小児アレルギー科医の視線

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“軽症新型コロナ患者”の治療薬、開発の現状(2021年12月)

2022年01月23日 07時52分18秒 | 新型コロナ
新型コロナウイルスに対する薬の開発が進み、
次々に新しい薬剤が登場してきました。

しかし今までは、点滴が必要な薬がメイン、
2021年末になり、ようやく内服薬・経口薬が使えるようになりました。

一方で、過去に開発された薬の中には、
変異株に対応できず消えている薬も存在します。

ですから、治療薬に関しては、常に情報をアップデートする姿勢が必要です。
これはワクチンについても同様ですね。

このブログでも、経口抗ウイルス薬である「モルヌピラビル(ラゲブリオ®)」「パクスロビド」を紹介してきました。
2021年末に倉原優Dr.が抗新型コロナ薬全般を分かり易く説明している記事を紹介します。

オミクロン株によって新型コロナ軽症者の治療はどう変わった? 新型コロナ治療薬まとめ
倉原優:呼吸器内科医(2021/12/26)より一部抜粋;

◇ オミクロン株と新型コロナ治療薬

・・・現在の新型コロナ治療薬は図1のようになります。数が多くなってきたため、詳しい使い分けなどは割愛しますが、大事なのは「いろいろな治療薬がある」ということです。


 表1. 新型コロナ治療薬のメカニズム


 図1. 2021年12月26日時点の新型コロナ治療薬まとめ

 それぞれ作用メカニズムや役割が異なることから、患者さんの病態に応じて使い分けています(表1)。
 有効性が確認された治療・確認されなかった治療が吟味・淘汰され、国内外のガイドラインが改訂されています(3-5)。その中でも、エビデンスが日々動いている、軽症例に対する治療薬をみてみましょう。 

◇ オミクロン株に抗体カクテル療法の使用は推奨されない

 抗体療法は、外来や入院軽症例で用いる注射剤です。
 図1および図2にあるように、オミクロン株の治療で重要なポイントは、抗体カクテル療法カシリビマブ/イムデビマブ(ロナプリーブ®)の効果が激減するということです。厚労省の通達においても「患者の感染しているウイルス株がオミクロン株であることが明らかである場合、ロナプリーブを投与することは推奨されない」と記載されています(6)。
 反面、もう1つの抗体療法であるソトロビマブ(ゼビュディ®)は有効と考えられます。これはスパイクタンパクの基礎的な部分に作用し、効果の減弱が起こりにくいためです。アメリカ国立衛生研究所(NIH)のガイドラインにおいても、オミクロン株に対するソトロビマブが積極的に推奨されています(4)。
 さて、抗体カクテル療法カシリビマブ/イムデビマブは、往診だけでなく濃厚接触者や無症状感染者に対しての予防投与も可能となっていました。しかし、今後オミクロン株が優勢株となった場合、抗体カクテル療法を使う頻度が激減します。ソトロビマブは予防投与が認められていないため、濃厚接触者や無症状感染者に対して予防投与を行う戦略自体は一旦白紙になるかもしれません(※)。

※アストラゼネカ社のチキサゲビマブ/シルガビマブ(エブシェルド®、日本未承認)の予防投与はオミクロン株に対しても有効とされています(7)。

◇ オミクロン株に軽症者向け経口抗ウイルス薬は有効

 2021年12月24日、経口抗ウイルス薬であるモルヌピラビル(ラゲブリオ®)が特例承認されました。また、ファイザー社のニルマトレルビル/リトナビル(パクスロビド®)の効果も期待されており、国内でもいずれ承認申請される見込みです。
 新型コロナウイルスのスパイクタンパクの変異とは関係のない作用機序であり、いずれの薬剤もオミクロン株に有効と考えられます(表2)。


 表2. 新型コロナ軽症者向けの経口抗ウイルス薬(筆者作成)

 アメリカ感染症学会(IDSA)のガイドラインでは、オミクロン株の軽症者に対してニルマトレルビル/リトナビルの使用が推奨されています(4)。
 いずれの経口抗ウイルス薬も、高齢、肥満、基礎疾患があるといった重症化リスクのある人が対象となっています。発症から5日以内に内服する必要があります。自宅療養者では、診断した医療機関が特定の薬局へ処方箋を送付し、薬局から患者さんの自宅などへ配送する計画になっています。

◇ 使い慣れた点滴抗ウイルス薬が軽症例に有効

 レムデシビル(ベクルリー®)は、中等症以上の患者さんに点滴で用います。コロナ病棟ではかれこれ1年以上活躍している、馴染みの抗ウイルス薬です。もともと海外で作られたもので、発売当初オシャンティーな英語のパッケージで病棟にやってきました。
 最近、重症化リスクがある外来患者さんに、発症7日以内にレムデシビルを3日間点滴すると、入院あるいは死亡のリスクがプラセボより87%減少したという研究結果が報告されました(8)。
 上述の経口抗ウイルス薬が潤沢ならば敢えてレムデシビルを外来や軽症例で用いる必要はないかもしれませんが、使い慣れた薬剤であることはメリットと言えます。いずれ、軽症例に対するレムデシビルも適応になるかもしれません。

<参考>
(1) Sheikh A, et al. (査読前論文) 
(2) Wolter N, et al. medRxiv preprint doi: 10.1101/2021.12.21.21268116(査読前論文)
(8) Gottlieb RL, et al. N Engl J Med. 2021 Dec 22. doi: 10.1056/NEJMoa2116846

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