櫻井郁也ダンスブログ Dance and Art by Sakurai Ikuya/CROSS SECTION

◉新作ダンス公演2024年7/13〜14 ◉コンテンポラリーダンス、舞踏、オイリュトミー

中川幸夫さん、逝去

2012-04-13 | アート・音楽・その他
訃報をきいたのは数日前のこと、
サクラ満開、その景色は、この稀有な華道家の魂の微笑みと映りました。
旅立たれたのは、ちょうど僕がソロ公演をした3月30日の事だったそうです。

活け花というものに、胸をえぐられるほど揺さぶられた体験は、
この華道家と同じ時に生きることが出来た人間の幸運と思います。
ダンスと同じ、
その瞬間を共に生きる者だけにしか味わうことのできない芸術、活け花。
中川幸夫さんがいなければ、その凄みを知ることなしにすごしていたかもしれない。
まさに幸運でした。

偶然目にした一枚の写真、
柔らかな光を浴びて、白菜がトンと活けられていた。
息をのみました。
そして、中川幸夫、という名を目を皿にして探した思い出があります。

ラベンダーでできた山と川。
いまここにしかない、
なのに、僕ら生き物の原風景に限りなく迫りゆくような想像世界。
酔っぱらいそうな、香りの満ち溢れ。
銀座エルメスで、陶酔と打撃を同時に体験しました。
何年も前とは思えないのですが。

また、天空散華、と名付けられた試み、
いや、事件とよぶべきか。
小雨ふる空に飛来したヘリコプターから、大地に投下されたのは、100万のチューリップの花びら。
溜息と感涙をさそわれたのでした。
激しい風と降りしきる水滴のなかを、
落下しては大地に着地する数知れぬ赤色、黄色。
あの花嵐を受け止めたのはダンサーの故・大野一雄さんだった。

中川さんの手は、花に触れ、
触れられた花は色を放ち息づいていました。
まざまざと生きる命として、
同時に、
死を孕んで時を刻みゆく命として。

中川さんの活け花の前に身を置くことは、
身を置く己を見つめることでもありました。

中川さんの活けられた花は、いつもチャレンジであり、果敢な問いかけでありました。

何よりも元気をくれました。

元気、すなわち「気」の「元」、初源なる力です。

あらためて、敬意を表します。
花の季節のなかで。
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