Sweet Dadaism

無意味で美しいものこそが、日々を彩る糧となる。

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ジョルジュ・ド・ラ・トゥール展

2005-03-13 | 芸術礼賛
 待ってました!ラトゥール展いよいよ幕開けである。
ラトゥールの絵画をWEB上でまとめてがばっとご覧になりたい方は、まずここでGeorges de LA TOURを検索してくるといいと思う。絵画好きの方には有名すぎるサイトだけれど、洋画家のちょっとした画像ならここでチェックすることができる、大変優れたサイトなのでお勧めしておく。

【Georges de La Tour (1593-1652)】
キーワード:フランス,バロック,古典主義,室内灯,夜の画家

フランス古典主義画家。生前には著名な画家であったが、死後長く忘れられ、1915年になってようやく再評価された。 カラヴァッジオの影響を受けたと考えられる光の取扱いを独自に解釈・発展させ、静謐かつドラマティックな聖なる空間の演出に長けた。当時は人気画家であり、「ラトゥール風」とは室内光を用いた夜の情景を指したとされ、流行にもなった。
数々の戦乱や災害にあったので、作品の多くが失われており、現存する真作は40点余りとされる。

上は今回の展覧会に出品されていた「ヴィオルを弾く男」の一枚。このヴィオルはハーディガーディという名でも知られる(私は後者の名前のほうが個人的に好みだ)。弦楽器なのだが、ハンドルと連動して回る丸い板と弦との摩擦で音を出す。数本の弦のうちバグパイプのように「音の変化しない弦」が2本あり、摩擦性の軽やかでない不協和音がどうにも切ない調べを奏でる。曲がどれだけアップテンポな長調であろうとも!そのせいか、当時は旅楽師や盲人、果ては堕落した生活の代名詞としても絵画の中に描かれることが多かった。
 
 因みに、この楽器の音色はCDで聞くことができる。現在は修理やメンテが大変な為に量産はされていない。私が持っているのは【by Patrick Bouffard, MUSIQUES POUR VIELLE A ROUE】。音色を確かめてみたいという方はどうぞ検索してみて下さい。一聴の価値はあるかもしれない。

ラトゥールは、このハーディガーディを奏でる男を題材に、何枚もの作品を生涯に渡って試している。そのうち私が最も強烈だと信じる一枚が、今回来ている。

暗い灰色か、もしくは汚れで黄ばんだ壁と、奥へ向かうに従って急激にせりあがる床との間に押し挟まれるかのように一人痩身の盲人が立っている。落ち窪んだ目と深く刻まれた顔の皺の全てを強烈な白日が暴きたて、そして本人のみがその陽光の強烈さを知らない。彼を暗闇に押し込めて無に帰そうとするかのように迫る壁と床、そして光は彼の力を徐々に奪い、足元はゆらりと風にしなる草のように揺らめく。揺らぐ足元には、おろおろと画面を見詰める我々を諦観の眼差しとも取れるまっすぐすぎる目つきで射抜く一匹の盲導犬。彼の犬が見詰めてきた盲人の人生の全てが、犬の真っ直ぐで僅かに露を帯びた瞳に集約されているようだ。可能な限りのものを映しこみ、吸い込み続ける意思を持った狂おしい程に痛い輝き。

それでも彼は歌を吟ずる。ただひとつ能動的な力を感じさせる、ヴィオルのハンドルをぎゅっと握る指先が彼の生命そのものだ!

 画家と我々の間に勝ち負けはない。
だけども、打ちのめされることはある。

見たくない。逃れられない。吸い寄せられる。泣きたくなる。
一度でも絵画に心臓を掴まれた者は、一生その馨しい呪いから解放されることがない。
 
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11 コメント

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Unknown (Tak)
2005-03-14 18:10:36
こんにちは、TBありがとうございました。



昨日2回目のラ・トゥール展行ってきました。

会期中は時間があればなるべく行きたいと思ってます。
ご訪問有難うございます。 (マユ)
2005-03-14 22:31:56
この展覧会は、確かに数度行ってもよいだけの価値があります!

されど都落ちしてしまった身としては都内に出るまでが一苦労で、

なかなか思うようにならんとです。
コメントありがとうございます (takeshi)
2005-03-16 22:20:33
TB,コメントありがとうございます。

絵画は全くの素人ですが、気が向くと上野の美術館に足を運んでいます。こちらにも時々お邪魔させていただき、勉強してみたいと思います。



ラ・トゥールの作品をトーンという視点で見てみたのですが、それとは別に描かれている人の表情がすごく印象に残っています。なんというかちょっとグロテスクとも言えるような老人やなんともいえない特徴のある女性の表情など。いろいろ楽しみ方のある展覧会ですね。
こちらこそ (マユ)
2005-03-16 23:01:27
写真に携わっているからこその視点、大変興味深く読ませて頂きました。

当方はかつてガチガチの美術史畑だったものですからw

どちらかというとちょっとグロかったりエグかったりする絵も好きだったりするので、そういう視点での見方に偏るきらいがありますが、できるだけ絵画は目の前にある物体と純粋に対峙できるよう心がけています。

もう一度行きたいなぁ・・・
TBありがとうございました (fiji)
2005-03-25 11:09:46
非常に参考になったのでTBさせていただきました。西武が駄目になって新表現主義とかの展覧会がまるでなくなってさびしいですね
Unknown (hokuto77)
2005-04-07 23:04:59
いろいろ参考になりました、ありがとうございました。



「ラトゥールが好きになってくれる人が増えるとなんだか少しだけ幸せなような寂しいような」、確かにそうですね…



また寄らせていただきますのでよろしくお願いします。
ラ・トゥール暖かい絵でしたね。 (Yo__oY)
2005-05-07 17:30:50
TBさせていただきました。

名前や代表作は既知でありましたが、こんなに深い作家だとは全く気が付きませんでした。

長く人類が守って行くべきものが表現されていて、いい展覧会でした。

また覗かせていただきます。
はじめまして (司馬 朔奏)
2005-05-16 12:19:21
トラックバック、させて頂きました。

実は、名前や作品について全くの無知だったのでが・・・

一度、行っただけで大のファンになってしまいました(笑)

暗い情景の中に存在する、温かさというものに惹かれたのでしょうか・・・



とても、情報量の多いサイトですね。また来ます。
Unknown (Unknown)
2005-05-16 22:42:37
>司馬 朔奏 さま



はじめまして。ご訪問ありがとうございます。

ラトゥールのファンがこうして増えてきていることを

BLOGのトラバの数から感じます。

またいつでもお運びくださいませ。
ようやく (lapis)
2005-05-24 23:08:12
ラ・トゥール展に行くことが出来ました。拙い感想を書きましたのでTBさせいただきます。

やはり、マユさんの「犬を連れたヴィエル弾き」の描写は素晴らしいですね!

作品に対する愛情の差でしょうか、気が抜けた物しか書けませんでした。(苦笑)

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