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株式を保有する銀行はダメ経営なのか?

2009年06月06日 17時56分26秒 | 経済関連
日本の銀行が批判される時によく聞くのが、「株式持合いが悪いんだ、株なんか持ってるからダメなんだ」というような意見がある。以前から常々思ってきたのだが、こういうのは本当なのだろうか?この意見を言ってる連中の多くは、「出羽守」系のカブレ者とか、胡散臭い自称経済系専門家とか、思考力に乏しいマスメディアとか、そういうのが多いという印象。

少なくとも、この命題が真実かどうかということについて、考えないか、考えられないか、気にしたことすらないか、といった程度の連中なのだろうな、ということは感じるわけである。

コレね>はてなブックマーク - J-CASTニュース 日本のメガバンク 「守りの経営」しかできない理由


まず、普通に考えてみよう。
個人には「貯金なんかしてるから資金効率が悪いんだ、もっと投資しろ、株を買え」とか、散々焚きつけてきた連中というのがいたわけですよ。特に外資系とかが。年金運用も、「国債なんかで運用しているからダメなんだ、もっと株式投資をしろ」とか、耳にタコができるくらいに言っていたヤツラは沢山いたわけです。
そうして、慶応義塾大学さんみたいに、積極運用をして大穴を開けるというド素人カモ軍団も大挙して出てくるわけでして。さすがは投資教育推進を謳っていた竹中元大臣を擁する大学だけのことはあるね。

株式投資は資金効率を高める、ということならば、100万円を預貯金のような安全資産で持つのではなく株式で持つのがよい、という考え方は出てくるわけでしょう?だからこそ、投資を勧めるんですよね?これがウソということであるなら、株式投資そのものを勧めるということ自体が間違いでは。

さて、個人ではなく法人が株式投資をするのは悪いことなのでしょうか?資金効率を悪化させますか?
もしも資金効率を悪化させる、というのであれば、法人ではなく個人であるとその命題は全く逆転するのでしょうか?法人が、一般の非金融企業である場合と、銀行である場合では、どういった違いがあるでしょうか?

別に特別な金融や経済の知識なんかなくたって、普通に考えればわかるはずですよ。
株を持っていることがそんなに悪いことなのであれば、個人だろうと法人だろうと関係なく、「投資効率が悪いね」ということになるんでは?だったら、外資系ファンドとか、何であんなに必死になって株を買おうとするわけ?わざわざ儲からなくて資金効率の悪い手法を意図的に選択しているとでも?(笑)

個人が株を持つのは良いが、銀行はダメなのだ、というのは、どう考えてもおかしいな。そんなはずなかろうて。銀行にとってよくないものは、個人にとっても良くないんじゃないのか?そうなのであれば、年金とか個人資金とかで株式を買うのは間違いってことなんじゃないの?


また適当な例で考えてみるよ。

ダメ銀行Aと優良銀行Bがある。ダメ銀行は悪い経営の銀行なので、ダメ会社Cの株式を保有している。優良銀行Bは良い銀行なので、株式を保有していない。

自分が投資する場合にどう考えるかを書いてみよう。
ダメ銀行Aはダメ会社Cの株式を持つような効率の悪い銀行なので、当然利益水準は低くなるはずだ。そうなると、優良銀行Bに投資するのがよいに決まっているだろう。つまり、経営とか効率とか利益水準を考えてみれば、

 ・ダメ銀行A:悪い、低い
 ・優良銀行B:良い、高い
 ・ダメ会社C:悪い、低い

ということになるわけである。
そうなると、どうなるだろうか?投資対象がこの3つしか存在しないとなれば、当然ながら優良銀行Bに人気が集まるだろう。ダメ銀行Aやダメ会社Cの株価は下がり、優良銀行Bの株価は上がるであろう。もし、このような株価変動の起こる前に優良銀行Bの株式を購入していたのであれば、儲けることができるだろう。
しかし、人気のある優良銀行Bの株価が上昇した後であると、利益水準が上昇を続けない限り投資効率が上がるということにはならない。ダメ銀行Aやダメ会社Cの株価が下がり、優良銀行Bの株価が上昇した後であると、水準訂正が起こったのだから、基本的には期待される投資収益は同じになっているはずだからだ。

同じになっていなければ、ダメ株を持つ人たちは必ず売却して優良銀行Bの株を購入してしまうからである。なので、株価の水準訂正は続くことになるだろう。けれど、優良銀行Bの株価が上昇を続けていけば、どこかの時点で投資効率が悪くなる株価がやってくるので、それより高い株価では誰も買わなくなる。なので、ダメ会社Cの株式を持つダメ銀行Aの株に投資するのも、優良銀行Bの株に投資するのも違いはなくなってゆくのである。

ダメ会社Cの株を持つと何故ダメなのかといえば、ダメ会社Cは稼げる利益が少ないからだ。そういう会社の株価はどうなってゆくかといえば、下がるのである。つまり、悪いなら悪いなりに株価の水準訂正は働き、下落してゆくけれども、どこかの株価に達すると「安全資産への投資」よりは魅力的である、という水準とか、株価が高騰してしまった優良銀行B株に投資するよりも割安になっているとか、そういう株価というものが存在するのであれば、そこで下げ止まることになる。つまり、「他の投資対象との比較」において、ダメ会社への投資が不利になる株価となるまで下がることで、同じ水準に近づくということなわけである。


結局は、ダメ銀行Aがダメ会社Cの株を持っていても株価の水準訂正は働くので、優良銀行Bの株価が割高となってしまう臨界株価のようなものが存在することになる。もしも常に優良銀行Bが上回れるとするなら、ダメ会社Cを上回る投資効率を有する事業に必ず融資を実行できる、といったような、極めて特異な能力を発揮できる場合だけだろう。優良銀行Bの株価は常時上がり続けるということになってしまうだろう。

それと、預金のことだけど、一応安全資産への投資ということにして考えると、本当に優良銀行Bが安全資産投資を大幅に超えるリターンを生み出すということなら、全員が優良銀行Bの株式を購入しようとするだろう。誰一人として預金などしなくなる(笑)。だが、現実にはそうじゃない。優良銀行Bがどんなに優秀であっても、それだけの投資対象を探し出してくるのが困難だからだ。そんなにリターンの大きい分野とか仕事が存在するということになれば、銀行に金を持って行かずに直接その会社の株式に投資した方がよくないか?、ということになってゆくんじゃないの?そもそも、儲かるその事業を自分でやるよね。それとも、会社ごと買うんじゃないの?

会社を買う、というのは、「その会社の株式を購入する」ということなんだわ。



他の意見も書いておくよ。
著名な例でいうと、バフェットさんの話があるよね。株式の長期投資で財を成した伝説の人だ。
バフェットさんのやってる「バークシャー・ハサウェイ」という企業の株価は高い水準で維持されていて、過去の投資リターンは年率25%とかの高い水準を何年か何十年か継続するほどだったとか。

この会社は保険会社ということらしいんだけれども、そもそも株式投資を行って長期保有してきたわけでしょう?バークシャーの成長を支えてきたのは、持株のお陰だったんじゃありませんか?株式を持っていると資金効率が悪いとか何とか、バフェットさんにお説教をしてあげたりはしなかったんですか?(笑)


銀行が持株を保有しているのは、長期的に見ればバークシャーとほぼ同じようなものでしょう。ただ、投資対象となる企業の平均成長率が異なる、というのはあると思いますけれどもね。特殊な才能を持つ人間であると、「高成長の投資(融資)対象」となる事業や案件を見抜ける、ということですが、そういう人は稀です。バフェットさんが2人といないことから見ても、同じパフォーマンスを求めるのは至難の技ということです。
銀行でも同様で、優良銀行であれば「有利な投資先」を常に正確に見つけ出しダメ企業には決して投資しない、ということができるでしょう。そういう優秀な銀行家だけが実行可能なのです。平均的に見て、ダメ企業の株を買わないようにするのも、ダメ企業以外の高成長プロジェクトだけに投資するのも、バフェットさんのような特別な能力の人だけができるだけです。それが全ての銀行業で可能なことなのか、というと、それは疑問ですね。

バークシャーの成長の秘訣は、基本的には「企業の株を買う」か「企業そのものを買う」かであると思うので、「目利き」能力によるということなんでしょう。それが達成できるような「第二のバークシャー」はないのだとすれば、銀行にしても優良銀行Bが可能である投資対象選別であっても、他の銀行が同じように真似できるかといえば無理かもしれない。つまり、一般原則としての「『ダメ企業の株式保有』を常に超える投資対象選別ができる」なんてことは難しいのではないか、という話になってくるのである。


株式保有をしていない銀行は収益がトップになった、とかいう「一つの事例」をもって「株式を持ってる日本の銀行はだからダメなんだ」ってな話をするのであれば、「ゆうちょ銀行」はずっと多くの利益を計上できているのだから、じゃあ「貸出を止め、株式保有を止め、国債だけ大量保有して運用した方がよい」ってな話になってしまうでしょうよ。或いは、外資系信奉者たちが崇拝していたらしい「シティバンク」はだからダメなんだ、ってな話になるんじゃありませんかね。「攻めの経営の結果、国有化になるのが正しい」とか言うのかもしれませんが。


日本の銀行がダメだったかどうかは判らんが、株式を保有しているから経営がダメなのだということにはならないだろう。少なくとも、水準訂正の起こる前の株(つまり優秀な企業の株が割安)を購入できるというなら、バークシャーになれるだろうね、と。その企業評価という目利きや、見通し能力とかがそもそも難しいのだ。他の人々が気付く前に先んじて、価格が上がってしまう前に購入できているからこそ、儲かるわけで。企業の株式を長期保有していたのが悪かったわけではないだろう。買った値段が高すぎたり、倒産するような企業の株を買ったりするのがまずいのであって、それは「倒産するような企業に融資する」という確率とか事例に比べてどうなのかというのはあるかもしれない。神の如き「投資対象選別能力」があるのなら、優良銀行Bのような投資リターンが常に他のよりも上回っている、というのを達成できるのかもしれんがね。


日本の銀行に限らず、多くの保有株が放出されたのは、そもそもの誤りだったのだろうね。だってバークシャー株だって、そうそう大量に放出されていないからこそ、市場で値崩れしたりはしないわけで。しかも長期保有の安定株主が大勢持っているのだ。経営の邪魔をしたり、余計な口出しをしない株主たちだからこそ、バフェットが多くのリターンを得ることができたということかもしれないしね。かつての日本企業のグループでは、そうした傾向があったであろう。けれど、企業群がガッチリ保有していて離さないでいたら、「お前ら、株や土地なんか持ってるからダメなんだ、全部放出しろ、さっさと吐き出せ」とムチで叩かれたので、散々売り出したんじゃないか。

含み益なんか持ってるからダメなんだ、って騙されて、何とかカブレだの、胡散臭いコンサルだの、根も葉もない出まかせしか言わない経済ナントカだの、そういう連中にいいようにカモられたんだろ(笑)。
どこぞの温泉地とかで洗脳集会まで開催されて、まんまと騙されたのだろ。

まるでバフェットの投資のように、多くの日本企業や銀行や生保が長年離さないできた「含み益のあった株式」を、大量に売り捌けと言われたのだろ。まるで巨大氷山みたいに市場では流れてはいなかった大量の株式が、全部溶かして流せと言われて、放出してしまったのだろ。そうすると、市場での需給バランスが崩れ、ガイジン投資家たちに格安で吸い上げられていっただけだろ。


騙されるのがバカなのだ。
だからこそ、未だに日本の銀行は、と文句を言われるのだ。それが何なのか、というのも気付かない連中が多すぎるのだ。考えることすらないのだ。だから、騙される。


要するに、日本にはバカ揃いだった、ということ。