かっこうのつれづれ

麗夢同盟橿原支部の日記。日々の雑事や思いを並べる極私的テキスト

新作短編 その4

2008-06-22 18:16:13 | 麗夢小説 短編集
 あれ? なんでなんでしょう? 確か昨日ちゃんとアップしたはずだったんですが・・・。
 今、今日のブログを、と思ってアクセスしたら、昨日の分がすっかり消えて無くなっているではありませんか。うーん、全く原因が分かりません。
 どうもこの数日、原因は不明なのですが、信じられないポカをすることが目立ってきてます。先日は仕事帰りにヘルメットかぶらないでバイクで走り出そうとしましたし、昨日も出張先で使う大事な書類だから、とわざわざ準備万端整えておいたにも関わらず、それを見事に忘れて、本人はカバンを開けるまでちゃんと入れた、と信じ込んでいたりとか、ともかく訳が分からないほど凡ミスが続いているのです。このところ暑くて寝苦しくて寝不足気味だったのが何か影響しているのかも? と言うわけでようやく物置から扇風機を出してきたのですが、これで少しはマシになるでしょうか?
 と言うわけで、あらためて連載小説をアップします。起承転結の承の部がこれで終わります。次からはいよいよお話が転がる転の部です。一気にクライマックスまで持っていきたいところですが、何よりまずは時間が欲しいですね(苦笑)。

-----------------------以下本文----------------------------

 朝倉幸司は、マンションからほど近い、とある病院の一室に運ばれた。麗夢達の力と、榊、鬼童の適切な処置によって一命を取りとめたとはいえ、長時間の低体温状態で、特に手足はやや深刻な凍傷になっている。四肢切断という最悪の事態を避けるためにも、一刻も早く本格的な治療が必要とされたのである。
 ようやく朝倉の病室で人心地ついた麗夢は、榊達に朝倉が見ていた悪夢の内容を話した。
 どことも知れぬ雪山で遭遇した200名余の軍人達。朝倉がその中に取り込まれていたこと。そして、円光の気と合わせて繰り出した浄化の気を浴びて、完全に雲散霧消してしまったこと。特に榊は、悪夢の源である死霊達が消滅したとの話に、手放しで喜んだ。
「しかし、これでこの事件も迷宮入りにならざるを得ませんな」
 と口では苦笑を漏らしながらも、連続凍死事件が事実上解決したことに、榊は心から安堵したのである。一方、鬼童や円光は、まだ榊ほど気を抜いてもいられなかった。何しろ、どうにも謎が多すぎるのだ。
「それにしても、なぜ彼らが狙われたのでしょうね。麗夢さんのお話を伺う限り、その死霊は多分八甲田山で遭難した旧日本陸軍の兵士達じゃないかと思うのですが、そもそも彼らが東京くんだりまでわざわざ出てくる理由が判りません」
「それに、あれ程の冷気を発する死霊にしては、あまりに脆いのが拙僧には気になる」
 二人の疑問は、朝倉の夢に入ったときから、麗夢自身も引っかかっていた事柄だった。特にあのあっけなさ。まさかとは思うが、今になってみると、彼らは抵抗の末麗夢達の気に呑まれて浄化・消滅したのではなく、自ら引いたようにも見えないこともない。
「まあ、朝倉が目覚めればはっきりするだろう。取りあえず今日の所は解散しましょう。麗夢さん、ご苦労様でした。アルファ、ベータ、それに円光さんと鬼童君も、ありがとう」
 榊の勧めに、麗夢達も一応頷いた。実際確かに邪気は去り、円光の心にも鬼童の装置にも、妖しげな気配は感知されない。それに、穏やかに眠る朝倉の容態も、今はすっかり安定している。あとは朝倉が目覚めるまでの間、彼らがここにいて何が出来ると言うものでも無かった。
「判りました、榊警部。朝倉さんが起きたら教えて下さいね。行きましょう、アルファ、ベータ」
「あ、僕も行きます、麗夢さん」
「拙僧も、失礼いたす」
 小さなお供を連れてきびすを返した麗夢の背中を追って、鬼童と円光が慌てて病室を後にした。
「さぁて、どうしたものか・・・」
 麗夢達を見送った榊は、静かにベットで眠る朝倉の寝顔を眺めながら呟いた。心は既に、朝倉の件をどう報告するか、に移っている。しばらく捜査その物は続くだろうが、もちろん死霊の仕業ですとは言えないので、そこはそれ、今までの経験を生かして適当にそれらしくまとめなければならない。まずは目覚めた朝倉を聴取して、その内容を加味して話を作り上げないと・・・。榊は、思わず鼻歌の一つも歌いそうな位に軽くなった気分のまま、その文案を練るのに熱中した。
 この気分が、数時間後、早とちりの誤解だと気づくことになろうとは、今の榊には想像すら出来なかった。

コメント
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