雨の日にはJAZZを聴きながら

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Dave Douglas 『 Keystone 』

2007年03月06日 21時37分12秒 | JAZZ
2005年に立ち上げられたデイヴ・ダグラスの現在進行形のもうひとつのProject が “ Keystone ” です。このユニットはトランペット,テナー&ソプラノ・サックス,ウーリッツァー,エレキベース,ドラムス,そしてターンテーブルの6人編成です。ウーリッツァーやエレベ,ターンテーブルが入っているのでかなりエレクトリック色が強い,例えはエリック・トラヴィスみたいなサウンドを想像していましたが,意外にそうでもありませんでした。少なくともダグラスのペットには通電されていないので安心して聴けます。

Keystone 名義では現在までスタジオ盤とライブ盤の2枚が発売されていますが,僕が所有しているのはスタジオ盤の方だけです。

この作品は,20世紀初頭に活躍したサイレント・ムービーの監督兼喜劇役者であったロスコー“ファッティー”アーバックル(1887~1933)にインスパイアーされて作られたものです。

1枚はダグラスのオリジナル集で,クールでグルーヴィーなリズムに乗ってダグラスのミュートがエモーショナルに囁き,DAVE DOUGLAS QUINTET とはまた異なる世界像を提示して見せてくれます。こちらでのテナーはマーカス・ストリックランド。ほらほら,聴きたくなってくるでしょぉ~。カッコイイですよ。

で,もう1枚はアーバックルの監督主演のサイレント・ムービー『 Fatty & Mabel Adrift 』の映像にダグラスの楽曲をかぶせた34分の作品+α で構成されたDVDです。サイレント・ムービーが個人的にはあまり興味がないので一回しか観てませんが,正直あまりしっくりきません。DVDはなくてもいいような気もしますが,この2枚組み,2100円程と安いのでDVDはおまけぐらいに考えておいてよいでしょう。

この作品,ダグラスのトランペットよりも,バックのリズムが凝っていてカッコよくて結構気に入っています。

『 Keystone 』(2005 Greenleaf Music )
Dave Douglas (tp)
Jamie Saft (wulitzer)
Gene Lake (ds)
Marcus Strickland (ts)
Brad Jones (b)
DJ Olive (turntable)

P.S. 先日買ったケニー・ワーナーの新作にもデイヴ・ダグラスが参加していました。しかもクリス・ポッターと一緒に!! ワーナーの初エレクトリック作品で,面白かったですよ。

Dave Douglas 『 The Infinite 』

2007年03月06日 20時52分32秒 | JAZZ
Dave Douglas (デイヴ・ダグラス)のHPから彼のProject の項目をクリックしてみると,驚くことに10以上ものProject を立ち上げていることが分かります。その中でも最も現在の活動の主軸になっていると思われるのが,DAVE DOUGLAS QUINTET です。同名義でのファースト・アルバム 『 The Infinite 』( 2000 Bluebird )は,2003年に Best Instrumental Jazz Album 部門でグラミー賞にノミネートもされました。

『 The Infinite 』( 2000 Bluebird )
Dave Douglas (tp)
Chris Potter (ts)
Uri Caine (fender rhodes)
James Genus (b)
Clarence Penn (ds)

初代テナーはクリス・ポッターでしたが,現在は Donny McCaslin (ドニー・マッカスリン)になっているようです。リック・マーギッツァが参加していた時期もあるようで,最近,彼の参加していた2002年の2枚組みライブ盤『 Live at The Bimhuis 』(Greenleaf music )が発売されました。「 Disk Union お茶の水ジャズ館ストアブログ 」の2月20日にエントリーされていますのでそちらをご覧ください。ペーパーバック仕様の廉価盤です。現行のメンバーでの録音は今のところ昨年発売された『 Meaning and Mystery 』(Greenleaf music )だけのようです。

このProject のバックメンバーはユリ・ケイン,ジェームス・ジナス,クラレンス・ペンで,不動です。このバンドの特徴はユリ・ケインがピアノを一切弾かず,ローズだけに専念している所です。そのため独特のあの浮遊感が全編を貫き,なんとも言えないミステリアスな作品に仕上がっています。ちょうど1968年から70年頃のマイルス・バンド ― ハンコックからチック・コリアに,ロン・カーターからデイブ・ホランドに交代していった頃のマイルス ― の世界感に通じる部分も垣間見られます。クールで知的な印象の静かめの楽曲が多く,強烈なインパクトはありませんが,丁寧に仕上げられた楽曲ばかりで聴き応えは十分にあります。

Dave Douglas 『 Soul On Soul 』

2007年03月06日 19時41分04秒 | JAZZ
「おいおい,誰だよデイヴ・ダグラスって? ニコラス・ペイトンのトラかよぉ~。」
先週 Blue Note Tokyo で行われたSF JAZZ COLLECTIVEのライブでのオープニング。メンバー一人一人が紹介されながらステージに上がって行く際,デイヴ・ダグラスのアナウンスを聞いてこう呟いた観客がおそらく20~30人はいたのではないでしょうか。幾分彼の時だけ拍手が少なかったものの,しかし,にこやかな表情でステージに上がり,どう見ても40代前半には見えない老け顔からは想像もつかない切れのいいフレーズを連発し,ニコラス・ペイトンをも凌駕するテクニックで観客を沸かせてくれました。

それにしてもデイヴ・ダグラスという人は日本では全く話題にならないトランペッターです。経歴をみると,既に20枚以上のリーダー作を制作し,100以上のアルバムにクレジットされるほど記録物を残しているにもかかわらず,ほとんど日本では認知されていません。ジャズ批評ブックスの『 Jazz トランペット 』やジャズ批評No.124 『 トランペット最前線2005 』などにはちゃんと紹介されてはいますが,はたして彼のCDを持っているジャズファンがどれほどいるでしょうか。

今までの作品を眺めてみると,実に様々なファーマットで,多種多様のジャズの作品を作っているようです。アコースティックなストレートアヘッドなジャズもあればエレクトリックもあり,チェンバー風の作品を出したかとおもうとジョン・ゾーンのMASADAに参加したりと。そのあたりのつかみ所のない節操無さが兎角カテゴライズしたがる日本人には敬遠される所以かもしれません。

さて,そんなヴァーサタイルで一元的には語ることの出来ない彼の作品群から一枚を上げるのは非常に難しいことですが,一番アコースティックで聴きやすく,それでいて適度に刺激的なポスト・バップの作品から選ぶとすれば,2000年のメアリー・ルー・ウイリアムスのトリビュート盤『 Soul On Soul 』(BMG)がベストです。

『 Soul On Soul 』(2000 BMG)
Dave Douglas (tp)
Gregory Tardy (ts cl)
Joshua Roseman (tb)
Chris Cpeed (cl)
Uri Caine (p)
James Genus (b)
Joey Baron (ds)

いつもはそんなに熱くならないグレゴリー・ターディーがジョーイ・バロンに煽られてここではキレています。ジョーイ・バロンも破壊的で快感が背筋を駆け抜けていきます。メアリー・ルー・ウイリアムス作品集とは言っても,彼女の曲は13曲中3曲だけで他はダグラスの曲なので,あまり企画っぽい作風ではありませんのでご安心を。

ということで,地雷を踏みたくなければこのあたりから入るのが妥当かと思います。