西尾治子 のブログ Blog Haruko Nishio:ジョルジュ・サンド George Sand

日本G・サンド研究会・仏文学/女性文学/ジェンダー研究
本ブログ記事の無断転載および無断引用をお断りします。
 

講演会の報告

2014年06月10日 | サンド研究
マルティーヌ・リード講演会の報告が日仏女性研究学会の情報ファイル2004年最新号に掲載されました。

マルティーヌ・リード講演会報告

 本学会の研究グループ「女性作家を読む会」は、去る5月23日(金)恵比寿日仏会館にてマルティーヌ・リード講演会「19世紀に女性が小説を書くこと」を開催いたしました。
 女性作家たちがいかに大文字のフランス文学史(ギュスターヴ・ランソン)に不当に扱われてきたか、それはなぜか、女性作家を表す6つもの呼称は何を意味したのか、偏見の中で書き続けたG.サンドやジャンリス夫人、ラシルド、M.デレム、M.V.ヴァルモール、A.レオ等にも言及され、今後なすべき事は何かといった課題に至るまで、リード先生は歴史的データや数値を駆使しつつ、明快かつ雄弁に説得力に富む論を展開され、満員の会場を魅了しました。講演に続くおよそ30分余の質疑応答では、会員の村田京子さんが女性作家の呼称に関しフランス語で専門的なコメントをして下さったほか、一般参加者の方々から多様なご質問やご感想を頂きましたが、活発な意見交換を通し女性作家に関する様々な盲点が明らかにされたことは、今後の研究推進の上で貴重な知見となりました。
 リードさんが講演の中でGeneviève Fraisseの著作に言及しつつ強調しておられたことは、女性たちの政治活動が禁じられた革命後の1793年以降、「市民」社会は男性性の価値を高め、男を公的な領域に女を私的な領域にと両性を分断し明確な格付けをおこなってしまったという事実でした。現在、政治分野における日本女性の地位は世界的に大きな遅れをとっている訳ですが、リード先生の講演がその意味で刺激的なものであり、日頃こうした問題を考える機会に恵まれない若い世代の女子学生や男性参加者(中高年層が中心の予想を上回る参加者数でした)の方々の意識に一石を投じる良い機会になったのであれば幸いです。

 逐次通訳は吉川佳英子さん、司会は西尾が担当いたしました。講演内容を山口順子さんがアップして下さっていますので,次の学会サイトをご参照下さい。

  https://sites.google.com/site/cdfjfemmes/news 

 参加者は総数120名余。なかでも60名近い女子学生の参加があったのは、このような講演会では非常に珍しく画期的なことだったのではないかと思われます。彼女たちは初めての恵比寿日仏会館での経験に興奮気味のようでした。「海外の翻訳文学が男性作家のものばかりだということが思い起こされた」「まだ発掘されていない女性作家についての研究が進められ良い発見があるといいなと思った」「知られざる女性作家についてもっと知りたくなった」「ネイティヴの美しいフランス語で19世紀女性作家の苦難や時代背景を詳しく聴けて貴重な体験となった」「リードさんの生のフランス語の勢いに圧倒された」「質疑応答でいろいろな人の話が聞けたのがとても勉強になった」「フランス語をもっと勉強したくなった」等の感想が講演後の回収アンケート70通の中に記されていました。
 リード先生は日本の滞在に非常に満足されご帰国されました。目下、リール第三大学で学生の論文の採点の山に追われているそうですが、本学会の皆様に何卒よろしくお伝え下さいとのことです。
 本講演が当初の予想を超える多くの参加者に恵まれ盛会だったのは、一重にご協力ご参加下さいました皆様のお陰です。企画者として改めて感謝し深く御礼申し上げます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする