量的・質的金融緩和(QQE)に次いでマイナス金利政策をとった日銀ですが、2013年4月から3年、ほとんど効果を上げませんでした。
金利差から円安を狙ったマイナス金利政策も円高に振れ、物価上昇率も2%からはほど遠く、現在物価はマイナスであり、デフレ脱却できず、黒田総裁の任期中は不可能ではないかと見られています。
民間金融機関からの国債の買い取りも、来年の半ばには限界を迎え、売り手が枯渇すると予測されています。
すると日銀はテーパリング(緩和の縮小)をせざるを得ず、長期金利は急上昇し、日本はジ・エンドとなります。
2017年半ばが、日本経済の限界なのです。
国債購入額を80兆円から100兆円規模に増額しても、破綻を早めるだけですから、規模はそのままとなるのでしょう。
ETFや不動産の増額も、インフレ率2%には、あまり効果がありそうもなく、黒田総裁が、任期中に物価目標である2%を達成しようとするならば、打つ手は最終手段しかありません。
「ヘリコプターマネー」です。
これならば任期中にコアインフレ率2%を達成できるかもしれません。
というかこれ以外に達成できそうな政策はありません。
マイナス金利政策の次に日銀が取るであろうと予想されている政策が、この「ヘリコプターマネー」です。
6月か7月の金融政策決定会合において、この政策を採用すると織り込んでいる市場が今、円を売っているために円安になっています。
日銀はこの政策を選択する以外の手はないと織り込んでいます。
黒田総裁は、一応この政策を否定はしておりますが、マイナス金利政策も、3ヵ月前には明確に否定しておきながら、結局は採用した過去があります。
今回も同様の事態になるかもしれません。
日銀総裁:ヘリコプターマネー全く考えていない-法的枠組みと矛盾 ブルームバーグ
黒田東彦日本銀行総裁は20日の衆院財務金融委員会の日銀半期報告の質疑で、景気刺激策の財源を中央銀行の紙幣増刷で賄ういわゆるヘリコプターマネー政策は「全く考えていない」と述べた。
これまでに「具体的に検討したこともない」と重ねて否定した。
ブルームバーグの4月20日付けの記事では、明確に否定しているのですが、WSJ(ウォール・ストリート・ジャーナル)の記事では、必ずしもそうではありません。
黒田総裁は40分間のインタビューで3回、そのような手法に着手する意図はないと断言した。
黒田総裁にはリフレ政策が窮地に追い込まれたように見えると、否定したと思われた路線を変更してきた実績がある。
ゼロヘッジと同様な点に着目しています。
ゼロヘッジは、日本の財政と金融は既に「コーディネーション(協調)」しているために最初にヘリコプターマネーを実行にうつすと予測していました。
WSJの記事にもこうあります。
財政政策と金融政策はすでにこのような目標達成に向けて事実上協力し合っている。
日本はヘリコプターマネーを実行しやすい環境にあるということです。
では具体的にはどういった政策になるのでしょうか。
予測するしかありませんが、色々なパターンがあるようです。
黒田日銀総裁はヘリコプターマネーをばらまくか? JBpress
ここではヘリコプターマネーを4パターンに分けています。
一つは、従来の伝統的なやり方であり、政府が国債を発行して市中経由で日銀に買い取らせ、その資金を直接国民にばらまくやり方。
二つにはその政府が発行する国債を永久国債とし、無利子、あるいはマイナス金利にして発行するやり方であり、政府債務の増大から予測される将来の増税の不安から解放するやり方です。
増税が予測されるような国債発行ですと、消費に回らないため永久債にする案です。
よく分かりませんが、ただこれですと10年国債の長期金利は上がるのではないか?
あくまで長期金利を抑え込むための金融緩和であり、国債購入ですから、これはないように思います。
三つめは、日銀の国債の直接引き受けです。
四つ目は、外国人投資家が期待しているやり方ですが、日銀が保有している国債を債権放棄して、その資金をヘリコプターマネーでばらまくやり方です。
日銀は現在「362兆円」の国債を保有しています。
これを使うわけですね。
実は五つ目もありますが、これは四つ目のやり方との連動かもしれませんが、「マネー・ファイナンス」の導入であり、ヘリコプターマネーのことです。
マネーファイナンスの最大のポイントは国民に現金を配り、家計を直接刺激することにある。
具体的には、国民の銀行口座に現金を入れたり、あるいは特別な商品券を配布したりする形が考えられるだろう。
例えばだが、現金20万円分を国民の銀行口座に振り込んだり、相当額の商品券などを送付したりする。
配布した商品券などには有効期限を設定し、使わないと価値を失う仕組みを作ってもいいだろう。
いずれにしても、マネーファイナンスでは、新たに創造するマネーは中央銀行から与えられる。
すなわち、国の実質的な債務を増やさずに済む。
政府債務を増やさずに済むとは、将来の増税の不安から解放しますので、消費も上がり、物価も上がるでしょう。
5200万世帯の1世帯あたり現金20万円がチャージされたデビッドカードを配り、1年以内に使わなければ、それは失効するとしますと、年間「10兆4000億円」となり、GDPの2%ほどの財政出動となります。
日銀のもつ362兆円のうちの10兆円ですから、できそうに見えます。
ただ上記の記事では、ターナー氏は過去の日本の商品券等の金額は「圧倒的にマネーの供給量が少なかった」と言っていますから、1世帯辺り「50万~100万円」を配りますと、日銀は年間「26兆円~52兆円」の支出となります。
仮に1世帯辺り、年間100万円を配りますと、日銀は7年間はこの政策を実行できる。
当然、円安にもなるでしょう。
ただどうしてもハイパーインフレを想定してしまいます。
ターナー氏はこう言っています。
その主張はよく理解している。
しかし、私はこの問題は結局、どれだけマネーを供給するかという匙加減だと思っている。
運用次第でハイパーインフレのリスクは十分管理できる。
例えば、日本であれば日銀内にマネーファイナンスを担当する政策委員会を設置し、政府とは独立した形でマネーの供給量を決める。
その適切な供給量はいくらかということは明言できないが、然るべき機関が秩序ある金額でマネーファイナンスを実行すれば、物価を目標の2%まで高められる可能性はある。
政府と独立した機関が、供給量を決めると言っています。
確かに物価は上がるでしょうが、一旦上昇を始めた物価をコントロールできるとは思えない。
しかしてやることはすべてやってデフレから脱却できないのも事実ですから、黒田総裁は採用するかもしれません。
6月と7月の金融政策決定会合は注目でしょう。
外国の方が、むしろ期待しているようですし、日銀はこれしか手はないと見ています。
結局、もう打つ手がないと見抜かれているわけです。
現状の政策では、来年の半ばにも限界がくることが分かっている。
また世界中でこのヘリコプターマネーは、注目されています。
日本はその「炭鉱のカナリア」として見られています。
経済の人体実験のようであり、日本が人体実験のデータを、世界に提出することになるのかもしれません。
最後まで富で経済をよくせんとしておりますので、最終的には失敗するでしょう。
しかしてこの失敗は、世界経済にとって高くつくと思っています。