親バカの果て

ひさしぶりに実家の犬と遊んだ。


犬は２匹。

中型より大きい。

雑種。

メス。

12歳くらい。

毛は短くはない。


いつもならしばらく遊んだら飽きてどこかいってしまう。

でもこの日は違った。

どうやら機嫌がよかったみたいだ。


ずーっと遊んでいた。

実家の庭はなぜか蚊が多い。

異常だ。


犬は２匹。

手を離すと、

「なんでぇ？もっと撫でてぇな、ほれほれ、首んとことか撫でぇな」

とすり寄ってくる。

蚊などはらっているヒマはない。


肌の出ている部分は蚊の餌食になった。


でもかまわない。

犬がかわいいからしょうがない。


実家の庭にいるのは犬と蚊だけではない。

いろんな虫がたくさんいる。


なにか、黒い虫が周りをずっと飛んでいた。

ハエでもない。

ブイブイでもない。

１cmくらいの黒い硬い虫。


気にせず遊んでいた。

私は虫を怖がらない。


が、犬の横にきた瞬間。

その虫は姿を消した。


ずっと飛んでいたのに。


犬…

…虫…食った？


いやいや、そんなことはあり得ない。

そんなすばやい動きができる犬ではない。


そーっと犬の背中を見ると、そこに虫はいた。

短くはない毛の中でもがいていた。

「虫がもつれとんで、きったねー、不潔ー」と犬に向かって言った。

犬は嬉しそうな顔をしていた。


虫を助けてやり、犬にも別れを告げ、実家を出た。


やっぱりうちの犬はかわいい。

100％親バカな意見だ。


ほのぼのとした気持ちで家路についた。


家に帰ってゾッとした。

耳元でブーンと音がしたのだ。

間違いなく羽音。


蚊の羽音だ。


鏡をみると更にゾッとした。

蚊が髪の中でもがいていた。


それだけならいい。

顔中、蚊に刺されていた。

足もブツブツになっていた。


想像できるだろうか。


顔中ブツブツでパーマのとれかけたボサボサの髪の中に蚊がいる姿を。





きったねー、不潔ー