櫻井郁也ダンスブログ Dance and Art by Sakurai Ikuya/CROSS SECTION

◉新作ダンス公演2024年7/13〜14 ◉コンテンポラリーダンス、舞踏、オイリュトミー

「WTC9/11」:スティーヴ・ライヒの新作

2011-09-15 | アート・音楽・その他
素晴らしい音楽に出会いました。
スティーヴ・ライヒの新作「WTC 9.11」。

まさにあの日、世界初演が放送されたのですが、これを聴けたのはラッキー。

9.11事件の体験を語る人々の言葉、録音された2つの弦楽四重奏、そして生演奏の弦楽四重奏。これらがライブオペレーションによって溶け合い、一つの音楽が成立してゆく、という作品。

悲しみのコトバが、ひとつひとつ噛み締めるように、静かに繰り返されながら、音に昇華され、溶けあい、響きとなってゆく。

recite、詠唱すること。
何度も、何度も、繰り返しつづける響き。

繰り返し響き重なりながら、
悲しみが星の光のように
聴く者ひとりひとりの心に染みて、固い何かをゆっくりと溶かし始める。

WTC world trade centor
WTC world to coming

現在から予感へ、
痛みから希望へ、
ああ音楽とは、歌とは、こんなふうに生まれるんだ。と、感嘆。

インタビューで作曲家のライヒは、ピカソのゲルニカに思いを重ねていました。
芸術が世界を救う、という考えは立派だが完全な間違い。実際、絵が爆撃を止めることは出来なかったが、人々の拠り所となっているのは確かだ、そんな仕事をこそ、私も引き継いでゆきたい。そんな意を語るライヒ氏の声は淡々と静か。

演奏したのは、クロノスカルテット。
精妙そのもの。生身の人の声に限りなく迫り、楽器がそこにあることさえ忘れさせられます。その有機的なボーイングの美しさはダンス。そこから生まれる、息をのむようなピアニシモは衝撃的でした。ひたすら練習しつづける日々の、量と質の織物が、音となって・・・。
心こめたパフォーマンスとはこういうことなんだ、と、襟を正す思い。

聴き終わった瞬間、じっと眼を閉じました。
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