いい国作ろう!「怒りのぶろぐ」

オール人力狙撃システム試作機

医療過誤と責任・賠償問題についての私案~その6

2007年05月04日 03時02分05秒 | 法と医療
これまでの続きです。

医療過誤と責任・賠償問題についての私案~その1

医療過誤と責任・賠償問題についての私案~その2

医療過誤と責任・賠償問題についての私案~その3

医療過誤と責任・賠償問題についての私案~その4

医療過誤と責任・賠償問題についての私案~その5



5)医調委における審判

患者・遺族側、医療側、行政機関等から「調査申立」があれば調査開始となる。あらゆる証拠に基づいて、事実認定と過失責任の判断を行う。最終的には「事故調査報告書」として厚生労働大臣に提出することとする。この事故調査報告書の確定前には、当事者の意見を述べる機会を与えなければならないものとする。ここで双方から医調委に対して反論等があれば出されることになる。この意見を必ずしも参考としたり反映する必要はなく、医調委は独自の判断で「事故調査報告書」を出すものとする。この段階で、医調委の決定に従うとするならば、この結果に基づいてこれ以後の処分等を進めていく。

しかし、事故調査報告書の内容について同意できない、ということも考えられる。それは患者・遺族側かもしれないし、医療側かもしれないが、要するに「納得いかない」と考えるならば、審判請求を行う。これは独禁法の審判と同じようなものを考えている。呼び名とか制度として別な形が望ましければ、違う形式としてもよい。取りあえず今は審判の形を取るものとして話を進める。事故調の場合には、審判という手続はないので、事故原因や事実関係の認定などに異論や係争がある場合には、どのように解決するのかちょっとよく判らない。例として、患者側は「そのような説明を聞いてなかった」と言い、医療側は「説明した」と主張するような場合には、水掛け論的になるので事実関係の認定は難しくなる。他にも、患者側が「輸血したのは~をした後だった」と主張し、医療側が「いや、~する前だった」というような食い違いなどがあるというようなこともあるかもしれない。過失責任の判断において、これら事実が重要な論点であれば、その事実関係の係争は残される可能性はある。

そこで、不服であると考えるならば審判請求を行って、審判を行うものとする。これは実質的には裁判と同じようなものである。形式的には公取委の行っている審判と同様でよいのではないかと考えている。ここで事実認定や過失責任について確定することとし、「審決」が出される。判決みたいなものである。基本的には以後の裁判においても、審判での事実認定は拘束されるものとする。この審決に対してどうしても不服であるとするならば、以後は裁判での係争となる。これも公取委の手続と同じである。

ここまでの流れをまとめると、
①調査し、調査報告書案(仮称)ができあがる
②この報告書案に対して意見を述べさせる
③提出するべく報告書をまとめる
不服がなければ、以後の処分等に入っていく。
④不服であれば審判請求が出される
⑤審判の結果「審決」が出される
不服がなければ、以後の処分等に入っていく。
⑥不服であれば訴訟提起となる

⑥以降の裁判は高裁からスタート(つまり2審から)となります。被告は医療機関側とかではなくて、医調委となります。行政事件訴訟法に規定される抗告訴訟ということになります。上述したように事実認定は拘束され、立証責任は原告側が負うこととします。

大半は③又は⑤の段階で同意が得られることになると思われ、その時点で「事故調査報告書」は確定し、厚生労働大臣に提出されるものとします。この調査報告に基づき、刑事・民事・行政責任の範囲を決めていくことになります。


6)刑事告発

この条件としては、
①看過し難い重大な過失がある
②犯罪性がある
③社会的に重大と考えられる医療倫理違反
のいずれかに該当するものであるとします。

医調委の告発なしに、主たる違反類型の刑事処罰はできないものとします。この点が重要で、医調委が「刑事罰をもって臨むのが相当」という判断がなければ刑事罰を与えることはない、ということが基本になるのです。ここでは社会的背景や患者や医療機関の置かれている状況などといった「価値判断」も含まれることになるので、法解釈の適否という不毛な現状からは脱却できるであろうと思われます。


7)民事上の責任

「事故調査報告書」に基づき過失が確定しますので、大きく2つに区分されます。「過失あり」と「過失なし」です。「過失あり」の場合は損害賠償請求が可能となりますので、後は賠償額の問題になります。「過失なし」については、「無過失保障対象」か「何もなし」(以後、「却下」と呼ぶことにする)のいずれかに区分されることになります。まとめると、

①過失あり―賠償
②過失なし
 ア:無過失保障対象―賠償
 イ:却下―賠償なし

となります。
ここでのポイントとしては、②のアであり、過失がなくとも保障するべき対象が存在する、ということです。これは概要の部分でも触れましたが、医療行為に伴って生じる合併症で被害を受けてしまうものを対象とします。具体的には、福島での事件のような、「想定外の大量出血」といったものです。1万例に1例とか数例程度でしか発生しないような、稀な医源性の合併症によって引き起こされるものも含まれます。

従って、②のイ以外では賠償額の問題に収束できますので、これ以後には事実関係の係争はなく、交渉は比較的容易になるのではないかと思われます。手続としては、裁判所における示談とかADRのような仕組みを用いることとし、そこで賠償額の決定を行うものとします。予め医調委が「参考となる賠償額」を提示(報告?)することにしても良いかもしれません。その賠償額では不服である場合には、損害賠償請求訴訟の取扱いとし、通常の裁判と同じく行いますが、ここでも「事実認定の拘束」を受けるものとして、それを争うことはできないものとします。単純に賠償額のみ争う、ということです。これであれば、裁判は簡潔に済むことになるであろうと思います。この可能性は少ないのではないかと考えています(多くの遺族は額を不服として医療裁判を行っていることは少ないように思われるので)。

無過失保障において問題となってくるのではないかと思うのは、薬剤の重篤な副作用の取扱いについてでしょうか。発生頻度にもよりますけれども、副作用について完全にゼロにはできないとして、誰がどの程度まで責任を負うべきなのか、ということが問題になってくるからです。医療行為に起因するものであれば、医療従事者の賠償責任保険で、ということで対処可能でありましょうが、薬剤そのものに起因している場合には投薬した医師等に直接の原因があるわけではありません。そであるなら製薬会社が賠償責任を負うべきということも考えられ、すると別に保険を整備すべし、ということになるのかどうか、それとも同じ保険制度にしておいて、製薬会社に保険料負担を求めるべき、ということにするべきなのかどうか、ここら辺はよく検討が必要になるのではないかと思います。保険制度全体の制度設計について、よく検討し見直しを図るべきなのかもしれません。「賠償責任保険制度」の設計という論点については、医療の問題とは少し離れますので、専門家の方々に考えて頂ければと思います。


8)行政への対応

医調委の大切な役割としては、行政施策への働きかけができることがあります。従来の裁判であれば、当事者間の解決に繋がるとしても、行政施策の変更というのは殆どが期待できませんでした。それを改めよう、ということです。医調委の対応について、論点ごとに述べてみます。

①注意(警告)
事故調査の申立がなくても、調査研究(前述した2)の⑥)によって医療事故を発生させる危険性があると考えられ、医療機関において注意するべきであると認める時には、注意(警告と呼ぶのか?)を行うことができる。厚生労働省は医療機関に対して、この注意(警告)を通知・指導する。医療事故を未然に防ぐことを目的としたものであり、紛争削減に資するものである。

②勧告
事故調査報告書に基づいて、当該医師及び医療機関に対して適切に対処することを求める勧告を厚生労働省に行う。勧告内容としては、ア行政指導を求める場合、イ改善命令を求める場合が考えられる。アに該当するのは、無過失保障の対象となったものや過失内容が軽微であって、改善命令を求めるには至らない場合とする。これら以外で過失が認められたものについては、イの改善命令を出し再発防止策を求めるものとする。この場合についても、「~をしなさい」と行政機関側から命令するものと、「改善しなさい、よってその改善策を策定し提出しなさい」というものと分けた方がよいかもしれない。厳しいものは、例えば「別な専門医が着任するまで心臓外科手術患者の受け入れを停止しなさい」といった具体的命令が有り得るのではないかと考える。過失があまり大きくないならば、「~手術の実施環境を改善しなさい、その改善策を自分たちで策定して出しなさい」という命令で対処する、といった具合だ。

③建議
事故調査報告書で行政施策上影響の大きいものが原因となっていることが明らかとなった場合に、厚生労働大臣に対して建議するものとする。例えば、奈良県で「たらい回し」と報じられた事件のようなものであろうか。産科医療の救急搬送体制を都道府県が整備するべきである、といったことを求めるものである。或いは、○○の確率を低減する為に、「~ができる医療従事者を増やす施策を講じるべきである」ということを求めたりする、ということになろう。

この他、行政処分に関する意見(勧告?)を出すことが考えられる。医師個人に対しては、医道審議会への意見(勧告)を出す必要があるが、医道審議会の処分決定は年に1回とかなので対応が遅く問題があるかもしれない。医師個人への処分は、医師免許取消、医業停止があるが、これでは不十分であると考える。医業停止期間をもっと短くしてもいいので、医師の研修を義務付けて事故再発防止とすることの方が重視されるべきではないかと思われる。事故調査報告書が確定し医調委からの意見が出されたならば、処分決定を迅速に行い、比較的短期間(概ね3ヶ月以内?)の医業停止と同じくらいの研修期間を課すことにするべきである。研修は指定医療機関において行うものとする(事前に選定しておく。大体は大学病院とか大きな市中病院などで、実態的には研修医の研修機関とほぼ同じであろうか)。免許取消とか医業停止期間が長期に及ぶもの(大体1年以上?)は年に1回の決定でもよいかもしれないが、それ以下の処分については適宜決定を出すように変えるべきである。

医療機関に対する行政処分については、重いものであると保険医療機関の取消、病院の各種指定取消ということはあるが、必ずしも両罰的に(医師個人が処分を受けても医療機関にも責任があったと言えるかどうかは別問題の場合もあるので)処分をするべきものとは言えないだろう。事故原因の調査結果に応じて適切に処分決定がなされるべきである。基本的には、改善命令で対応することが多くなるであろう。


以上、制度について考えてみたが、専門的見地からの検討が必要であるし、もっと詳しい方々が検討するのが望ましい。
ただ、現状のままで放置しておくとか、不満を募らせていっても解決への道はほど遠く、何らかの「形」として提案できるようにする方が議論は進むであろうし、意見を受け入れられやすいのではないかと思う。その点だけ考えて、自分なりの考え方を書いてみた。

つぎはぎで書いたので、文体がオカシイ(いつもか、笑)のですが、どうぞご容赦下さい。



コメント   トラックバック (2)   この記事についてブログを書く
« 医療過誤と責任・賠償問題に... | トップ | 今度は海保の情報漏れ?? »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

法と医療」カテゴリの最新記事

関連するみんなの記事

2 トラックバック

兵庫人第4部「医」をめぐる旅から (ウェザーコック風見鶏(VOICE FROM KOBE))
 神戸新聞7月8日付一面兵庫人コーナーの記事で、「被害者の声 神戸から」と題する「医療過誤」に関する裁判に関する記事が取り上げられている。  今回の主人公は、「医療と裁判を考える会」の代表として、神戸で医療過誤の問題と戦い続けた「長尾クニコ」という女性で...
兵庫人第4部「医」をめぐる旅から =柳原和子氏= (ウェザーコック風見鶏(VOICE FROM KOBE))
 神戸新聞7月15日付「兵庫人」「第4部『医』をめぐる旅から」のコーナーの主人公は、ノンフィクション作家の柳原和子氏である。  丁度私と同世代の方である。  柳原氏は、「母親をがんで亡くした20歳のとき、母と同じ年齢で、同じがんになる。そして医療のすべてを記...