小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

「熱性けいれん7つの疑問に答える」

2016年08月09日 07時02分32秒 | アレルギー性鼻炎
 こんなパンフレットがいつの間にか手元にありました;

■ 診療ガイドラインが19年ぶりに改訂「熱性けいれん7つの疑問に答える」
(NIKKEI Drug Information 2015.08)・・・登録・有料サイトです。

ポイントをおさえたわかりやすい内容なので抜粋・紹介します。
その前に、熱性けいれんの概要は下記でご確認ください;

熱性けいれん(当院HP)
■ 「熱性けいれん診療ガイドライン2015
さて、本題へ。

【疑問1】ジアゼパム座薬(ダイアップ®)が処方される患者とは?
【疑問2】ジアゼパム予防投与は何歳まで続けるべき?
【疑問3】解熱剤投与でけいれんは予防できる?
【疑問4】抗ヒスタミン薬を使用しても大丈夫?
【疑問5】熱性けいれんはてんかんのリスク因子?
【疑問6】座薬挿入の刺激で便が出た!どう対応する?
【疑問7】キャンプに座薬を持って行かせるべき?


解説を読む前に、私がふだん患者さんに説明している内容を記しておきます;

【疑問1】(細かいのでスルー)
【疑問2】5歳まで、年齢が小さいときは2年間を目安。
【疑問3】できない。
【疑問4】けいれん持続時間が伸びるという報告があるので好ましくない。
【疑問5】単純性はリスクにならない。
【疑問6】10分以内で座剤の形が明らかに残っている場合は再挿入、それ以外では再挿入しない。
【疑問7】う〜ん・・・(^^;)。

さて、パンフレットの解答は?

【疑問1】詳しくはガイドラインをご参照。
予防の目的は、患者自身に降りかかる不利益と、家族の不安を解消することが基本。これらを考慮して処方を検討する;
①患者の不利益:後遺症が残る ・・・短いけいれん(単純型)では神経的後遺症は残らないとされ、何回起こしても問題ない(けいれんの際、周囲にぶつかる怪我を除く)。
②家族の不利益:不安、心配、パニック ・・・医療事情(医療機関が遠い)、家族の様子(強度の心配性)などの要素を考慮


【疑問2】「最終発作から1〜2年または4〜5歳まで」
学童期になっても予防投与が継続されているケースが散見されるが、好ましくない。


【疑問3】「発熱時の解熱剤使用が熱性けいれんを予防できるとするエビデンスはない」「熱性けいれんの誘発を心配して解熱剤の使用を控える必要もない」
・・・つまり、解熱剤使用は熱性けいれんの頻度・リスクに影響しないと明言された(画期的!)。

【疑問4】エビデンス的には「根拠は不明確」としながらも、「熱性けいれんの既往がある小児に対しては、発熱性疾患罹患中における鎮静性抗ヒスタミン薬の使用は推奨されない」。熱性けいれんと抗ヒスタミン薬との関連についての情報は、小児科以外では十分浸透していない可能性がある。耳鼻咽喉科や皮膚科で、熱性けいれんの既往がある小児に第1世代の抗ヒスタミン薬が処方されたら、熱性けいれんの既往を医師に伝えているか保護者に確認し、必要であれば薬剤師から医師に伝えるようにしたい。
・・・当地域の当番医では上記のような現象が散見されます、かつ近隣の皮膚科では抗ヒスタミン薬を3〜4種類併用する医師もいて困っています。患者さん、眠いだろうなあ。

【疑問5】短く終わる単純型では一般人口と変わらない。複雑型や家族歴などの危険因子がある場合はリスクが上がる。

【疑問6】ジアゼパム座薬は、挿入後15〜30分ほどで薬効成分が有効濃度域に達する。そのため、
・挿入直後〜15分の間に便と一緒に出てきた場合は、もう一度同じ座薬を入れるか、新しい座薬を入れる。
・挿入後15分以上経過して、座薬の塊が少し出てきても、半分以上が溶けているような状態であれば、ある程度吸収されたと判断できるので、座薬を入れ直す必要はない。
・挿入後30分以上経過していれば、薬はほとんど吸収されているので、入れ直す必要はない。
※ 挿入後30秒〜1分程度肛門をティッシュなどで軽く押さえると、座薬が出てくるのを妨げる。


【疑問7】携帯させる必要がある。
ダイアップ坐剤の融点は50〜55℃。夏の外出時でも、日陰においておけば溶けることはない。これは、アンヒバ座剤(アセトアミノフェン)が34〜39℃で溶けるのと対照的。

・・・園の行事などでは医師も関与しての十分な根回しが必要ですね。
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