小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

学校におけるマスクの効果2023

2023年06月05日 06時42分59秒 | 新型コロナ
2023年5月8日に新型コロナの法律上の扱いが2類相当から5類相当へ変更され、
現場では感染対策が緩みました。
それとともに、季節外れのインフルエンザが日本各地で流行しています。
この現象は、
「いかにマスクが有効であったか」
を如実に表しています。

しかし現実社会では、
マスク着用によるメリットとデメリットをはかりにかけて、
どちらを選択するかを判断することになり、
日本ではマスクをして感染症流行を抑えるよりも、
経済活動やヒトの表情が見えた方が子供の成長にとってベター、
ということになったのでしょう。

新型コロナの厄介なところは、
年齢層や持病により重症化リスクが大きく異なることです。
ですから一律に「マスク着用」あるいは「マスクなし」という指示は、
どちらかからクレームが発生することが想定されます。

医療者から見ると当たり前のことですが、
学校におけるマスク着用が有効であったという最近の報告を紹介します。


学校でのコロナ感染対策、マスクの効果が明らかに
ケアネット:2023/05/31)より一部抜粋; 
…スイスの中学校で実施された研究において、マスク着用の義務化はウイルス感染に重要な役割を果たすとされるエアロゾルの濃度を低下させ、SARS-CoV-2感染リスクを大幅に低減させたことが報告された。本研究結果は、スイス・ベルン大学のNicolas Banholzer氏らによってPLOS Medicine誌2023年5月18日号で報告された。
 研究グループは、2022年1~3月(オミクロン株の流行期)において、スイスの2つの中学校(90人、1教室あたり平均18人)を対象として、マスク着用や空気清浄機の有無によるSARS-CoV-2感染リスクの変化を検討した。
 7週間の期間(マスク着用義務化[学校A:2週間、学校B:4週間]、非介入[それぞれ3週間、1週間]、空気清浄機使用[いずれも2週間])において、疫学データ(新型コロナウイルス感染症の症例)、環境データ(CO2濃度、エアロゾル濃度など)、分子データ(唾液とバイオエアロゾル[ウイルスなどの生物に由来する粒子])が収集された。
【結果】
(SARS-CoV-2が含まれた唾液サンプルの割合)
非介入時11.5%、マスク着用義務化時5.7%、空気清浄機使用時7.7%
(SARS-CoV-2が含まれたバイオエアロゾルサンプルの割合)
非介入時8.1%、マスク着用義務化時7.1%、空気清浄機使用時5.0%
(SARS-CoV-2感染リスク)
非介入時と比べてマスク着用義務化時で低かった(調整オッズ比[aOR]:0.19、95%信用区間[CrI]:0.09~0.38)。空気清浄機使用時は非介入時と同様であった(aOR:1.00、95%CrI:0.15~6.51)。
・試験期間中、マスク着用義務化によりSARS-CoV-2感染が9.98件(95%CrI:2.16~19.00)回避されたと推定された。

<原著論文>

スイスの小学校では一クラス18人という数字にまず、驚きました。
それはさておき、
「マスク着用義務化により感染リスクが81%減少した」
という結果にうなづいた次第です。

私は医療者で日々発熱患者に接触し、
かつ持病もちでハイリスクなので、
診療中のN95マスク着用は続ける予定です。


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