巨樹に魅せられて

巨樹巡りを趣味としていますが、気がつくと神社巡り。その周辺の話題もココに書き留めています。

「湯浅 勲」

2009-02-08 08:25:32 | 林業
2009年2月3日、NHK放映の「プロフェッショナル 仕事の流儀『森に生きる、山に教わる~森林再生人・湯浅勲~』とういうドキュメンタリー番組を見ました。

内容をNHK番組表からコピーします。
「日本の森林の4割を占めるスギやヒノキの人工林が危機に瀕(ひん)している。安い輸入材の影響で手入れもされず放置され、倒木や土砂崩れなど、深刻な被害が続出。そんな中、熱い注目を集める男がいる。湯浅勲(57歳)。京都府日吉町の森林組合を束ねるリーダーだ。荒れていた日吉の人工林の7割を生き生きとした姿に生まれ変わらせ、関係者をあっといわせた。日々、全国各地の森をよみがえらせようと奮闘する湯浅の姿を描く。」

私はアレルギー分野が専門の小児科医を生業としています。
スギ花粉症については自信が患者でもあり「なぜ日本だけでこれほど問題になっているのか?」と以前から疑問を持っていました。
アレルギー疾患の治療の基本は「アレルゲンとの接触を避ける、つまりアレルゲンを生活環境から排除する」ことです。
当然、スギ花粉症では生活環境からスギを排除すれば症状は出ません。
しかし、風に乗って飛んでくる花粉に人間は無力です。
せいぜいマスク、ゴーグル、花粉のつきにくい衣服などで誤魔化すくらい。

「なぜスギ林を伐採しないのですか。」
アレルギー関連学会で花粉症の講演があるたびに演者にしつこく質問した時期がありました。
しかし的を得た回答をいただいた記憶がありません。
皆「スギ林は国有林ではなく私有林なので・・・」ムニャムニャと口を濁します。
「スギがなければヒノキ花粉症が増えただけさ」という妙な反論も受けました。

そこには政治が絡んでいるらしいことが薄々わかってきました。
その方面の書物を読むと戦後の植林政策の失敗により人工林が放置され、それがスギ花粉症の温床になったことが指摘されており、愕然としました。

では今の政策は?
林野庁のHPは(http://www.rinya.maff.go.jp/seisaku/sesakusyoukai/kafun/situmon.html)
とお粗末な内容です。
採算がとれないのにまだスギに固執する理由がわかりません。

本題に戻りますが、この湯浅氏の活動を知り現在の林業が陥っている閉塞状況を解決する光明が見えたような気がしました。
効率化してコストを削減した間伐、林業業者に誇りを持たせる人材育成法。
世界大不況でリストラされた失業者が大発生している今の日本において林業や農業に人を戻して日本を再生することはできないのでしょうか。
食物自給率も上がるだろうし・・・経済的には難しいと思われますがそれを何とかするのが政治ですよね。

山歩きをすると、鬱蒼としたスギ林に出くわします。暗闇に吸い込まれてしまいそうで怖い。
暗いスギ林ではなく、生き物の息吹が感じられる昔の日本の広葉樹林の森に少しずつ戻っていって欲しいと思います。

「湯浅 勲」この名前を忘れません。

私は幼小児期に田んぼを走り回り、川遊びで生き物と接した最後の年代です。
その川が今はコンクリートで固められ濁った水がよどんでいるのを見ると悲しくなります。
カブトムシ、クワガタが捕れる秘密ポイントも年々消えていきます。
未来を担う子どもたちに何が残せるのか、自問自答しながら過ごしていきたいと思いました。