徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

風疹対策で明暗〜オーストラリアと日本〜

2018年11月04日 13時09分14秒 | 小児科診療
 風疹対策でモタモタしている日本は不名誉にも、米国CDCから「妊婦は渡航に注意」と指摘されてしまいました。
 その昔、日本は“麻疹輸出国”と米国から非難されたことを思い出しますね。

 一方、諸外国では堅実にワクチン接種が進み、今回オーストラリアで「風疹根絶」が達成されたそうです(米国では既に達成済み)。

 麻疹輸出国を非難されたことに反応し、MRワクチン2回接種を導入して麻疹を根絶した日本ですが、風疹対策では未だに“モタモタ”しています。
 理由を教えて欲しいものです。

■ オーストラリア、風疹根絶を宣言 米は日本への渡航自粛を勧告
2018.11.01:CNN
 世界保健機関(WHO)は10月31日、オートラリアで風疹が根絶されたと発表した。一方、米疾病対策センター(CDC)は日本での風疹の流行を受け、日本への渡航に関する警戒情報を出している。
 風疹は米大陸では既に根絶されており、オーストラリアでの根絶について、同国のハント保健相は「公衆衛生上、極めて重要な功績」と位置付ける。
 風疹は感染性の強い疾患だが、ワクチン接種で予防できる。妊婦が感染すると、障害を持つ子どもが生まれたり、流産したりする恐れもある。
 CDCは、妊婦や予防接種を受けていない人などに対し、風疹が流行している間は日本への渡航を控えるよう呼びかけている。
 WHOによると、アフリカや東南アジアではまだワクチンの接種率が低く、風疹の問題が続いている。世界194カ国中152カ国が風疹の予防接種を国の制度に取り入れており、症例数は2000年~2016年にかけて97%減少した。
 オーストラリアでは5歳児の予防接種率が全土で94%を超え、過去最高を達成しているという。
 感染者数は最も多かった1958年で約5000人、1990年代でも4000人に上っていた。ハント保健相は「予防接種は命を救い、命を守る。健全な社会の一環として欠かせない」と強調している。
 WHOでは2020年までにはしかと風疹の根絶を目指す目標を掲げている。


 もう一つ記事を紹介します。
 CDCの動きについてはこちらの方が詳しいですね。具体的には、
「予防接種を受けていない妊婦や、以前に風疹に感染した明確な記録のない妊婦は、感染が拡大している間は日本への渡航を自粛するよう勧告」
 です。

■ 日本で風疹急増 アメリカの CDC(疾病対策センター)が旅行前の予防接種を勧告
2018年10月23日:JUNGLE CITY.COM
 米国の CDC(疾病対策センター)は22日、日本で風疹(Rubella)の感染が広がっていることを受け、旅行前に MMR(measles(麻疹)、mumps(流行性耳下腺炎/おたふく風邪)、rubella(風疹)の三種の生ワクチンが混合されたワクチン)を接種しておくよう勧告しました。
※ 「Rubella in Japan」(CDC)
 CDC によると、風疹の感染ケースの大半は関東地域(東京、千葉、神奈川、埼玉)で報告されています。
 特に、妊娠中に風疹に感染した場合、流産、死産、胎児に先天性風疹症候群 (CRS)と総称される重度の先天異常を引き起こすことがあるため、予防接種を受けていない妊婦や、以前に風疹に感染した明確な記録のない妊婦は、感染が拡大している間は日本への渡航を自粛するよう勧告(Alert – Level 2, Practice Enhanced Precautions)しました。
 日本の国立感染研究所の公式サイトで「風疹急増に関する緊急情報」を確認できます。特に、「妊娠中は風疹含有ワクチンの接種は受けられず、受けた後は2ヶ月間妊娠を避ける必要があることから、女性は妊娠前に2回の風疹含有ワクチンを受けておくこと、妊婦の周囲の者に対するワクチン接種を行うことが重要である」とされていますので、妊娠を試みている方もご一読ください。


<参考>
■ 2020年度の風しん排除に向けて(IASR Vol. 37 p. 78-80: 2016年4月号


<追記>
同じ系統の記事が「livedoor news」にありました。
日本政府がやるべきことははっきりしているのに、相変わらず腰が重い・・・いつになったら動き出すのでしょうか?

■ 「米、風疹激増の日本へ妊婦の渡航自粛を要請。渡航警戒レベルをエボラ出血熱と同等に」より抜粋
2018.11.6:livedoor NEWS
 国立感染症研究所の発表によれば、2018年に入ってからの感染者数が1486人にのぼり、すでに2017年の15倍以上になっている。10月21日までの1週間で風疹に感染した人は、首都圏を中心に174人。
 感染者が多いのは30~50歳、とりわけ男性が多い。風疹はくしゃみや咳などのしぶきでうつる。感染力はインフルエンザの比ではないほど強い。風疹はウイルス性で潜伏期間は2~3週間。発熱や発疹、リンパ節の腫れが主な症状として出る。

◆アメリカではエボラ出血熱と同じ警告レベル、深刻なワクチン不足
 米CDC(疾病対策センター)は日本の風疹流行を「レベル2」にランクづけした。3段階の警告レベルのうち、2番目の重要度のもので、これはエボラ出血熱と同じ警告レベルだという。「予防接種や過去の感染歴がない妊婦は日本に渡航しないよう」という自粛勧告まで出している。日本では危機意識があまり高くないが、米国政府はかなり深刻な状況とみているようだ。
 これらの事態を受けて、東京都は10月26日に、いままで妊娠を希望する19歳以上の女性に限定していた抗体検査や予防接種への補助を、妊婦や妊娠を希望する女性の同居者にも広げると発表した。
 ただ、都道府県や厚生労働省はワクチン接種を勧めているが、肝心のワクチン自体が深刻な品不足になっている。北海道在住の20代男性は病院にワクチン接種をしに行ったら、「混合ワクチンが不足していてありません。いつ入荷する見込みかも分からない」と言われたという。
 北海道だけではない。感染者の多い東京の医療機関でも、ワクチン不足が深刻化している。東京都がワクチン接種を勧めてきたのに、肝心のワクチンが品薄なのだ。「しばらく接種を見合わせる」という医療機関が続出している。これでは、感染拡大が止められない。
 東京都の対応は後手後手に回っている。ある医療関係者は「まずはメーカーにワクチンの増産を指導すべきだったのではないか。ワクチン増産なしに接種だけ推奨すれば、品薄になるのはわかりきったことではないか」との恨み節が聞こえてくる。
 国や都の無策に業を煮やした医療機関にはMMR(麻疹、おたふくかぜ、風疹)ワクチンを輸入して希望者に接種する医療機関も出てきた。
 筆者は10月26日に風疹・麻疹の混合ワクチンを接種した。税込み8640円。アメリカ政府が妊婦の日本渡航自粛を呼びかける深刻な事態なので、早期にワクチンを接種することが肝要だ。


 下線部のことは私も少し前に書きました
 医療現場の実感ですね。
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