小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

ワクチンの安全性は、危険性より伝わりにくい

2017年09月15日 06時39分48秒 | 予防接種
 人の噂話は、褒める内容より悪口の方が楽しい、という事実があります。
 医療問題も、その医療を正確に伝えるものより、揚げ足をとるような記事や本の方が人気が出ます。
 とくに予防医学は少しの問題でも盛られて盛られて大変な副作用として取り上げられる傾向があります。
 その代表的なものが「ワクチン」です。

■ ワクチンの安全性をどう伝えるか
(ケアネット:2017/09/15)
 2017年8月23日、国立国際医療研究センターの国際感染症センター予防接種支援センターと、国際医療協力局グローバルヘルス政策研究センターは、国立国際医療研究センター病院内で「予防接種とコミュニケーション~メディアや専門家が伝えていること、いないこと~」をテーマに、講演とパネルディスカッションを開催した。
ワクチンの正しい知識の底上げが大事
 はじめに医療者の立場から氏家 無限氏(同センター予防接種支援センター)が、「定期の予防接種における一時中止・積極的勧奨の差し控え」と題して、講演を行った。
 わが国では、国民の健康保持と予防接種被害の救済の目的のもと制定されている予防接種法に基づき、小児、成人への予防接種が行われている。また、万が一、健康被害が起こっても副反応報告制度とともに、予防接種健康被害救済制度などにより、被接種者の保護がなされている。
 実際、1975年のDPT(三種混合)ワクチン、2000年のポリオワクチン(Lot.39)の一時中止、2005年の日本脳炎ワクチンの積極的勧奨差し控えを例に挙げ、いずれもその後に、安全性の確認されたワクチンなどが上市されても、社会的な影響は大きく長く続き、ワクチン未接種者を生む結果となったと問題を提起した。
 そして今、HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンが同じような状態になっていると指摘する。2013年の積極的勧奨差し控え以降(公費助成は継続)、それまで実施対象者の75.3%が接種していたワクチン実施率も、2014年には0.7%にまで落ち込んだという。
 同ワクチンは、現在も厚生労働省の審議会で安全性の審議がされているが、「デメリットが強調されやすいワクチンの特性を理解したうえで、医療従事者やメディアが中心となって、全体の関心、知識、理解の底上げを行っていくことが重要であろう」と述べ、レクチャーを終えた。
若者の健康を守ることは次代への投資
 同じく医療者の立場から北村 邦夫氏(一般社団法人 日本家族計画協会 理事長)が、「女性の健康」と題して、レクチャーを行った。
 最初に『世界人口白書(2003年)』からの引用として「思春期の若者の健康と権利への投資は次世代に大きな利益をもたらす」と若年者への健康配慮の重要性を説いた。具体的には10代での避妊や性感染症の検査・治療、とくにコストについて触れ、クリニックの利用などほぼ公費で無料である欧米各国と比べ、わが国には補助制度がなく、著しく遅れている現状を紹介。デリケートな内容だけに、親や社会が触れることに積極的ではないと指摘する。
 また、HPVワクチンについて言及し、わが国では1年間に約1万人の女性に子宮頸がんが発症し、1年間に約3,000人の女性が本症で死亡し、20~30代女性で罹患率・死亡率ともに増加している中で、ワクチン非接種の女性が出産年齢を迎えている。早急にワクチンの有効性をエビデンス1-4)を基に説明し、ワクチン接種の必要性と重要性を啓発する必要があると提案する。「諸外国より遅れているワクチンギャプを一刻も早く解消することが若者を救う近道」と述べ、レクチャーを終えた。

●参考文献
1)Ozawa N, et al. Tohoku J Exp Med. 2016;240:147-151.
2)Tanaka H, et al. J Obstet Gynaecol Res. 2017 Jul 14. [Epub ahead of print]
3)Matsumoto K, et al. Int J Cancer. 2017;141:1704-1706.
4)World Health Organaization. Weekly epidemiological record. 2017;92:393-404.

メディアは科学的根拠に基づいた報道で世論形成を
 続いて報道の立場から岩永 直子氏(BuzzFeeD JAPAN)が、「子宮頸がんワクチンの報道について」をテーマに、現在の報道の在り方と今後の方向性についてレクチャーを行った。
 HPVワクチンは、2013年6月の「積極勧奨の中止」以降、医療者の間でも接種に消極的な医師が増え、事実上、わが国では接種がストップしてしまった。
 これについてメディアは、接種が再開されないことに疑問を呈しながらも、副反応やネガティブな情報の両論併記をすることで、一般の受け手の不安を増大させたと、同氏は指摘する。また、ワクチンの専門家が、接種中止の弊害を発信しても、それが一般の受け手に届いていないという現実もあるという。今、世界中でHPVワクチンの科学的知見が蓄積されている。これらの客観的な価値判断をメディアは行い、伝える必要性があると指摘する。
 具体的には、「行政、医学界、メディアが科学的な根拠を捻じ曲げた判断をせずに、最新の科学的根拠を、この三者が連携して絶えず発信することで、世論形成をするべきではないか」と提案し、レクチャーを終えた。
求められる情報の受け手に配慮した情報発信
 続いて、堀 成美氏(国際感染症センター 感染症対策専門職)が、情報を受ける側の立場から、メディアへの要望などを述べた。
 HPVワクチンの報道では、メディアが不安をあおるようなものが多数見られた。その情報を得て、受け手が不安になりWebなどで検索することで、さらに不安を増大させる現象があったと指摘する。問題は、メディアが「続報」をきちんと伝えないことであり、一度流れた情報が修正されないまま、今日まで来ているという。また、医学系学会などの情報発信も一般の受け手を意識した発信を行っているかどうか(たとえば専門用語で難しい、読みやすさなど工夫がないなど)、受け入れ易い情報発信をしているかどうか検討する必要があると語った。
各国各様のワクチン啓発事情
 後半では、ブータン、マレーシア、オーストラリア、スコットランド(イギリス)、デンマーク、アイルランドからのパネリストも交え「報道、専門家は何を伝え、伝えていないか~海外のHPVワクチン事情を例に~」をテーマに、パネルディスカッションが行われた。
 ブータン、マレーシア、オーストラリア、スコットランドでは、HPVワクチンの学校接種が行われ、印刷物、ラジオ、テレビなどを使用し、予防接種推奨のメッセージを発信し続けている。その成果もあり、ワクチンに否定的なメディアもあまり見られないという。
 一方、デンマークでは、2015年に放映された副反応を取り上げたテレビ番組などにより、日本と同様の問題に直面している。また、アイルランドでも、副反応の刺激的な取り上げ方がメディアで行われたものの、厚生大臣が先頭に立ち、政府がエビデンスに基づいた情報を発信、ワクチン接種推奨の啓発活動を行っていると紹介した。
 このほか、今後の情報発信ツールとして「FacebookなどのSNS」を通じて、「短いメッセージでさまざまなワクチンの有効性を発信する」、「同じ内容を繰り返し動画配信する」などさまざまな事例や建設的な提案がなされディスカッションを終えた。

<参考>
厚生労働省 予防接種情報
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PM2.5や黄砂がアレルギー疾患に及ぼす影響

2017年09月14日 18時34分34秒 | 医療問題
 怪しい、怪しいとは思っていましたが、やはり影響があるようです。
 下記記事のポイントを要約すると、

・PM2.5などの微細粒子は免疫を刺激する「アジュバント効果」を有しており、アレルギー因子のIgEを誘導してアレルギー性炎症を引き起こす。
・微細粒子を人が吸入すると、気道の奥まで到達し肺に炎症を惹起する。炎症反応が起こると、肺胞マクロファージという細胞が微細粒子を貪食し体外へ排出させる。
・マウスの肺胞マクロファージに微細粒子を貪食させると、アレルギー性炎症を引き起こす微細粒子を貪食した場合にのみ肺胞マクロファージが細胞死を起こしIL-1アルファというサイトカインを放出する。
・微細粒子をマウスの肺に投与すると、IL-1アルファが2週間にわたって肺に放出され続け、その間にアレルゲンを吸入するとIgEが誘導される。これは、微細粒子吸入後は長期的にIL-1アルファが放出され、アレルゲンに感作されやすい状態が続いていることを示している。

 ・・・あまり要約になってませんね。キーワードは「IL-1アルファ」というサイトカインのようです。

■PM2.5や黄砂など微細粒子吸入によるアレルギー性炎症の発症機構解明-阪大
2016年12月28日:QLifePro
免疫系を刺激するアジュバント効果がアレルギー性炎症を誘導
 大阪大学は12月21日、微細粒子の吸入によるアレルギー性炎症の発症機構を解明したと発表した。この研究は、同大学免疫学フロンティア研究センターの石井健特任教授および黒田悦史特任准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、米科学誌「Immunity」にオンライン掲載された。
 アレルギー性疾患は先進国を中心に増加の一途をたどっており、その要因のひとつとして大気中に浮遊する微細粒子(PM2.5、黄砂、ディーゼル粒子など)の関与が示唆されている。これまで多くの報告から、このような微細粒子は免疫を刺激する「アジュバント効果」を有しており、アレルギー因子のIgEを誘導してアレルギー性炎症を引き起こすことが示されていたが、その詳細は明らかになっていなかった。
アレルギー性炎症や肺の炎症性疾患の予防や治療法開発へ
 PM2.5などの微細粒子は、吸入されると気道の奥にまで到達、炎症反応を惹起する。炎症反応が起こると肺に常在する肺胞マクロファージが微細粒子を貪食し、体外へ排出させると考えられている。
 そこで同研究グループは、マウスから回収した肺胞マクロファージを使ってさまざまな種類の微細粒子を貪食させたところ、アレルギー性炎症を引き起こす微細粒子を貪食した場合にのみ、肺胞マクロファージが細胞死を起こし、IL-1アルファというサイトカインを放出することを突き止めた。また微細粒子をマウスの肺に投与すると、IL-1アルファが2週間にわたって肺に放出され続け、その間にアレルゲンを吸入するとIgEが誘導されることが認められたという。これは、微細粒子吸入後は長期的にIL-1アルファが放出され、アレルゲンに感作されやすい状態が続いていることを示している。また肺には異所性リンパ節といわれるリンパ組織が形成され、それがIgE誘導に関与する可能性が示唆されたという。
 今回、微細粒子がアレルギー性炎症を引き起こす仕組みが明らかになったことで、微細粒子によるアレルギー性炎症だけでなく、肺の炎症性疾患の予防や治療法につながることが期待されると、研究グループは述べている。
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子どもが頭を強く打ったときの注意点

2017年09月09日 07時19分41秒 | 小児医療
 「子どもが頭を強く打ったので診て欲しい」と受診される乳幼児が少なくありません。
 心配なのは「頭蓋内出血」なので本来は脳神経外科を受診すべき病態であり、吐いたりグッタリしたりボーッとしていれば救急車を呼んで病院へ行くはずです。
 当院に来る患者さんはそのような症状のない、でも心配だから診て欲しいというレベルですので、かかりつけ医として以下のようにアドバイスしています。

・頭蓋内出血が重症であれば意識障害、けいれんが必発なので救急車騒ぎになってるはずです(目の前に元気な患者がいるので取りあえずその心配は無い)。
・細い血管(正確には架橋静脈)が切れた場合、血の塊が徐々に大きくなって後になり症状が出てくることがあるので、頭部打撲後1ヶ月くらいは注意して観察してください。
・注意すべき症状として、意識が変、嘔吐しやすい、今までできていたことができなくなった(歩けたのに転びやすくなった等)。

 脳神経外科専門医によるわかりやすい解説記事を見つけたので紹介します;

■ 小児の頭部打撲 危険な兆候の見極め方
2017年3月30日:毎日新聞

<2017.9.17;追記>
 関連記事を見つけましたので引用させていただきます。
 解説は放射線科医で前掲の脳神経外科医と視点がちょっと異なります。
頭部CT検査の被曝のリスク(胸部レントゲン1枚の100倍!)と比較して判断するという内容です。
 フローチャート化してあるのでわかりやすい。

■ソファから落ちて頭をぶつけた男児に頭部CT?
2017/9/15 日経メディカル
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エボラ出血熱の感染防止に「安全な埋葬」法が有効

2017年09月09日 06時51分15秒 | 医療問題
 アフリカで一旦エボラ出血熱がアウトブレイクすると、なかなか流行が終息しません。
 某ドキュメンタリーを見ていて「遺体を触る習慣がある」ためにそのタイミングで感染してしまうことを知りました。

 紹介する記事は、そこに焦点を当てて対策を立てたところ、非常に有効であったという報告です。

■ 安全な埋葬、感染防止に エボラ熱、赤十字が実証
共同通信社:2017年9月6日
【ジュネーブ共同】2013~16年に1万1千人以上の死者を出した西アフリカのエボラ出血熱流行で、国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)主導で行った遺体の安全な埋葬が感染の拡大防止につながったことが5日までに、IFRCの研究で分かった。最大で約1万人の二次感染を防いだという。
 エボラ熱は致死率が25~90%と高く、確立した治療法はないことから二次感染防止が大きな課題になっている。
 埋葬方法も重要で、IFRCの担当者は「日本でも将来エボラ熱患者が発生する可能性があり、遺体を清める習慣も残っているだけに参考になると思う」と話している。
 エボラ熱は感染者の血液や体液などに接触して感染するが、西アフリカでは遺族が遺体を洗う風習があり、感染拡大の大きな原因となっていた
 このためIFRCは現地で埋葬のための特別チームを編成。防護服を着用し遺体袋を使う方法で、リベリア、ギニア、シエラレオネの3カ国で感染が疑われた人なども含め4万7千以上の遺体を埋葬した。
 こうした埋葬が行われなければ、1件につき平均2・58件の二次感染を引き起こしていたと推計。
また一次感染者のケア従事者は感染者の死後のみ接触した人に比べ2・63~5・92倍も感染リスクが高かった。
 こうしたデータから安全な埋葬によって、最大1万452人の二次感染を防げたとしている。
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炭水化物の多量摂取は死亡リスクの上昇と関係している

2017年09月09日 06時41分13秒 | 医療問題
 生活習慣病の原因となる高脂血症。
 素人感覚では「脂肪をたくさん摂取すれば高脂血症になる」と考えがちですが、さにあらず。
 「炭水化物をたくさん食べると高脂血症になる」のです。
 高脂血症対策として控えるべきは油・脂ではなく、炭水化物(米・小麦などの穀物、甘いもの)だったのです。

 この論理が裏付けされた研究報告を紹介します。
 なんとLancet!

■ PURE研究:炭水化物の多量摂取は死亡リスクの上昇と関係している
Univadis Medical News:2017.09.04
 大規模な国際研究では、脂肪の多量摂取は死亡率の上昇と関係していないことが分かった。
 治験医師らは、脂肪ではなく炭水化物が死亡リスクの上昇と関係しているというPURE研究の結果に鑑みて、食事ガイドラインの修正を提案している。
 この前向きコホート研究は、7地域18カ国の心血管疾患のない35~70歳の135000人以上を対象に行われた。研究結果は欧州心臓病学会(ESC)の総会で発表され、同時に『 The Lancet 』にも発表された。
 検証済み食物頻度アンケートを用いて研究対象者の食事の摂取量を記録し、対象者は栄養素(炭水化物、脂肪、タンパク質)によるエネルギー摂取量の割合(%)に基づいて、栄養素摂取の五分位に分類された。
 研究の結果、炭水化物の摂取量がより多いことは全死亡リスクがより高いことと関係していることが分かった。また、炭水化物の摂取量が最も多い人は、摂取量が最も少ない人と比べて、比例的にリスクが28%高かった。ただし、心血管疾患リスクまたは心血管疾患による死亡については、差は観察されなかった。逆に、総脂肪と各種脂肪の摂取は全死亡リスクがより低いことと関係しており、飽和脂肪の摂取量がより多いことは脳卒中のリスクがより低いことと関係していた。これらの研究結果を踏まえ、世界の食事ガイドラインを再検討するべきであると著者らは述べた。

<原著>
Dehghan M, Mente A, Xhang X, et al; on behalf of the Prospective Urban Rural Epidemiology (PURE) study investigators. Associations of fats and carbohydrate intake with cardiovascular disease and mortality in 18 countries from five continents (PURE): a prospective cohort study. The Lancet, published online 29 August 2017. doi: 10.1016/S0140-6736(17)32252-3.


 私自身、炭水化物制限食を始めてから2年が経過しました。
 肉類にともなう油の摂取量は多い傾向がありますが、血液検査では中性脂肪・コレステロールともに正常範囲です。
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周りに“ワクチン否定派”がいると子どもの予防接種が遅れがちに?

2017年09月08日 07時13分31秒 | 予防接種
 ワクチンを否定する情報はインパクトがあるので広まりやすく記憶に残りやすい傾向があると感じています。
 週刊誌でも、大物政治家や大物タレントのスキャンダルが掲載されると飛ぶように売れますよね。でももし、人を褒める記事ばかりだったら、たぶん売りあげは落ち込むことでしょう。
 人間なんてそんなもの。

 しかし予防接種は子どものいのちを病気から守るものですから、病期の重症度・合併症の頻度と、ワクチンの効果・副反応を正しく知り、正しく判断していただきたいものです。

 紹介する論文の中に、
「子どもの予防接種について親を教育するためには、妊娠中の関わりが重要であり、出生後まで待つべきではない」
 という文言があります。私は半分同意し半分首をひねりました。
 「出生後まで待つべきでない」ことには賛成です。
 しかし、「妊娠中の関わりが重要」では遅いと思うのです。
 おそらく妊娠中の関わりとすると、母親だけの教育になりがちで父親は蚊帳の外です。
 義務教育レベルでの感染症の知識とそれを予防するワクチンの役割を知る必要があると考えます。
 土台の基礎知識がしっかりしていれば、ワクチン反対派・否定派の扇動を耳にしても振り回されるリスクが減ると思われます。

■ 周りに“ワクチン否定派”がいると子どもの予防接種が遅れがちに?
HealthDay News:2017/09/08
 妊娠中に家族や友人から小児期のワクチン接種に関する否定的な情報を入手した女性は、子どもに予防接種をスケジュール通りに受けさせない可能性が高まることが、オークランド大学(ニュージーランド)のCameron Grant氏らの研究で分かった。なお、否定的な情報に触れたことによる影響は、その後に肯定的な情報に触れても消えないという。
 今回の研究では、2009~2010年にニュージーランドで生まれた子どもの母親約6,000人のデータを解析した。対象者は妊娠39週(中央値)の時点で、妊娠中に触れた小児期の予防接種に関する情報に関する質問票に回答した。子どもの出生後の実際のワクチン接種状況は、同国の予防接種レジストリからデータを入手した。
 その結果、妊婦の56%は予防接種に関する情報を全く入手していなかった。30%は肯定的な情報のみ、4%は否定的な情報のみを入手しており、10%は肯定的な情報と否定的な情報の両方を入手していた。情報源は「医療従事者」が3分の1を占め、「家族や友人」「メディア」はいずれも14%だった。
 医療従事者から予防接種を推奨する情報のみを入手したという女性が最も多く、否定的な情報は主に家族や友人、メディアから入手していた。ただ、「否定的な情報を入手したと答えた女性の6人に1人が情報源として医療従事者を挙げていることは気がかり」とGrant氏は話している。
 妊娠中に情報を全く入手しなかった母親は、71%が子どもにスケジュール通りに予防接種を受けさせていた。一方、否定的な情報のみを入手した場合、スケジュール通りに予防接種を受けさせる可能性は57%に低下し、肯定的な情報と否定的な情報の両方を入手した場合でも61%に留まった。なお、肯定的な情報のみを入手した場合は73%と、情報を入手しなかった場合と同程度だった。
 Grant氏は「子どもの予防接種について親を教育するためには、妊娠中の関わりが重要であり、出生後まで待つべきではない。妊婦のケアに関わる医療従事者は、子どもの出生後の予防接種に対する親の意思決定を左右する重要な役割を担っている。これは小児の予防接種率を向上させられるかどうかにもつながる問題だ」と述べている。


<原著論文>
Veerasingam P, et al. Pediatrics. 2017 Aug 18.
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子どもの風邪予防にはビタミン?サプリ?

2017年09月04日 08時07分16秒 | 感染症
 子どもの風邪予防に関する記事を2つ紹介します。

 まずはビタミンD。
 残念ながら「無効」との評価。

■ 幼児へのビタミンDはかぜ予防に有用か?/JAMA
ケアネット:2017/07/31
 健康な1~5歳児に、毎日のビタミンDサプリメントを2,000IU投与しても、同400IUの投与と比較して、冬期の上気道感染症は減らないことが、カナダ・セント・マイケルズ病院のMary Aglipay氏らによる無作為化試験の結果、示された。これまでの疫学的研究で、血清25-ヒドロキシビタミンDの低値とウイルス性上気道感染症の高リスクとの関連を支持するデータが示されていたが、冬期のビタミンD補給が小児のリスクを軽減するかについては明らかになっていなかった。結果を踏まえて著者は「ウイルス性上気道感染症予防を目的とした、小児における日常的な高用量ビタミンD補給は支持されない」とまとめている。JAMA誌2017年7月18日号掲載の報告。
冬期の最低4ヵ月間、高用量(2,000IU) vs.標準用量(400IU)投与で評価
 検討は、オンタリオ州トロント市(北緯43度に位置)で、複数のプライマリケアが参加する研究ネットワーク「TARGet Kids!」に登録された1~5歳児を対象とし、2011年9月13日~2015年6月30日に行われた。
 研究グループは参加児703例を、2,000IU/日のビタミンDサプリメントを受ける群(高用量群349例)または同400IU/日を受ける群(標準用量群354例)に無作為に割り付けて追跡した。サプリメントの投与は保護者の管理の下、登録(9~11月)からフォローアップ(翌年4~5月)の間、冬期(9月~翌年5月)の最低4ヵ月間に行われた。
 主要アウトカムは、冬期の間に、保護者によって採取された鼻腔用スワブ検体によりラボで確認されたウイルス性上気道感染症例とした。副次アウトカムは、インフルエンザ感染症、非インフルエンザ感染症、保護者報告による上気道疾患、初回上気道感染症までの期間、試験終了時の血清25-ヒドロキシビタミンD値であった。
上気道感染症発症に有意差なし、初回発症までの期間も有意差みられず
 無作為化を受けた703例(平均年齢2.7歳、男児57.7%)のうち、試験を完遂したのは699例(99.4%)であった。
 小児1例当たりに確認された上気道感染症の報告数は、高用量群1.05回(95%信頼区間[CI]:0.91~1.19)、標準用量群1.03回(同:0.90~1.16)で、両群間に統計的有意差はみられなかった(発症率比[RR]:0.97、95%CI:0.80~1.16)。
 初回上気道感染症までの期間についても、統計的有意差は示されなかった。具体的な同期間は、高用量群は3.95ヵ月(95%CI:3.02~5.95)、標準用量群3.29ヵ月(同:2.66~4.14)。また、保護者報告による上気道疾患についても有意差はなかった(高用量群625件 vs.標準用量群600件、発症RR:1.01、95%CI:0.88~1.16)。
 試験終了時の血清25-ヒドロキシビタミンD値は、高用量群48.7ng/mL(95%CI:46.9~50.5)、標準用量群は36.8ng/mL(同:35.4~38.2)であった。

<原著論文>
・Aglipay M, et al. JAMA. 2017;318:245-254.


 次にサプリ。
 最近話題のプロバイオティクスの効果は如何に?

■ プロバイオティクスのサプリ、保育園児の感染予防には効果なし?
HealthDay News:2017/07/26
 1歳前後の保育園児にプロバイオティクスのサプリメントを使用しても、風邪や感染性胃腸炎といった感染症を予防する効果は認められなかったとする研究結果が「Pediatrics」7月3日オンライン版に掲載された。
 この研究は、コペンハーゲン大学(デンマーク)栄養・運動・スポーツ学のRikke Pilmann Laursen氏らが実施したもの。同国の保育園に通う健康な生後8~14カ月の子ども290人を対象として、そのうち144人を6カ月間にわたって1日1回パウダー状のプロバイオティクスを食事や飲み物に混ぜて摂取してもらう群(プロバイオティクス群)に、146人をプラセボを混ぜて摂取してもらう群(プラセボ群)にランダムに割り付けた。
 その結果、保育園を休んだ日数や風邪の症状、下痢、発熱、嘔吐などの発生頻度がプロバイオティクス群で減少することはなく、プロバイオティクス群とプラセボ群との間に差は認められなかった。また、プロバイオティクス使用による副作用の報告もなかった。
 これまでに報告されている研究では、プロバイオティクスによる感染性胃腸炎の予防効果が示されているにもかかわらず、今回は同様の結果が得られなかった。この点について、同研究の論文に関する論評の著者の1人である米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)小児科学のMichael Cabana氏は、「今回の研究の対象となった子どものほぼ半数で研究期間中も母乳育児が続けられており、全般的に健康状態が良好であったため、プロバイオティクスによる効果が現れにくかったのではないか」と考察。母乳に含まれるヒトミルクオリゴ糖は乳児の消化管に固有の細菌の成長を促進するため、母乳は腸内細菌の健康的なバランスを保つ最良の方法かもしれないとしている。
 また、今回の研究ではプロバイオティクスの副作用は認められず、安全であることは示されたが、同氏は「プロバイオティクスにはさまざまな製品があるため、もし試したいなら、まずは小児科医に相談し、適切な菌株を含み厳格な臨床試験で評価された製品を選ぶとよい」と助言している。

<原著論文>
・Laursen RP, et al. Pediatrics. 2017 Jul 3.


 プロバイオティクスも子どもの風邪予防に効果がなかったと。
 ただ、上記を読んでも「プロバイオティクス」の具体的内容が不明ですね。
 
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自らの髪の毛を食べる病気・抜く病気

2017年09月03日 11時42分53秒 | 小児医療
 初めて聞く方はギョッと驚かれるかもしれません。
 
 まれに自分の髪の毛を食べてしまう子どもがいます。
「抜毛症」という、自分の髪の毛を抜いてしまう病気。さらに抜いた髪の毛を食べてしまうことがあります。
 その理由は、貧血や精神的な要因。

■ 自ら髪を抜く病気 長期化すれば命の危険も
2017/9/2 毎日新聞
 自分で自分の髪の毛を抜いてしまう「抜毛症」はストレスが原因で起こる。「いい子」に発症することが多く、解決には心のケアが必要だ
 自分で自分の髪の毛を抜くのは、「抜毛症(ばつもうしょう)」という、ストレスが根本にあって発症する、心の問題が絡んだ病気です。本人の癖や性格の問題と言われたり、見た目は円形脱毛症と似ていたりしますが、原因は全く異なります。抜毛症の特徴や解決策について、横浜労災病院の齊藤典充・皮膚科部長に聞きました。

◇抜毛症に見られる五つの特徴
 抜毛症は、子どもから大人まで発症し、特に学童期から思春期の子どもに多くみられます。無意識のうちに髪の毛に触れて引き抜いている場合と、本人が分かっていて抜いている場合があります。また、髪の毛の抜け方や毛の状態などに特徴があり、次のようなことからおおよその診断がつきます。

1.髪の毛があちこち不規則に抜けている。
2.脱毛した痕が丸くなっていない。
3.利き手が右なら頭の右横とその前後、左利きは左横とその前後が抜けている。
4.毛髪の中に途中で切れた髪の毛がある。
5.コイル状に丸まった髪の毛がある。

 髪の毛は、手が届きやすいほうが触りやすいため、利き手側に不規則な脱毛痕が多く見られます。切れた髪の毛やコイル状に丸くなった髪の毛は、抜こうと引っ張って切れたか、抜いてはいけないと思い直して途中で指を放した跡です。

◇髪の毛を食べてしまうこともある
 また、抜毛症は、意外な症状から見つかることがあります。それは、食欲不振や腹痛といった症状で、抜いた髪の毛を食べてしまうことに起因します。髪の毛は、飲み込んでも消化されません。そのため、胃液や食物などと混ざり合って、石のように硬い固形物になってしまうのです。このような塊を「毛髪胃石」と言います。食べ続けた結果、塊が大きくなると、むかつきや嘔吐(おうと)、便秘などの症状が表れ、腸閉塞(へいそく)を起こすこともあり、見つかった場合は手術で取り除かなければ命の危険もあります。

◇問題のない「いい子」がなりやすい
 抜毛症の原因はなんらかのストレスで、日本で過去11年間の抜毛症を調べた研究によると学校に起因するものと家庭に起因するものがそれぞれ半数と報告されています。学校に関連するストレスは、友人や教師との関係、いじめ、塾に行きたくないなどが考えられます。一方、家庭によるストレスがある子どもには、父親が多忙でほとんど家におらず、教育熱心な母親と過ごす時間が長い、という共通のパターンがあります。
 子どもが抜毛症と診断されると「こんなにいい子なのに」と母親は言います。しかし、それが子どもにとって心の重荷になっていることに気づいていません。抜毛症の治療は、場合によっては精神的なケアが大切ですが、親に原因がある時は親も同時にケアする必要があります。

◇髪の毛を抜かないための解決策
 抜毛症の治療は、傷ついた頭皮や髪の毛に対しても行いますが、基本的には髪の毛を引き抜かなければ起きないため、心のケアに重点を置きます。まず本人が自覚する、その次に行動を変える必要があります。主な解決策を解説しましょう。

1)髪の毛に触らないようにする
 髪の毛を引き抜かないようにするには、手で触らないことです。頭にバンダナをしたり、帽子をかぶったりして、直接、髪の毛に触ることができないようにすると効果的です。
2)本人が自覚するまで見守る
 周りの人から「髪の毛を抜くな」「抜くのをやめろ」と言われるとストレスになります。本人が「よくない」「やめたい」と思うようになると、行為は止まります。そう思えるまで温かく見守ってください。
3)相談できる人を探す
 やめようと本人が思いすぎると、かえってストレスになって髪の毛を抜いてしまいます。そのような時は、気軽に相談できる人がいたほうがよいと思います。心理学の専門家であるカウンセラーに限らず、いろいろな人に会うこともいいのではないでしょうか。仲間や自分が楽に過ごせる場所ができると、よい意味でストレスからの逃げ道ができ、行動が変わるきっかけになります。

◇抜毛症の兆候と原因を見つけるには
 抜毛症は、一見なんの問題もない、いい子に発症します。本人に聞いても心理的なストレスの原因や自分で髪を抜いているとは言わないので、抜毛症と思ったら、ふだんの行動をそっと観察しましょう。机やベッドの上に抜け毛が増えていないかにも注意が必要です。自宅で抜く行動は見られないのに薄毛になってきた時は、通学中に髪の毛に触っていることがあります。学校が楽しいかどうかも聞いてください。そして、抜毛症では、親の言動が子どもの心にストレスを引き起こすことがあるということも頭の片隅に入れておきましょう。



■ 消化管が髪の毛で埋め尽くされていた女の子
2017/09/01:ケアネット
 皆さんはラプンツェル症候群という疾患をご存じでしょうか。
ディズニーの映画で有名になったあのラプンツェルは、グリム童話の中に登場する美しくて長い髪を持つプリンセスです。髪の毛が異常に長いキャラクターなので、記憶に残っている人も多いでしょう。
このラプンツェル症候群は、自分の髪の毛だけではなく他人の髪の毛をも食べたい衝動に駆られてしまう珍しい疾患で、胃の中に大きな毛玉が形成されるという特徴があります。ひどい場合、それが消化管を閉塞させてしまい、いろいろな症状を引き起こします。

<原著論文>
Islek A, et al.
A rare outcome of iron deficiency and pica: Rapunzel syndrome in a 5-year-old child iron deficiency and pica.
Turk J Gastroenterol. 2014;25:100-102
.

 5歳の女児が腹痛を訴えて救急外来にやってきました。彼女はヘモグロビンが4.5g/dLという強度の貧血を起こしており、腹部には腫瘤を触れました。詳しく調べてみると、胃から小腸までびっしりと髪の毛の塊が詰まっていたのです。
 ラプンツェル症候群はお察しのとおり、異食症です。鉄欠乏性貧血のときに氷を食べる患者さんが典型的ですよね。おそらく、この女の子はもともと鉄欠乏性貧血があり、その異食症として髪の毛を食べてしまう症状が発現。そこに胃から小腸の吸収不良によってさらなる二次性貧血を起こし、異食症が悪化…という悪循環に陥っていたのかもしれません。
女児は手術を受けて、髪の毛の大きな塊は除去されました。髪の毛って胃の中で溶けてくれるのかと思いきや、そうでもないんですね。皆さんも髪の毛を食べないように注意しましょう。

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慢性蕁麻疹の病態解明へ

2017年09月03日 09時30分59秒 | アトピー性皮膚炎
 蕁麻疹の診療には難渋します。
 蕁麻疹=アレルギーというイメージをお持ちの方は多いと思われますが、実際にアレルギー機序が関与する蕁麻疹は全体の1わりにとどまります。

 私の知り合いの皮膚科専門医は、自分が蕁麻疹持ちなのでそれを治す目的で皮膚科医になったそうです。
 専門医学書を一通り読み、「ああ、蕁麻疹って治らないんだ」と理解して開き直り、それ以降はあまり気にならなくなったと言ってました。

 一部は自己免疫疾患とされていますが、今回、血液凝固系が関わるという報告が出ました;

■慢性蕁麻疹の病態に血液凝固反応が関与-広島大
2017年09月01日:QLifePro
抗ヒスタミン薬無効の患者もいる慢性蕁麻疹
 広島大学は8月30日、慢性蕁麻疹の病態に血液凝固反応が関与する機序を解明したと発表した。この研究は、同大大学院医歯薬保健学研究科の柳瀬雄輝助教と秀道広教授らの研究グループによるもの。研究成果は「The Journal of Allergy and Clinical Immunology」オンライン版に掲載された。
 慢性蕁麻疹は明らかな誘因が無く、毎日膨疹が出没する疾患。発症機序としては、皮膚組織内のマスト細胞からヒスタミンが遊離され、皮膚の微小血管内皮細胞に作用して膨疹が形成されると考えられている。しかし、その詳細は未解明な部分が多い。また、一般的な蕁麻疹の治療には、主に抗ヒスタミン薬が用いられるが、慢性蕁麻疹では抗ヒスタミン薬が無効の患者が少なくない。
血管内皮細胞の組織因子発現、アデノシンが制御
研究グループは、組織因子を発現させる因子として、末梢血好塩基球から放出されるヒスタミンと、慢性蕁麻疹の増悪因子として知られるリポポリサッカライド(LPS)等の微生物由来物質の働きに着目し、これらが血管内皮細胞の組織因子発現と、それに続く血液凝固反応への影響について検討した。
 その結果、LPS等の微生物由来物質とヒスタミンが同時に血管内皮細胞に作用すると、別々に作用するよりも多くの組織因子が発現することが判明。また、高発現した組織因子は局所的な血液凝固反応を引き起こし、その過程で生じた活性化血液凝固因子により血管透過性が高まったという。
 血管外に漏出した血漿成分は小さな膨疹を形成し、さらに血管外に存在するマスト細胞を刺激して、大量のヒスタミンを放出させ、蕁麻疹を形成するものと予想される。また、ヒスタミンとLPSの同時刺激によって引き起こされる組織因子発現は、生理活性物質のアデノシンによって制御されることもわかったという。
 今回の研究成果より、血液凝固反応を制御する薬物やアデノシン類似物が慢性蕁麻疹の新しい治療薬として応用されることが期待される、と研究グループは述べている。

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ヒルドイドの功罪

2017年09月03日 09時05分11秒 | アトピー性皮膚炎
 今から20年近く前、当時保湿剤としてアレルギー学会で評価されていたヒルドイドを勤務していた病院に採用しました。
 使用感がよく、世間的にも話題に上るようになり、患者さんから希望されることも少なからず経験しました。

 いい薬だなとずっと使い続けてきたのですが、約12年前に開業し、その値段の高さに気づきました。
 100gで約3000円もするのです(保険が効くので実際に払う金額は3割)。

 「このまま使い続けると“高価な薬を乱用”と非難されるようになる」

 と感じ、ジェネリック医薬品「ヘパリン類似物質」に変更しました。それでも、本家本元の2/3の値段です。
 成分が同じでも添加物が異なるらしく、使用感と患者さんの評判は今ひとつでしたね。

 さらに安価な保湿剤で代用できないか模索して今日に至ります。
 このことが医療経済的な視点から話題に上るようになりました;

■高級美容クリームより処方薬 医療費増、乏しい危機感
2017年8月31日:朝日新聞
 医師や患者のコスト意識が低いことを背景に、医療費が押し上げられている。将来的には、保険適用される医療が制限される可能性も浮上している。
 美容には、何万円もする超高級クリームよりも、医療用医薬品「ヒルドイド」がいい――。
 ここ数年、女性誌やウェブに、こんな特集記事が続々と出る。保湿効果があるヒルドイドは、医師が必要だと判断した場合のみ処方されるが、雑誌には「娘に処方してもらったものを自分に塗ったらしっとり」といった体験談も載る。
 ソフト軟膏(なんこう)タイプの50グラム入りで1185円。保険がきくので、患者負担は現役世代なら3割の350円余り、子どもなら自治体によっては無料になる。東京都内の40代の開業医は「患者に『多めに出して欲しい』と言われれば、出さざるを得ない」と話す。
 販売元のマルホは記事を見つけるたびに出版元に意見書を提出。「社会保障費の増加への対応が課題とされる中、保険適用の医療用医薬品を美容目的に使うのは、医療費の無駄遣いにつながるとの指摘がある」などとして記事の撤回を求めるが、消えては、また出る。
 こんな支出の積み重ねでも医療費が増えるという危機感が浸透していない。


 ちなみに現在私がメインに使用している保湿剤は、プロペト、親水クリーム、ベルツ水など・・・全て安価です(500gで1000円!)。
 使用感に満足できない方には、市販品として資生堂の「2e(ドゥーエ)」をオススメします。
 成分はヘパリン類似物質ではありませんが、この保湿剤はアレルギーのハイリスク赤ちゃんに使用してアトピー性皮膚炎の発症を3割減らしたという医学的実績のあるもの。
 値段もそこそこに抑えられています。
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