小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

新型コロナに抗体医薬「ロナプリーブ」が登場

2021年08月09日 06時42分55秒 | 予防接種
昨今、「新型コロナ対策はワクチン接種!」一色ですが、
ウイルスに対抗する手段には薬もあることを忘れがち。

そこに新薬が登場しました。
今までの新型コロナウイルス治療薬は、他の病気に使われてきた既存薬を転用する形で認可されてきました。

今回は、新型コロナをターゲットに開発された新しい薬です。
その名は「ロナプリーブ」。
新型コロナのスパイク蛋白に対する中和抗体を化学的に合成し、
1種類ではなく2種類を混合させた合剤仕様。
これは、一つの抗体の効きが今ひとつでも、
もう一つが効けばOK、という保険的考え方です。

“抗体”と聞くとワクチンを思い出しますよね。
そこに感染症対策の基本が隠れています。

新型コロナウイルスに対抗する手段として、
・ワクチンはスパイク蛋白の設計図(mRNA)を注射して、人の細胞にスパイク蛋白を作らせ、それに対する中和抗体産生を促す
・抗体医薬(ロナプリーブ)はあらかじめ作成した中和抗体を注射する
と、ワクチンの行程を端折った治療法です。
それと、ワクチンにより作られた中和抗体は長期間産生されますが、
薬として点滴投与した場合は速やかに体外へ排出されてなくなる、という違いもあります。

ロナプリーブの投与対象は「重症化リスク因子を有し、酸素投与を要しない患者」で、つまり「(軽症〜)中等症」。
これは従来認可された薬が「重症」用であったため、待望されていた薬でもあります。
しかし、現在の治療ガイドラインでは「重症化リスク因子を有する者は入院」となっているため、結果的に「入院患者用」であり「外来でちょっと点滴して帰宅」という薬ではありません。

臨床データによると、
・重症化(入院・死亡)阻止率:約70%
・副作用発現率:0.2%(注射から24時間以内に起こる発熱、悪寒、吐き気、めまい)
・家族内感染発生率:81%減少
とのことで大いに期待できる数字です。

もう一つ問題があります。
医療従事者の間では、いわゆる“抗体医薬”は高価で有名です。
1回分が数万円〜10万円が相場。
現在、新型コロナ関連ではワクチンも治療も自己負担はありません。
日本国民全員を対象と仮定して経費を試算すると・・・
「ワクチンならば年間4400億円、ロナプリープならば年間53兆円の財源が必要」
となるそうです。
53兆円と言われてもピンときませんが、日本の国家予算の半分だとか。
なので、この薬に頼ると日本は経済的に破綻してしまいます。

昼の番組で、
「ロナプリーブをすべての医療機関で手軽に使用できるようにすべきだ」
と豪語しているコメンテーター、
日本が沈没してしまいますので、安易に意見するのはやめていただきたい。

やはり軽症者が使える内服薬が欲しい・・・
イベルメクチンに期待したいところ。

ようやく登場した新型コロナ治療薬、
ワクチン一辺倒の対策に変化をもたらすでしょうか。


 中外製薬ロナプリーブ「コロナ第4の薬」の正体 抗体カクテル療法とは何? 有効性、コストは?

新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)に対するワクチン接種の進行状況が注目を浴びている中で、これまで思ったように進展してこなかったのが治療薬の開発である。そうした中で厚生労働省は7月19日、中外製薬の新型コロナに対する抗体カクテル療法「ロナプリーブ」を特例承認した。
この薬はすでにアメリカで2020年11月21日に緊急使用許可を取得し、同様の許可はドイツやフランスでも取得しているが、これらはいずれも正式承認前の緊急避難的措置。いわば「仮免許承認」とも言える。正式承認されたのは日本が世界初。新型コロナに対する治療として日本国内で適応を持つ薬剤は、これでようやく4種類目だが、既存の3種類がいずれも中等症以上の重症度で使用されるのに対し、ロナプリーブは条件次第で軽症に使える初の薬でもある。
また、既存の3種類の治療薬である抗ウイルス薬のレムデシビル、ステロイド薬のデキサメタゾン、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬のバリシチニブはいずれも他の病気の治療を目的に開発されたものの中から、新型コロナに対しても有効という臨床試験データが得られたために効能が追加された通称「ドラッグ・リポジショニング」で生み出されたもの。つまり最初から新型コロナの治療を目的として開発された薬剤としては国内初承認でもあり、「正真正銘の新型コロナ治療薬」とも言える。

◆ロナプリーブってどんな薬?
今回承認されたロナプリーブは単一成分の薬ではない。医薬品として使用するため人工的に製造した抗体は別名「抗体医薬品」と呼ばれるが、ロナプリーブはカシリビマブイムデビマブと呼ばれる2種類の抗体医薬品が含まれる注射薬である。複数の抗体医薬品で行う治療であることから、酒やジュースなど複数の飲料を混ぜて作られるカクテルになぞらえて、この薬を使う治療法は「抗体カクテル療法」と呼ばれる。
そもそもこの抗体はアメリカの製薬企業リジェネロン・ファーマシューティカルズ社が最初に作り出したもので、現在売上高で世界第1位の製薬企業であるスイス・ロシュ社が同社と提携して獲得。ロシュ社の子会社である中外製薬が日本国内での開発・販売ライセンスを取得していた。ちなみに中外製薬は1925年創業の日本の製薬企業だったが、2002年にロシュ社が過半数の株式を取得し、同社のグループ会社になっている。
・・・
どのような患者に使えるか?
さて実際、今回の特例承認でどのような患者に使えるかだが、添付文書では新型コロナウイルス感染症で「重症化リスク因子を有し、酸素投与を要しない患者」と定めている。
まず「酸素投与を要しない」とは、ロナプリーブの臨床試験の患者選択基準に基づくと酸素飽和度(SpO2)が93%以上ということになる。
・・・
厚生労働省が発刊している「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き」では、新型コロナの重症度を軽症、中等症Ⅰ、中等症Ⅱ、重症の4段階に定め、酸素飽和度93%以上は軽症から中等症Ⅰに当たる。ちなみに軽症とは肺炎は認められず、呼吸器症状も全くないあるいは咳だけ、中等症Ⅰは肺炎・呼吸困難はあるものの呼吸不全(呼吸がうまくできずに他の臓器の機能にも影響が及ぶ状態)には至っていない状態を指す。
もう1つの投与基準である「重症化リスク因子」だが、これも臨床試験での患者選択基準に従うと以下のような因子が指摘されている。
・50歳以上
・肥満(BMI 30kg/m2以上)
・心血管疾患(高血圧を含む)
・慢性肺疾患(喘息を含む)
・1型または2型糖尿病
・慢性腎障害(透析患者を含む)
・慢性肝疾患
・免疫抑制状態(例:悪性腫瘍治療、骨髄または臓器移植、免疫不全、コントロール不良のHIV、AIDS、鎌状赤血球貧血、サラセミア、免疫抑制剤の長期投与)

ちなみに「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き」で記載のある重症化リスク因子には上記の臨床試験での基準に加え、「妊娠後期」の表記がある。通常、臨床試験で妊婦が対象者になることはなく、添付文書でも生殖への影響を調べる「生殖発生毒性試験」は行っていないと明記され、「妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること」と記載されている。
いずれにせよロナプリーブではこれら2つの基準を満さねばならず、新型コロナに感染したから誰でも投与を受けられるわけではない
また、この薬は通常の薬と違い、医療機関が医薬品卸に直接発注して購入することはできない。当面は世界的にも供給量が限られることもあり、国内では中外製薬との契約に基づき全量を政府が買い上げ、必要とする医療機関の求めに応じて国が中外製薬を通じて配分する。
さらに前述の「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き」では、重症化リスクのある患者は入院治療を要すると定めている。このため厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部が発出したロナプリーブに関する事務連絡通知では、供給する医療機関は、こうした患者の入院を受け入れている医療機関に限定している。感染者急増でベッドの空きがないため、重症化リスクがありながら入院ができないなどの特殊なケースなどを除けば、当面はホテルあるいは自宅での療養者は投与対象にはならない。
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