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格差社会10

2007年07月20日 13時26分52秒 | 社会全般
えーと、今更感がありますけれども、簡単な整理というか、メモ程度に。

大石英司氏が日本の格差は結構あるんじゃないか、統計のマジックなんじゃないか、というような疑問を呈されておられたので。私の理解の範囲で書いてみたいと思います(間違いも含まれる可能性大ですので、専門書などでお確かめ下さいね)。


①ジニ係数について

これは諸説出尽くしていると思いますが、解釈といいますか、考え方としては大まかに定まってきています。

時々お世話になる図録さんのまとめが判りやすいです。

図録▽所得格差の長期推移及び先進国間国際比較


小泉政権末期から、野党が「格差だ、格差拡大だ」とか一部新聞などでも盛んに取り上げられていましたが、急にジニ係数の拡大が起こってきたわけではなさそう、ということかな。国際比較に用いるデータの種類によっては、割と格差の大きい国の方になってしまうこともありましたね。朝日新聞なんかは、そういうデータを知ると「格差拡大だ」とか得意気に報じていたし(笑)。でも、大きな要因としては高齢者世帯の増加などの変化によるものである、ということが大竹先生や他の方々によって説明されたりしました。だから、社会全体としては、他の先進国に比較して、「”ず抜けて”格差が大きい社会」というほどではないでしょう、ということは言えそうです。

他には、再分配後の格差、という論点もありますけれども、日本では再分配効果は十分とも言えないけれども、国際比較では「格差の少ない国」であるということでしょう。

格差社会9(ちょっと追加)

この記事中に取り上げた文献で「生涯賃金格差もそんなに大きくない」ということが出ていますが、注意すべきは若年層において格差が拡大しつつある懸念というものがあります。低所得層の賃金格差が拡大していくかもしれませんよ、ということも言われています。なので、大石氏の懸念しておられる、デジタル日雇いのような若年者たちの問題というのは現実に存在していると考えられるでしょう。


②貯蓄率

私も以前によく知らなかったのですが、紛らわしいのですよね、「貯蓄率」という言葉が(笑)。大雑把に言いますと、「貯蓄率」という用語自体は、個々の世帯や個人の持っている預貯金というような話ではなく、マクロ的な意味合いの方が強いのではないかと思います。厳密に言えば、全員の持っている預貯金を全部集めてきて合計すると一致することになりましょうが、そこまで正確な家計簿や帳簿類を誰も集められないし、皆持っていないから、ということになるかと思います。なので、主な統計数値から割り出すことしかできないでありましょう。

用いられるのは、「国民経済計算」「家計調査」「資金循環統計」といったものでありましょう。これらは、大雑把なお金の流れを掴めるので、そこから「マクロ経済」の数値として拾ってくるということになります。どの統計数値を用いるかで、貯蓄率は違いを生じます。

貯蓄率 - Wikipedia

経済主体を大きく3つ分けて、「家計」「企業」「一般政府」というような具合に分類すると、普通の家庭の人々の貯蓄率が計算できますね、ということになります。なので、個々の世帯や個人で持っているお金の比率がそれで推定できるとか一般化されるわけではありません。「貯蓄率5%」と言っても、その年に貯金する額が、年収600万円の人が30万円くらいで、年収300万円の人が15万円くらい、とか、持ってる資産の5%を貯金している、とか、そういうことにはなりません。これらを細かく知ることは中々難しいのです。

日銀の資金循環統計でも家計の金融資産が1500兆円を超えてた、とかニュースに出たりしますけれども、これも経済主体ごとの資金過不足などを見ることができます。たとえば、企業の資金超過(=貯蓄増、手元資金を多くしている、借金返済を進める、とか)が続いているということになれば、借入需要低迷ということが判りますし、家計の預貯金純増額が判りますから家計の懐具合を窺い知ることもできます。06年度は企業の設備投資増などもあって、数年ぶりに家計貯蓄が企業の資金超過を上回ったかもしれない、とか、何とかがあったやもしれません。そういう資金の動きを見るのにも役立ちます。

これらの統計は、あくまで「マクロ的に捉えたもの」ということは、頭の片隅の置いておくといいのではないかと思います。


③金融資産保有がゼロ

この問題を知るのは、結構難しいです。どの程度の人たちが「預貯金ゼロなのか」ということを正確に知ることが難しいのです。最もよく用いられる統計調査は、日銀の「金融広報中央委員会」の出している調査です。おおよそですが、約4千世帯程度の調査(対象はもっと1万世帯くらいだったと思いますが、回答率が低いので)となっており、経年的な変化を追うことが可能です。全国消費実態調査という総務省のデータもありますが、これは5年毎調査なので、タイムラグなどが出るので変化を捉え難いかもしれません。

これら統計調査から漏れている人たちというのはどうしても防げないし、家のない人たちは住所がないのでそもそも調査できない、ということもあるでしょう。漫画喫茶に調査票を持っていくわけにもいかないでしょうし(笑)。よく報道などで出る「金融資産のない世帯は20%以上」という調査結果は日銀のもので、単身世帯だけで見れば約3分の1が保有ゼロです。

他には、あまり信頼性の高い調査ではないものの、アンケートなどがあります。

結婚したい若者たちへ

この記事中に取り上げたユーキャンの調査では、20代、30代の独身者を対象としています。この中では、毎月自由になるお金が1万円以下という人が約5%、10万円以下の預貯金しかない人が約8%、ということで、預貯金を持たない若者というのは案外多くないのだな、という印象です。これはそういう立派な若者が多く回答しているから、ということもあるのかもしれませんけれども。かなり困っている若者は、こういう調査には現れてこないのでしょうか。

他の推定材料としては、消費者金融からの借入を行っている人たちは少なくなく、1000万人程度は存在していると思われます。こうした人々の大半が預貯金がゼロか、急な支出額を賄えない程度に少ない預貯金しか持たないということが予想されます。日銀の調査の如く2割以上の世帯で預貯金ゼロであると、仮に約7000万世帯あれば1400万世帯がゼロ世帯ということになります。この中に消費者金融の借り手の大部分が含まれる、ということになるでしょう(でも、1400万世帯で預貯金ゼロというのは、ちょっと多すぎなのではなかろうか、と思ったりしていますが、どうなんでしょうか)。

正確に判りませんが学生などを除くとして、25~35歳の人たちで約1400万人(各年齢の人口が平均で約140万人くらい?)、若者のゼロ世帯が半分だと約700万人くらいはいる、という感じでしょうか。貸金利用者の約7割が30代以下だろうと推定されますから、それと大体合っているのではないかと思いますが、実際どうなのかは判りません。ま、若者の貯蓄が少ないかマイナスというのは、ごく普通でありふれている、ということかと思います。


資産格差拡大の予兆

こういう調査報告もあるようですからね。


④まとめ

総合して言うと、何かの統計資料だけから全体像を掴むのは難しい面があり、問題点を取り出すのも結構難しい。でも日本は国際比較からすると、全体としての格差は依然として小さい方だろうと思われますが、若年層・低所得層の格差という懸念は残されている、ということはあるかもしれない。例の失われた10年(15年?)の頃の人たちは、特に著しい沈下となったので浮かび上がれないでいる可能性はあるかもな、と。

貯蓄率は高齢世帯が増加していく中では低下傾向であり、今後も家計貯蓄率は厳しい状況が予想されるでしょう。
持てる者と持たざる者では、高齢時点での生活にかなりの開きが出てくるかもしれない、ということなのでしょう。特に今の30歳前後の人たちが高齢になった時、どうなるのか、ということが心配です。




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