Sweet Dadaism

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三の丸尚蔵館【花鳥-愛でる心、彩る技<若冲を中心に>】。-第三部-

2006-07-10 | 芸術礼賛
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三の丸尚蔵館【花鳥-愛でる心、彩る技<若冲を中心に>】。-第一部-
三の丸尚三館【花鳥-愛でる心、彩る枝<若冲を中心に>】。-第二部-

 
 今年の梅雨はどうにもぼんやりしている。
雨は降るし空もとろんとした鼠色の雲に覆われているというのに、梅雨独特の潔さというか、意地悪さというか、そういうものが感じられない。梅雨は私が舌打ちをしたくなるくらいに意地悪であって丁度よいのだ。
既に「動植綵絵」第三期の終了後になってからの記事更新は怠慢以外のなにものでもない。深謝しつつ、今回もさらっと流してゆこう。

第三期の展示はこちら。
「梅花小禽図」「秋塘群雀図」「紫陽花双鶏図」
「老松鸚鵡図」「芦鵞図」「蓮池遊魚図」

コメントを寄せるべき作品二点を絞るとともに、それぞれにキャッチコピーを付与してみる。


「蓮池遊魚図」:四次元遠近法による浮遊感

上の絵がそれである。画面の周囲を囲むかのように描かれる蓮を順に見て欲しい。
上中央の蓮の花は、その頭上から描かれている。直下する視線ベクトル。
左右隅の蓮の茎を、誰がこんな風に見たことがあろうか?水中と水面の境を無視してなお意図的に、真横に向かう視線ベクトル。
左下の蓮及び地面は、まるで自らの足元に目を向けるが如く。とても優しい、とても自然なる斜め下方への視線ベクトル。

蓮は描き表装のように魚のいる空間を取り囲み、その枠自体がメビウスのように不安定に傾き、それはきっと現実世界に存在してはいけない枠。
それらの蓮にくるりと周囲を囲まれた中を優雅に泳ぐ川魚。空の上を?水の中を?

それは写実ではないやもしれぬ。しかし、見るといい。こんなにも優雅に、水の重さも川の流れも知ったことかと泳ぐ魚の向こうに、我ら生物の棲まう地上の宇宙が透けて見えるはずだ。
我々は、自分の眼に見える範囲で、見えるだけの方向で、この世界の優雅さと複雑さ、美しさに満足してはいけない。それはなんと不完全なものかと。


「秋塘群雀図」:パターンの恐怖と無邪気な裏切り

右上方から左下方に向けて、粟の穂を目掛けて飛来する50羽前後の雀。同じ姿勢で、同じ間隔を保って、雁が空を渡るような優雅さの欠片もなく直線的に。
不定形な幾何学の模様を描くように整列した茶色い雀の規律、それはぴんと張り詰めた緊張と不安。その中にただ一羽紛れ込むアルビノ(白化)、そしてただ二羽だけがその整列と自らの位置を確認するかのように僅かに首を捻らせる。

障子に指で穴を開けるかのように、ぎりぎりの緊張につと緩みを加えるそれは若冲の親切か、それとも罠か。

翻って左下に目を向けると、緊張から解き放たれた雀たちが夢中になって粟の穂に纏わりついているさまが見られる。上述の、緊張と不安の中に開けられた障子穴とは全く異なる、緊張そのものの崩壊とそれによる拡散が見られる。それぞれの雀がまるで身勝手な調子で粟に纏わりつく光景は、緊張と不安に駆られた我々に非常なる安心と大いなる不本意とを同時に与え、詰めていたこちらの息をほぅと漏れさせる。

それは緊張の果ての、いとも鮮やかな裏切りにも似て。





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8 コメント

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 (ak96)
2006-07-16 00:06:32
TBありがとうございます。





P.S.藤田の少女を画像に入れてらっしゃいますね。
遅ればせながら (alice-room)
2006-07-16 02:19:06
ようやく若冲の絵を見てきました。実に、実に素敵ですね!! とっても満足です。最後にまとめて一気に全品公開とかあったら更に素敵なんですが・・・。

今まで観に行かないでいた怠惰な自分を責めたくなります。
Unknown (seedsbook)
2006-07-18 15:26:37
こんにちは。



7月8日からの展示ですね?

点滴打たれてヨロヨロしていたため、見に行けませんでした。

2つクリアしたのに、なんとも残念です。



次もはやく行かなきゃ (マユ)
2006-07-18 18:07:23
>ak96 さま



こちらこそ、ご訪問いただき誠に有難うございました。

フジタの少女は、「あたしの絵」です。

わたしがそうなりたいと願う、わたしが過去にも今にもきっと持ち得ない熱情や優しさや戸惑いや、透明感。そんな憧れの象徴なのです。





>alice-room さま



TBありがとうございました。

お返ししましたよ。

私もはやく4期に行かねばと逡巡しています。コンプリートしたいものです。こうなったら。



そうそう、若冲のことをすきになってくれて本当にありがとう。

若冲ご本人にとっては、私なんぞに礼を言われる筋合いなんてからきしないのだけれどもね(笑)





>seedsbook さま



あら残念。気候で身体をやられてしまったのでしょうか・・しこたま残念です。

因みに、これは7/8のひとつ前の会期のぶんです。



こうしてコメントを返す折に、貴女の残念そうな顔を思い浮かべることができるようになったことは、勝手だけれどわたしにとってとても嬉しいことだったりします(笑)
縁ですね (alice-room)
2006-07-21 00:18:22
何かのタイミングで、ふっと見る機会があり、それがすっごく気に入ってしまう。私の場合は、いつもそんな偶然ばかりです。いきあたりばったりの人生なもんで(苦笑)。



今回はたまたま見る機会があり、一度見たら大変好きになってしまい、マユさんや皆さんとのご縁もあって更に関心が増し、広がっていく・・・。嬉しい連鎖だと思っています。



マユさんには、クリヴェッリもそうでしたが、いろんな好奇心を広げる機会を何気に頂いている気がします。どうも有り難う♪ そしてこれからも、私の知らない(知っていても意識に入っていない)ことを気付かせてくださいませ(御辞儀)。
えにし。 (マユ)
2006-07-21 14:05:57
>alice-room さま



えにしというのは、不思議なものです。

偶然と片付けてしまえばそれまでで、場合によっては偶然とさえ思いもかけない単なる「通過する出来事のひとつ」に過ぎなかったりもする。

それをえにしにするのは、個々人の想いのありようですよね。



それらをしっかりと、時を逃さず捕まえることができるのは、alice-roomさまの能力であり、アンテナの高さであり、内省であり、感謝であると思います。

そしてそんなふうに「わたしの若冲」や「わたしのクリヴェッリ」を捕まえてくれたことを、とても嬉しく思うのです。



こちらこそ、ありがとう。

 (Tak)
2006-07-23 12:02:33
こんにちは。

TBありがとうございます。



お返事が大変遅くなってしまい申し訳ないです。

第三期も終了し現在四期が開催されていますね。

梅雨が今年は中々あけませんが

傘を手にしながら三の丸に通いたいと思います。
ようやく (マユ)
2006-07-28 12:12:38
>Tak さま



いつも愉しく読ませていただいております。

素敵な感性に惚れ惚れです。



ようやく第四期も行ってこれたのですが、Takさまのご感想はさすが、首をぶんぶん振って頷きながら読みました。

ここで書いてしまうと記事にできなくなってしまうので、また遠からず記事にしたいと思っています。



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