ポール・モチアン・バンドの『 Garden of Eden 』(エデンの園)が発売になりました。詳しい記載がありませんが,90年代のポール・モチアン・エレクトリック・ビバップ・バンド(以下EBBB)の最新作と考えてよさそうです。ポール・モチアンという人はどうしてもビル・エバンス・トリオの黄金期のドラマーという形容がされがちですが,実際にはその後の活動の方が長く,評価されるべきものだと思います。でも,どうしてもビル・エバンス・トリオの呪縛から逃れられず,その反動で,彼自身のリーダー・アルバムにはピアノレスが圧倒的に多いという皮肉もあります。彼のリーダーとしての活動には大きな柱が2つあり,ひとつは80年代から現在まで続くビル・フリーゼル,ジョー・ロヴァーノらとのトリオとしての活動。もうひとつは前述した90年代からのEBBBとしての活動です。EBBBとしては,知るかぎり6枚のアルバムをリリースしています。第1作~第2作がBAMBOOからで,第3作~第6作がWinter&Winterからの発売でした。最初は1テナー,2ギター,ベース,ドラムの編成で始まりましたが,第2作目からは2テナー,2ギターが基本構成になっています。今までに在籍したテナー奏者には,デビュー間もないジョシュア・レッドマン(第1作),クリス・ポッター,クリス・チーク,ピエトロ・トノロらがいます。ギターではカート・ローゼンウィンケル,ウォルウガング・ムースピール,スティーブ・カルディナスらがいます。いわゆるブルックリン系の先鋭達のユニットであったわけです。その名前が示すように,エレキギター2本とテナー2本でビバップを演奏するという趣旨で結成されたユニットでしたが,徐々にオリジナル曲の比率が多くなり,第6作の『 Holiday for strings 』あたりになると,だいぶビバップ色は薄らいできていました。
さて,今回の最新作はEBBBとしては初のECM盤になります。とはいっても録音はNew Yorkのアバター・スタジオで,エンジニアはまたまたおなじみジェームズ・ファーバーですけどね。年月が経つごとにビバップ色が弱まってきたこともあり,レーベル移籍を期にいっそうの事,ユニット名からビバップを外してしまおうと考えたのでしょうか。今回は単純に「ポール・モチアン・バンド」と表記されています。でも編成,演奏内容は今までと変わらず,3ギター,2テナー,ピアノレスであります。ギターは以前からのメンバーであるスティーブ・カルディナズ,カルディナスと同系色のベン・モンダー,それから無名の(ただ僕が知らないだけか)ジャコブ・ブロの3人で,いずれもビル・フリーゼル系のディレイ,ボリューム・ペダルの業師達です。そしてテナーにはEBBBの以前からのメンバーであるクリス・チークと,新たに今やニューヨーク若手ナンバー・ワンのトニー・マラビーが参加しています。否応なしに期待が膨らむメンバーですが,はたして出来も素晴らしいものでした。前作『 Holiday for strings 』よりもバップの楽曲を多く取り上げているのが好感が持てます。なにしろM-1<Pithecanthropus Erectus>(直立猿人),M-2<Goodbye Pork Pie Hat >と,2曲続けてミンガスの楽曲を取り上げていて,モチアン独特のハーモニー感覚が美しく,テーマのギター,サックスのユニゾン・ラインが「やっぱりEBBBBはこうでなくちゃねー」とにんまりの美旋律を奏でています。ただ,ミンガス,モンク,パーカーの楽曲を取り上げているものの,全14曲中9曲がオリジナル曲であり,昔のEBBB,たとえば僕が一番愛聴している『 Reincarnation of a Love Bird 』(Banboo 1994)のような親しみやすいバップ一色のスウィンギーで楽しいアルバムに比べると,やや聴き手を選ぶアルバムかも知れません。
聴き所はなんと言ってもトニー・マラビーとクリス・チークでしょうか。クリス・チークがセンター左に,トニー・マラビーがセンター右に定位し,二人が極上のハーモニーを奏でます。バンドの性格上,二人のテナー・バトルといった趣はありませんが,各ソリストのバップ・ソロの受け渡しが心地よく,上品なアンサンブルに仕上がっていてます。
ポール・モチアンは1931年生まれですから今年で75歳です。今でもこうしてオリジナル曲を書き,孫ほど年齢の離れた若手先鋭ミュージシャンとバンド活動を積極的に続けていくそのバイタリティーには,ただただ敬服するばかりです。
さて,今回の最新作はEBBBとしては初のECM盤になります。とはいっても録音はNew Yorkのアバター・スタジオで,エンジニアはまたまたおなじみジェームズ・ファーバーですけどね。年月が経つごとにビバップ色が弱まってきたこともあり,レーベル移籍を期にいっそうの事,ユニット名からビバップを外してしまおうと考えたのでしょうか。今回は単純に「ポール・モチアン・バンド」と表記されています。でも編成,演奏内容は今までと変わらず,3ギター,2テナー,ピアノレスであります。ギターは以前からのメンバーであるスティーブ・カルディナズ,カルディナスと同系色のベン・モンダー,それから無名の(ただ僕が知らないだけか)ジャコブ・ブロの3人で,いずれもビル・フリーゼル系のディレイ,ボリューム・ペダルの業師達です。そしてテナーにはEBBBの以前からのメンバーであるクリス・チークと,新たに今やニューヨーク若手ナンバー・ワンのトニー・マラビーが参加しています。否応なしに期待が膨らむメンバーですが,はたして出来も素晴らしいものでした。前作『 Holiday for strings 』よりもバップの楽曲を多く取り上げているのが好感が持てます。なにしろM-1<Pithecanthropus Erectus>(直立猿人),M-2<Goodbye Pork Pie Hat >と,2曲続けてミンガスの楽曲を取り上げていて,モチアン独特のハーモニー感覚が美しく,テーマのギター,サックスのユニゾン・ラインが「やっぱりEBBBBはこうでなくちゃねー」とにんまりの美旋律を奏でています。ただ,ミンガス,モンク,パーカーの楽曲を取り上げているものの,全14曲中9曲がオリジナル曲であり,昔のEBBB,たとえば僕が一番愛聴している『 Reincarnation of a Love Bird 』(Banboo 1994)のような親しみやすいバップ一色のスウィンギーで楽しいアルバムに比べると,やや聴き手を選ぶアルバムかも知れません。
聴き所はなんと言ってもトニー・マラビーとクリス・チークでしょうか。クリス・チークがセンター左に,トニー・マラビーがセンター右に定位し,二人が極上のハーモニーを奏でます。バンドの性格上,二人のテナー・バトルといった趣はありませんが,各ソリストのバップ・ソロの受け渡しが心地よく,上品なアンサンブルに仕上がっていてます。
ポール・モチアンは1931年生まれですから今年で75歳です。今でもこうしてオリジナル曲を書き,孫ほど年齢の離れた若手先鋭ミュージシャンとバンド活動を積極的に続けていくそのバイタリティーには,ただただ敬服するばかりです。
でもいつも迷いながらも結局は買ってしまうんですよ。
きっと今回もそうだろうな(苦笑)
特にあのスネアはあまりちょっと....。
EBBBBはどのアルバムも似たり寄ったりですからね。
このアルバムは当然,モチアン買いではなく,マラビー買いなんでしょうね。
やはり、2人のサックス奏者の対比が聴き物だと思います。今までの組み合わせで最も対照的なスタイルの組み合わせだと思います。
ブルックリン派に代表される現代サックス奏者とポール・モチアンの関わりを、ジョー・ロバーノを橋渡しとする観点から書いた考察文を一年ほど前に自分のブログで書いたと思うのですが何処に書いたか思い出せず・・・
その、マラビーですが、妻アンジェリカ・サンチェス、トム・レイニーからなるこちらは、ベースレスのサックストリオ、マラビーは最も度フリーなプレイを展開するバンドの「ALIVE IN BROOKLYN Vol.2」が月末に入荷予定で楽しみです。
アルバ-ト・アイラ-大好きです。
ジョニ-・ホッジェス探しています。
そんな爺さんです。
今日、幼稚なTBもしました。
VENTO AZULさんの考察は鋭くて,そこらの評論家よりずっと内容が濃いのでいつも楽しみにしています。ちょっと探したのですが,見つかりませんでした。また暇なときに探してみます。僕はあまりブルックリン派のこと知らないのですが,どうしてロヴァーノが関わりを持っているのか,ちょっと奇異な感じがします。
ポール・モチアン,アルバート・アイラー,ジョニー・ホッジスと,かなり守備範囲が広そうですね。
僕のブログにはおそらく,アルバート・アイラーやジョニ・ホッジスは登場しないと思いますが,もしよかったらたまに覗いてみてください。
これからもよろしくお願いします。