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装備調達は直接調達でなければならないか

2007年12月03日 13時59分44秒 | 防衛問題
今回の事件を受けて、調達方法の見直しが進められることとなった。

NIKKEI NET(日経ネット):政治ニュース-政策、国会など政治関連から行政ニュースまで

防衛省は防衛装備品を海外メーカーから輸入調達する部門を増強し、商社に依存しなくとも適正価格の見極めや輸入手続きなどができる体制づくりを進める方針だ。海外に駐在し、見積価格などを精査する「輸入調達専門官」の増員などを検討する。商社が介在する現在の仕組みのままでは、調達の明朗化は困難と判断した。

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問題となるのは、商社に依存することが悪いのではなく決定過程の問題なのであって、これは基本的には手続論なのではないか。調達専門官とかを増員したりせねばならないので、結局コストが増加してしまい、外部委託(=納入商社に任せる)よりも長期的にコストが増加することになってしまえば意味がないということである。

大まかに、主要装備品とその他で分けて考えた方がよいだろう。主要装備品は必ずしも「価格」が第一条件となってくるとは限らないからである。品質、すなわち要求される性能といった部分の比重が大きいと思うので、何が何でも低価格品じゃないとダメだ、みたいな話にはならないからである。これを踏まえて、考察してみたい。


1)総論

いつもの例で申し訳ないが、自分がビールを購入する時の例で考えてみることにする。
まず、自分が普段よく利用する量販店があるとして、そこでビールを売っているものとする。一番安いビールを求めて街中を彷徨い歩いたりするのは面倒だし、他の買い物ついでにビールを購入することが多いだろう。この時の価格が「街中で一番安いのか」と問われれば、それは判らないことも多い。一番低価格ではないこともあるだろうが、概ね「購入してもよい」価格となっているだろう。少なくとも、近所にあるコンビニとか、自販機に比べれば「安い」ということを知っている、という程度ではあるだろう。

ここで、自分は量販店がメーカーからいくらで仕入れているか、ということなど知ることはない。その必要性もあまりないと言えるだろう。少なくとも、量販店、コンビニ、自販機、酒屋、みたいな大体の価格帯の情報を知っていればよい、ということになる。メーカーの納入価を全て調べる必要などないのである。

メーカー → 中間業者 → 消費者 
という流れになっており、それぞれの段階で価格があるが、それらは違いがあるのである。中間業者のマージン率も判らないことが殆どであろう。ここからは、最初の段階の価格を「メーカー納入価」、最終段階の価格を「購入価」と呼ぶことにしよう。

今回の事件で問題となったのは、中間業者からの購入価が「吹っかけられた」ということであり、吹っかけられた価格で利益を得た中間業者が不正の原資として使っていた、ということになる。防衛省側が「正しく選べる」という体制になっているのであれば、中間業者を使っても使わなくてもどちらでもよく、中間業者を使った場合のコスト増加分と使わなかった場合の防衛省側のコスト増加分との比較の問題ということになる。なので、商社が介在していること自体が不正を生むということにはならない。得になる方を選べばよいだけである。ビールで言えば、メーカーが行っている直接通販を利用した方が安いのであれば(実際にはそんな制度はないと思うけど)、自分が発注とか価格調べの手間暇はかかるけど、そちらを利用すればよい、ということだ。


住宅購入のような場合でも、建設関連業者が全ての納入を直接行うわけではないことが多いだろう。建主は細かい見積書をもらっても、基礎工事代、電気工事代、水道工事代、みたいに複数業者との直接取引を行うことは少ないだろう。建設関連業者の数はかなり多くなってしまい、それぞれ個別に価格の比較などを行ったりするとコストが嵩むし、内容全部を専門的に判断できるとも言えないのである。なので、中間業者的に、設計士とかパッケージ的な業者などを通じて「1棟丸ごと」の価格や長期的ランニングコスト比較などを行って、購入を決定するだろう。個々のクロス代金が相場よりも高かったとか、サッシが割高だったとか、網戸とスイッチ基盤は吹っかけられたとか、そういうのを全部調べていたら、自分が全ての専門業者と同じ知識でないと無理なのだから。

なので、購入する側が「1棟丸ごと」の価格一覧表みたいに比較検討できる体制となっていればよく、商社利用はあってもなくてもどちらでもよいだろう。コストの少ない方を選べばよいだけである。全てのメーカー納入価を正確に調べることよりも、購入価を比較検討できるようになっていればよい、ということである。


2)主要装備調達に関して

先日触れたように、技術研究本部(技本)があるわけだから、専門的見地からの検討はなされるのであって、防衛装備においてはこうした専門性が優先されることは多いであろう。そこから本省の装備審査会議があるのであるから、基本原則としては、技本評価会議→装備審査会議、という決定過程を経ているはずであろう。

この手続を生かす意味では、正確な議事録を残すとともに、全ての資料を揃えて保管するべきである。後日検証できる体制としておく、ということである。また、予算の配分前に、こうした基本手続を踏むのが当然である。導入決定前に費用対効果の比較検討を綿密に行っておくべきである、ということだ。それがいい加減であるとアパッチ導入みたいに、無意味な出費が嵩むことになってしまうのだ。

また、主要装備については、要求性能が重視されることになるであろうから、必ずしも低価格品でなければならない、ということに拘る必要はない。効率よく調達できればいいだけであり、調達に関して不正な介入がないのであれば問題とはならない。

例えば自分でパソコンを組み立てて作る場合を考えてみよう(組み立てたことがないので全然判らず、超適当に)。
調達すべき部品は色々とあるし、性能に対する要求も多くあるであろう。
CPUは○○が王道だ、いや代替品の××製でもいける、ハイエンドマシンと同レベルでないと、普通に使うなら100ドルパソコンと同程度でもいい、ゲーム機だって性能いいよ、メモリは○○社製がいい、512MBじゃ話にならん1GBは必要だ、HDDは50GBもあれば十分使えるよ、いやHDDは250GBはあるべきだ、モニタは19インチじゃなきゃヤダ、CPUやメモリに高額品を使うならモニタは安くてもいいよ、最低2面は使わせろ、キーボードはやっぱり○○だよ、……等々、いろんなことがあるだろう。
でも重要なことは、(自分が)「使う場面を想定」して要求を出したり、自分の持ってるお金、つまり払える予算の大きさによって変わるし、優先事項も影響を受けるのである。必要となる性能は全員同じでなくても不思議ではないし、みんなに共通しているとは限らない、ということでもある。下手に自分で組み立てるよりも、始めからパッケージになってる出来合い品を求める方が楽になることだってあるだろう。

そういったことを導入前によく検討した上で、予算としていくべきであり、秘密事項なので言えないといった答えは明らかにおかしい話である。昔みたいに、「オレがF-22を何機持ってるか秘密だ」なんてことはないのである。普通に主要装備の情報公開は進んでおり、「ああ、アイツらあんなに買って増やしてんだな」みたいにお互い判っているのである。なので、迂闊には手出しできんな、みたいなことになるのである。どんだけ~、は関係ないけど、持ってる武器や量的なことが判らないのはテロの方々であって、主要国の装備というのは公開されている情報が昔に比べると多くなっているであろう。ましてや値段の話なんかは、隠してもしょうがないのである。

商社云々の問題以前に、調達過程が検証できるような体制をとっておけばよく、それは防衛省の内部的な話でもそうであるし、防衛委員会とか安全保障会議のような場において、防衛省外の人間の検証に耐えうるものになっていなければならないであろう。


3)主要装備以外について

どんなものがあるのか判らないが、食べ物とか下着の類まで色々とあるだろう。そういうものまで含めて調達業務の全てを防衛省内部でやらねばならないとすれば、膨大な作業となるので人員を大幅に増やさねばならないことになってしまう。これもあんまり効率的とも言えないであろう。ある程度一括して中間業者が請け負った方が安く済むことはあるだろう。

業者選定に関して不正があったりするのは防ぐのは難しい、ということがある。内部監査制度を整えて対応することも必要だろうと思うが、調達結果について情報公開するのが効果があると思うがいかがであろうか。

仮に、靴下を納入するとしよう。防衛省の内部で靴下のカタログを全部調べたりするのは大変だ。なので、面倒だからある程度の価格帯で靴下1万足でいくら、みたいに中間業者から購入するしかないだろう。安く納入できる中間業者から買えばよい、って話だ。中間業者は自分たちの努力で利益を出すのは構わないのではと思うが。業者Aが1足300円の購入価を提示したとしよう。この業者では1足100円のメーカー納入価で、差額200円分は業者Aの利益となる。他の全ての業者が300円以上の提示価格であるなら、自衛隊は300円で購入するのが得になるのであり、業者Aの利益率がどれ位とかは関係ない。問題となるのは、市販品を自衛隊が直接購入してくると200円でも普通に買えてしまう、みたいなことである。

主要装備ではないので、要求性能みたいなものは重視する必要がないことが多いであろう。使っていて、すぐにダメになるとか隊員たちから不評であるとか、そういうのはある程度は改善されるべきだが、同等品が普通に200円で買えるのに、「自衛隊特別価格」として中間業者が1000円で納入する、みたいなことがあると「官製価格ですね」とか「特定業者への利益移転と同じですね」みたいな話になるのである。一般人が普通に買えば500円するものを、自衛隊で大量購入するので300円で買いました、というようなことなら中間業者がいても誰も文句は出ないと思う。これを全部自前で調達、みたいなことになると、煩雑な作業が増えるだけで得にもならない。自衛隊内部で「300円で買える靴下」を自力で探し出してこなけりゃならない、ってことになってしまう。そうじゃなくて、全国で下着2万着購入するので、その分割安で納入できます、って業者がいるのであれば、そういうのを利用した方がいい、ということ。

こういうのを網羅的に監査するのも限界があると思うので、購入した情報を公開するのが一番なのですよ。普通の人たちには興味はないことが多いと思うけれども、中にはどうしても調べたい、という奇特な方々もおられるので、誰かが異常に気付いたりするものなのですよ。購入した商社とか業者を公開されても困る、とかあるのであれば、業者番号だけ載せておけば済むのでは。番号の同一性があればそれでよくて、番号ごとに納入額の実績を入れておけばいい。ヘンに癒着があると、同一の番号に限って妙に単価が高いとか、納入額が不自然とか、そういうことが出てくると思うので。

公開されると思えば業者も自衛隊も慎重にならざるを得ず、目立たない程度にしかできなくなるであろう。政治資金の公開情報で事務所費の不正計上がボロボロと出てきたのと似たようなものかな、と。



以上のことから、必ずしも全てを直接調達にするのがいいとも限らず、人員を増強しなければカバーできなくなって業務の効率が悪くなるのも問題である。手続的なことで回避できる部分や情報公開によって予防的効果を期待できるのであれば、そういった他の方法もよく検討してみるべきであろう。





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