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グローバル人材とは?

2010-06-17 | 人材開発

今週号の東洋経済の特集は「グローバル人材」について
国内外の大手・有名企業を中心とした取り組み事例が多く
紹介されていて、読み応えがあります。


当社でも「グローバルに活躍できる人」をできるだけ早く育成する(のを
お手伝いする)という観点からトレーニングやコンサルティングを提供
しているので、興味深く読みました。



ところで、今さらながら・・・ですが、「グローバル人材」とは一体、
どういう人材なのでしょう?



例えば、エンジニア人材であれば「技術開発に従事する人」、営業人材であれば
「営業業務を遂行して売上を作る人」など、具体的に取り組む業務とのつながりが
分かります。


グローバル人材とは?
グローバルに仕事をする人?
グローバルとはどこを指すのか?
どんな仕事に従事するのか?
そのために、どんな能力・資質が必要なのか?



東洋経済誌では「グローバル人材という言葉に明確な定義はないが、
一般には①グローバルマネジメントができる、②海外市場に精通している、
③海外と高度なビジネスができる、などが挙げられる」
としています。


(グローバルマネジメントとは?海外市場とは?高度なビジネスとは?
と、さらに疑問がわきます。)


別のページでは「グローバル人材に求められる能力」として、
次の3つを挙げています。


(人材の定義がはっきりしていないのに、求められる能力ははっきり
している、というパラドックスは、自分ごととしても不思議。)


 

1.語学力:中国語は基礎までなら上達(できるので、取り組むべき)、
        英語の重要性はゆるがない(ので、がんばりましょう!)


2.コミュニケーション力:宗教や食物上の近忌など相手の文化を理解する
                アジア各国の行動特性とマネジメントのコツを学ぶ


3.専門性:ゼロから商売を起こせる能力
        新興国で戦えるタフさと専門性


以上の3つの要件は、「グローバル人材」の要素として、日本人のビジネス
パーソンの間ではコンセンサスが得られそうです。ただ、もしこの3つを要件と
するのなら、公約数をとって「自分の専門性を活かすことのできる英語力と、
異文化に溶け込めるコミュニケーション力を持った人」
としたほうが、(長たら
しいですが)分かりやすい。


また「グローバル人材」のとらえ方は「人によって違っていてもOK」とされて
いる感もあります。



例えば、同じ東洋経済の特集に出ていた菅原明彦氏(日立製作所・人財開発
部長)は「・・・現地でのやり方を自然に吸収できる能力」。
川原 尚行氏(NPO法人ロシナンテス理事長・医師)は「グローバルな人とは、
言葉を越えて心で会話が出来る人
」「人としての徳(が備わっている人)」。
西水美恵子氏(前世界銀行 副総裁)は「グローバル人材の代表はブータン
の雷竜王四世
(だ、だれ?)」と語っています。



ちなみにネットでは経済産業省の「グローバル人材マネジメント研究会」の調査
報告書を見ることができます(リンク先はこちら)。でも、報告書でいう「グローバル
人材マネジメント」は、日本人だけでなく外国人のマネジメントを合わせて指
している言葉
で、「人材マネジメント」を「グローバル」に行うというとらえ方です。
いわゆる「グローバル人材」の定義や要件については触れられていません。



一方、海外企業の「グローバル人材」のとらえ方を見てみると、日本とは違う
アプローチを感じます。



まず、語学力とかコミュニケーション力とかいった話しは出てきません。もちろん、
実際には両方とも取り組んでいるのでしょうが、ウェートの置き方が違うようです。



例えばGEは全世界共通のプログラムとして「リーダーシップ・プログラム」という
のを導入しています。英語だとかコミュニケーション能力や専門性などの個別の
要素よりも、「GE社が求めるスタンダードに合わせて、成果を出せる人を作る」と
いう強い目的指向性がある。どこか外部基準としてある「グローバル人材」を
追い求めるのではないようです。GEのスタンダードをクリアした人材=グローバル
人材というような、強い自負心に裏打ちされた絶対観がベースにあります。



P&Gも人材育成に関しては、「米国本社が中心となって作成したスタンダード
に、いかに各国の従業員が合わせていくのか」というスタンス

P&G人材=グローバル人材、という位置づけは、GEと同じような構造です。



サムスンは上の2社とは少し違っていて、地域専門家制度という、ローカル・スペ
シャりストを育成する仕組みを導入しています。「地域専門家として選抜された
社員は、その地域の言葉や文化は当然のことながら、業務と関連ある産業の
現況まで会得・理解できるように努める
」「1年の派遣期間中は、会社からの
束縛は全く受けない。派遣された国で自由に生活しながら、グローバルなDNA
を作り上げる
」とのこと。地域専門家=グローバル人材という位置付けで、
本社のスタンスを押し付けるというよりも、各国の特性を吸い上げていくという
スタンスが垣間見えます。


雑誌の記事に取り上げられていた限定されたケースとはいえ、こういった
「グローバル人材」の曖昧さやとらえ方の違いを面白く思いました。


どうも、日本人的な発想では、理想像としての「グローバル人材」なるものがあり、
そことの「格差を埋める必要があるのでがんばりましょう!」という考え方を基軸に
置いているようです。往々にして目指すべき「グローバル人材」は欧米のエリート
ビジネスパーソンをイメージしています。つまり、英語がネイティブ(もしくは、限りなく
ネイティブに近くはなせる)で、MBAを持ち、自立していて、物怖じせず堂々とプレゼン
テーションして、バリバリと交渉を乗りきれるような人です。建築に例えるのなら、
「天井にまで届いていない柱を、いかに届かせるのか」という問題のとらえ方とでも
いいましょうか。そこには常に不足がある。

しかし、日本人であることの外に基準をおくことじたい、そもそものスタート地点に
無理があるのではないかと思います。日本で生まれ育ち土着の生活をしている
ことが、マイナスに受け止められてしまうのであれば、
アイデンティティーの
問題として不健康なことだからです。


内田樹の疲れすぎて眠れぬ夜のために (角川文庫) の一節を引くのならば、
今の日本社会の抱える様々な問題の一因は、アメリカという非常に特殊な国の
文化をグローバル・スタンダードとみなして、それを「あるべき世界標準」だと
思い込んでいるところにある
』のでしょう。どこか外にあるものをゼッタイに正しい
基準だとして、自分自身を否定するようなアプローチが正しいのか?…


それはさておき・・・


上記の米国企業をみると、企業統治の方法論として「グローバル人材」
をとらえています。つまり、自社の方法論を各国に伝播するために必要な人材、
宣教師の役割を果たすべき人材です(ヨーロッパの企業は国によって違いが
あるかもしれません)。なので、「中国語を準公用語に」「儒教的な価値観を身につける」
といった話しは、きっと出てこないでしょう。「歩み寄るべきは彼らであり、伝えるのは
我々だ」というスタンスが根底にあります。こちらの柱は、既にしっかりとしていて
揺るぎません。


なので、ローカルな人材は(最近は、ナショナル人材といいます)
「グローバル人材」の手足としてオペレーションを任されます。そこに
は、見えない断絶がある。手足の扱いがいやならいやなら「グローバ
ル人材」になりなさいという暗黙の強制が存在している。


一方、「グローバル人材」同士は、共通のコードを多く持っているため、
同質的な集団となります。欧米のMBAはそういう同質的な人材の排出
機関ともいえます。そして「グローバル人材」は、ある独特の価値行動
基準を持った集団に収斂していきます。共通項があるというのは、ビジネス
を進めていくのにはとても便利です。



もちろん、今の時代、中国やインドなど、従来は発展途上国とよばれ
ていた国々とのつながりが深まっています。グローバル化ということで
必ずしも欧米がモデルではありません。ただ、グローバル人材という
言葉には、やはり欧米のエリート的なニュアンスが多く込められてい
るように(自分の業務経験上からは)感じます。



で、結局、グローバル人材とは何か?という冒頭の問いかけに戻ると、なんとなく
どんな人材か分かるけれども、具体的にコレとは言い切れないもどかしさが残ります。
欧米エリート像=グローバル人材というのも、解の一つと言えそうですが、少なくとも
日本やアジアでそのスタイルが必ずしも通用するわけではありません。



一つ確実に言えそうなことは、国・産業・企業で定義が変わってくる人材であること
でしょうか。例えば、楽天では、要件として公用語の英語が使いこなせることが含まれる
でしょう。でも、他の会社では、英語は優先順位は低いかもしれない。時間が経てば、
中国語もグローバル人材の要件に含まれる可能性もあります。「組織は戦略に従う」の
とおり、企業戦略によっても人材像は変わってきます。



個人にとってグローバル人材という言葉は、日本人を海外に向かわせるための「幻想と
しての人材像
」と受け止めて置いたほうがよさそうです。言葉に踊らされず、仕事で価値を
生み出すことに努めていれば、おのずと進むべき道が見えてくるのではないでしょうか。 

 


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1 コメント

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Unknown (www)
2012-09-22 16:52:26
同感です。
グローバル人材というネーミングも人材サービス会社が作り上げた商品名のような気がします。また、外国語(特にtoeic(や外国体験の有無だけで、グローバル人材かどうかを決める企業がほとんどです。
会社はドメスティックそのものなのに、中途社員にのみグローバル人材を求めているところも多い。
日本は国際化=米国化するのではなく、日本の純度を上げるべきと考えています。

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