小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

「モンスターペイシェント対策ハンドブック」(阿南共栄病院編)

2012年09月01日 21時17分04秒 | 医療問題
副題「院内暴言・暴力は許さない!」
メタ・ブレーン社、2011年発行

近年話題になるモンスターペイシェント(略して’モンペ’)対策本です。
病院が編者になっているのは、必要に迫られて作成した院内マニュアルの出来がよかったので、周囲の声に押されて出版に至ったのでしょう。

現在の私は小児科開業医ですので、いわゆる’モンペ’に出会うことは少なくなりましたが、その昔、病院勤務時代の当直ではそのような患者さんの対応に追われたこともありました。

忘れもしない某総合病院の内科系当直でのエピソード。
・・・真夜中にやってきた中年男性が「○○が痛いからいつもの痛み止めを注射してくれ」とのたまいます。
カルテを見ると、連日同じ麻薬系鎮痛剤を注射しているのがわかりました。
後でわかったことですが、この患者さんは麻薬中毒だったのです。
それも堅気の人ではありませんでした。

ちょっとヘンな雰囲気を感じながらも事前情報がなかった私は、ふつうに診察して「鎮痛剤の注射は必要ありません」と判断したところ、彼は逆上し「ごちゃごちゃ言わずに注射すればいいんだよ!」と凄んできました。
驚きと恐怖が混じり合う精神状態の中で、青臭い面も合った私はなんやかや説明して説得し、結局注射せずにその場を収めた記憶があります。
看護師スタッフは事前に教えてくれればいいのに・・・意地悪されたのかな。

さて、話を本に戻します。

トラブル発生時の基本は「組織で対応して個人を守る」こと。
なるほど(あれ、私の経験と真逆だ)。

でも、その前に大切なのはモンペをつくらないこと。
はじめからお金をむしり取ろうとするプロは別にして、患者さんとの信頼関係がふだんからしっかりしていれば、多少の行き違いがあってもトラブルになる可能性は低いものです。
これも頷けます。
まあ、病気の種類によっては話が通じない患者さんも存在するのは仕方ありません。

それから、ICレコーダーを有効に使う方法も記されていました。
隠れて録音するのではなく、堂々と「十分お話を聞かせていただきます。後で言った言わないの問答になっても困りますので、会話を録音します。」と宣言してレコーダーを机の上に置くというのです。

目から鱗が落ちました。
確かに、それだけで興奮したモンペを落ち着かせる抑止力になりそうです。

また、いざという時に警察に連絡してもすぐ駆けつけてくれるとは限らないので、病院職員として警察OBを雇う病院も出てきたそうです。

日本社会は寛容性を失い、こんな世知辛い世の中になってしまいました。

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