、これからこのような敵が増えると、やっかいであることには違いない。
(それはこちらの思惑通りではあるけれど……)
 時間稼ぎは麗夢の目的でもある。
 後は榊の手腕に期待するより無い。
 麗夢は一体を横様に薙ぎ払い、返す刀にもう一方を突き殺しながら、チラと背後の二人に目をやった。
 どういう経緯があったのか知らないが、シェリーはすっかりROMを信じ、その腕の中に抱え込まれている。
 ROMはROMで、シェリーの身体をしっかり抱き、時折流れ弾のように飛んでくる夢魔からガードしているようだ。
 どうやら下級夢魔程度ならROMにもどうにか出来ると見えて、今のところ二人とも無事である。
 麗夢はその事に安堵しつつ、このROMをどうしたものか、思案せざるを得なかった。
(生かすのか、倒すのか……)
 目の前の佐緒里=ROMは明らかにバグが修正されないまま夢魔に汚染されてしまったプログラムである。もう消去以外に手はないだろう。
 だが、後ろのROMははたしてどうか。
 シェリーの夢に入るとき、途中からではあったが、シェリーを巡る一幕は麗夢も見ている。その中で、このROMは確かに自分の欠点、屋代修一のプログラムミスで生じてしまったバグを、自ら修正しようとしているように感じられた。
 失敗をバネにより良くなろうと言うのは、人間でも同じ事だ。
 即ち、このROMは一段と人間に、屋代修一が望んだものになりつつあると言えるのではないか?
 でも、既にその肉体がこの形になってしまった今、彼女を助ける術があるのかどうか、麗夢にも明確には判らなかった。
 鬼童、あるいはヴィクターなら何かいい知恵があるかも知れないのだが。
 麗夢はひたすら考え続け、こうなったらなるようにしかならない、と思い切った。
 中に充満した瘴気を消し去れば、あるいは元の通りになるかも知れない。
 そうなればなったでやっかいなことには変わりないが、それでも良いと、麗夢は思った。
 こうして戦いはなおも続く。
 その終止符が打たれるまで、後五分もないはずであった。

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